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- 06_ヨーロッパの日本人・・「一発」で勝負を決めてしまう中村俊輔・・(2006年1月2日、月曜日)
- あららっ、またまた中村俊輔がヒーローになってしまった・・。リーグ首位のセルティックが、アウェーで、勝ち点「4差」で二位につけるハーツと対戦した勝負マッチ。立ち上がりの前半6分に見事なカウンターから先制ゴールを決めたホームのハーツが、その2分後の前半8分には、コーナーから追加ゴールを挙げちゃうんですよ。これで「2-0」。そのときわたしは、「たしかに複数ゴールのハーツが先行したけれど、二点というのは難しいリードだよな・・一点返された瞬間に極限の心理プレッシャーが襲ってくるし・・何といっても、まだ前半8分だし、ハーツにとっても、ここからのゲーム展開を明確にイメージすることでチーム一丸になるってのは難しいだろう・・」なんてことを考えていましたよ。まだまだ勝負は分からない・・と、そのときは思っていたのです。
それでも、前半のゲームコンテンツを観ながら、「たしかにハーツは攻守にわたって充実したサッカーを展開している・・逆にセルティックの攻めは、あまりにも単調で変化に乏しい・・うまく中村にもボールが回ってこないし・・これは中村にとっても難しいゲームになるな・・」なんて思い直した次第。とにかくハーツは、良いチームなのですよ。この印象は、セルティックのピアソンが、後半11分に「2-1」となる追いかけゴールを決めた後も変わりませんでした。とにかくセルティックの攻撃では変化が乏し過ぎる・・どうして、もっと中村を探さないんだ・・中村も、もっと積極的にパスを呼び込まないんだ・・なんていうフラストレーションがたまりつづけたものです。その時点でも、「これはうまくいっても引き分けがいいところだな・・」という印象に変わりはありませんでしたよ。
セルティックの攻めに効果的な変化が出てきたのは、後半も20分を過ぎたあたりからでしょうか。やっと中村が良いカタチでボールに触れるようになりはじめたのです。中村は、無理なカタチでボールをキープするのではなく、シンプルに「はたく」ところは簡単にパスを回し、「その次」でより良いカタチでボールを持つというイメージでプレーします。その流れのイメージが、どうも仲間と重ならないのです。フランツ・ベッケンバウアーなどの才能連中は、よく「ボールが戻ってこない」といった文句を言います。要は、彼らがイメージするリズムとプロセスでボールが動かないという不満をそう表現するわけだけれど、後半20分あたりまでのセルティックの攻めは、まさに「それ」だったというわけです。でも・・
ボールが動くようになってからの中村のプレーが格段に効果的になったことは言うまでもありません。相手を背にした状態でパスを受け、そのままクルリと回り込んで相手を置き去りにしてしまったり、素早いタイミングのワンツーで抜け出したり、はたまた突っかけドリブルで相手ディフェンダーの視線と意識をフリーズさせてしまったり・・。それは、彼が良いカタチでボールに触れるようになったからに他なりません。そんなポジティブな流れのなかで、後半26分には、中村がリードするスーパーコンビネーションが結実しかかります。ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブという素晴らしいダイレクトパス交換から(そこでは中村が三回ボールにタッチする!)、最後は、ハートソンが落としたボールを、中村がダイレクトシュートを放ったのです。シュートされたボールは、低い弾道で、ダイナミックな軌跡を描きます。セービングした相手GKは弾くのが精一杯。まあ最後は、マロニーがオフサイドを取られてしまったけれど、これから「何か」が起きることを予感させるに十分な迫力ある仕掛けではありました。
そして実際に、その「何か」が起きてしまったのですよ。仕掛け人は、中村俊輔という才能でした。試合終了間際に、二本のフリーキックで、ドラマティックな大逆転劇を完成させてしまったのです。とにかく素晴らしいフリーキックでした。低く抑えられたパワフルなボールが、鋭くカーブして落ちるのです。後半44分と48分に、ゴール前の「猫の額のような狭いスペース」へ送り込まれた正確なボールを、走り込んだマクマナスがゲットした同点&逆転ゴール。マクマナスは、中村俊輔が送り込むボールの「強さとコースと変化」を明確にイメージ出来ていたに違いありません。このような「フリーキック・ウエポン」があれば、高さやヘディングの強さといった「受ける方のチカラ」ではなく、キッカーが、最終勝負のイニシアチブを握ることができるというわけです。クロスでの勝負シーンでは、たまにはフィニッシャーが主役になったり、たまにはパサーがリードしたりする。もちろん、その二つを使い分けることで攻撃の変化を演出するというわけです。
それにしても、本物のブレイクスルー真っ最中の中村俊輔にとっては、まさに追い風の年末年始マッチということになりました。良かった、良かった。-
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