湯浅健二の「J」ワンポイント


2022年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(2022年8月20日、土曜日)

 

まさに、美しい質実剛健サッカーだった・・ミヒャエルには、同じサッカー人として、称賛と感謝の拍手しかない・・(サンフレッチェvsガンバ、5-2)

 

レビュー
 
スゴイね〜、ミヒャエル広島サンフレッチェ。

これで、公式戦5連勝だってさ。

まあ、ミヒャエルにしたら、「戦術的な基本アイデアを絶対ベースに、気を抜かず、全力でプレーしたら、いいサッカーになるのも道理さ・・」ってな、冷静なマインドなんだろうけれど・・ね。

それにしても・・

前節のレイソル戦でも書いたけれど、とにかく、ミヒャエル広島サンフレッチェが、攻守にわたって魅せつづける、スーパーレベルの(!?)主体性プレーには、拍手しかない。

ところで、そこで機能する戦術的な基本アイデア・・

ミヒャエルの場合、もっとも大事なセンスは、何といっても、「クイックプレー」だろうね。

ドイツ語では「シュネル・シュピーレン」っちゅうことになるのだが・・

・・とにかく、人とボールを、素早く、広く、動かしつづける・・

・・そこじゃ、全員が、正確にシェアできる、動きのリズムこそがキーポイント・・

・・その良いリズムがあるからこそ、人も、タイミング良く、動き出せる・・

・・そんな人の動きをベースに、ボールも、しっかりと動きつづける・・

・・そして、相手を振りまわし、スペースを攻略していく・・

あっと・・

その戦術ベースは、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)についてだよね。

要は、自分たち主体の、創造的なプロセスなわけだ。

だからこそ、選手個々に特徴があるイメージングを、しっかりとリンクしなきゃいけない。

そのためにも、戦術的な「統一アイデア」が必要になるっちゅうわけだ。

たぶん、ミヒャエルの場合は、それが、「シュネル・シュピーレン」なんじゃネ〜の!?

まあ、いいや・・

ところで、そのキーワード。

それには、チームを「まとめる」のに、とても大事なタスクがあるんだ。

その一言で、選手たちのイメージングが統一され、心理・精神的に、落ち着けるんだよ。

わたしが契約コーチだった読売サッカークラブでも、経験した。

ラモス瑠偉、ジョージ与那城といった才能あふれるブラジリアンは、事あるごとに「ダイジョウブッ!!」ってなコトを言うんだよ。

いったい「何」がダイジョウブなのか、よく分からないけれどサ・・

それでも、その一言で、チーム全体のサッカー内容が、ある意味で「リセット」され、選手たちも、より落ち着いてプレーできるようになるんだ。

そんな、マジックワードは、ものすごく、有用なんだよ。

そうそう、フロンターレの名将、鬼木達も・・

・・出して走る、出して動く・・

・・なんてね。

あっと、蛇足。

次に、ミヒャエル広島サンフレッチェの、ボール奪取プロセス(守備)でのキーワード。

それは、ボールを奪い返すために、全員が、「しっかりと仕事(ハードワーク)を、探しまくる・・」ってな表現に、集約されるでしょ。

素早く、効果的に攻守を切り替え(トランジション)、まず、相手の次の攻撃を、爆発的なチェイス&チェックで潰しにかかる(ゲーゲンプレス・・ね)。

それがダメならば、すぐに人数バランスと、相互のポジショニングバランスを整備し、落ち着いたチェイス&チェックやカバーリング、マーキングから相手を追い込んでいく・・。

そして私は・・

それら、攻守にわたるすべての実効プレーを、選手個々が仕事を探しまくる「主体性プレー」なんていう表現に、集約することにしているんだよ。

不確実なファクターが満載のサッカー・・

そこでは、選手個々の「意識と意志とイメージング」の内容によって(そう、選手によって!!)、すべてが決まっちゃうわけだからサ。

そんな、積極的&攻撃的なプレー姿勢そのものが、高質な「主体性プレー」にあふれる、美しい質実剛健サッカーを創りあげるってなメカニズム。

あっ、なんか、また、酔っていたりして・・

スミマセン・・

とにかく、そんな、高質なサッカーを創りあげつつある、ミヒャエル・スキッベに、同じサッカー人として、称賛と感謝の拍手をおくる筆者なのだよ。

ところで、このゲームについては、もう一つポイントがあった。

それは・・

例によって、素晴らしく勢いのあるカウンターから、齊藤未月が勝ち越しゴールブチ込んでから、ガンバが展開した受け身のサッカー。

あまりにも、守備を固めることに執心し「過ぎて」いたって感じるんだよ。

そんな、「基本的には受け身」にならざるをえないボール奪取プロセス(守備)の時間が、前半の37分から、後半の27分まで、つづいたんだ。

その間、サンフレッチェに、攻められっぱなし。

そりゃ、心理・精神的にも、かなり「削られる」時間だったでしょ。

だからこそ・・

同点にされ、逆転されてからのガンバは、押し返していくだけの「メンタル・パワー」を、絞り出せなくなっていたって思うんだよ。

要は・・

ガンバは、受け身なだけじゃなく、もっと積極的に、ボール奪取プロセス(守備)を展開し、3点目を奪うために、仕掛けていくべきだったって思うわけさ。

そう、積極的にボールを奪い返し、もっと多くの「サポート・パワー」を投入するんだ。

でも実際には、その「次の仕掛け」を、最前線の個の勝負師たち「だけ」に託してしまった。

そんなだから、逆転され、今度はゴールを取りにいかなければならなくなっても、そのためのエネルギーを絞り出せなくなっていた。

そしてガンバは、最後には、まさに、ボロボロに疲弊し切ってしまった。

最後に、もう一つだけ・・

後半31分に、ベン・カリファが、美しく「流し込んだ」逆転ゴールのシーン。

それは、いまのミヒャエル広島サンフレッチェを象徴する、三人の主力プレイヤーが、まさに、美しく絡んだスーパーゴールだった。

最初は、野津田岳人の、ボレーでの正確なサイドチェンジパス。

受けたのは、これまたスーパーな活躍をつづける、満田誠。

そのまま、相手を恐怖に貶めるような素晴らしい勢いのドリブルで、突っ掛ける。

ガンバ守備ブロックの視線と意識は、もちろん、満田誠のドリブルに、釘付け。

そして、最後の瞬間・・

「脱力・・!?」ってな感じのラストパスを、逆サイドでフリーになっていた、ベン・カリファへ。

そして、「あの」スーパーに美しい、ダイレクトの逆転ゴールが生まれたっちゅうわけだ。

それは、ベン・カリファの「ハットトリック・ゴール」でもあった。

まあ、観ているコチラも、興奮させられたよ、ホントに。

とにかくミヒャエルには、日本のサッカー人の一人として・・

Ich bin sehr stolz auf Dich und bedanke mich herzlich für den Japanischen Fußball…

・・だぜ、ミヒャエル。

とにかく、これからも、ガンバレ〜・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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