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2008_日本代表・・様々な選手ファクターが、より鮮明に見えてきた!?・・それにしても田代有三は素晴らしかった・・(日本vs北朝鮮、1-1)・・(2008年2月17日、日曜日)

そりゃ、あんな前半の停滞サッカーを見せられたらフラストレーションが溜まるのも当たり前だよ。まあ、後半は持ち直したから、ゲーム全体としては「まあまあ」といったところだったけれどね。

 スターティングリストを見たとき、「エッ!?」とフリーズしてしまった。このところのコラムで何度も書いたけれど、私は、このチームの「この時点」における絶対的な基盤を、鈴木啓太&中村憲剛&遠藤ヤット(保仁)の中盤ダイナミックトライアングルにありと思っているのですよ。その一角として重要なタスクを担っていた中村憲剛が先発リストから外されている。さて・・。

 もちろん、新しい選手(ボーダーラインにいる選手)にチャンスを与えたり、新しいポジションでプレーさせるトライはやらなければいけません。彼らの、戦術的な能力を確かめるだけではなく、セルフモティベーション能力や適応能力などを見極めるためにね。とはいっても、絶対的な「チームの核」までも解体してしまうのは、ちょっと考えられない。どのチームにも、その時点での「完璧な核になる選手グループ」がいるものなのですよ。今の日本代表では、前述のダイナミック・トライアングルなのだけれど、その一角を崩してまでも・・と、考え込んでしまったというわけです。

 でもすぐに情報が入ってきた。中村憲剛は熱を出していたのだそうです。まあ・・仕方ない。とはいっても、チョン・テセにスーパーミドル先制ゴールを決められてからの(前半の)日本代表のサッカーが、これ以上ないほど停滞していたことは否めない事実。要は、ボールがないところでのアクションの量と質が、大きく減退していたということです。

 こちらは、チャンスの臭いがしそうになったら、「行けるゾ!」と身体にチカラが入るわけだけれど、選手は、こちらに肩透かしを食らわすかのように、「行かず」に横パスを回してしまう。そして、北朝鮮ディフェンスの「眼前」で、相手にとっては怖くも何ともない無為な仕掛けを繰り返すばかり。

 裏のスペースを攻略していくためには、タテにボールを動かさなければならないんだよ!・・その動きに乗って、ボールなしのフリーランニングを積み重ねていくんだ!・・なんで逃げの横パスなんて出すんだ!・・それに、横パスを出して様子見になっちゃう(足を止めちゃう)じゃないか!・・パス&ムーブも出てこないんじゃ、完璧に寸詰まりサッカーじゃないか!・・誰でもいいから、ミスをする勇気をもって仕掛けていけよ!・・などなど、とにかく「空しいリキ」が入りまくりでした。

 そんな停滞サッカーが、後半に入ってからは、徐々にではあったけれども好転していくのです。ハーフタイムに、岡田監督から(脅しファクターも内包する!?)「渇」が入ったのだろうか? そんな私の質問に対して、「いや、そんな強いことは言っていませんよ・・ちょっと、やり方に誤解があった・・それを修正しただけです・・」とクールに答える岡田監督。フムフム・・やり方ネ〜〜。

 後半は、遠藤ヤットが、やたらに目立ちはじめた。彼に(より頻繁に)ボールが集まるようになり、そこを起点に「タテ方向」に仕掛けの流れが出はじめたのですよ。たしかに前半は、タテへの動きがスムーズに出てこなかったよね。まあ・・ね、逃げの横パスによって「仕掛けゾーン」が動かされてしまうわけだから、それじゃ、後方からのサポートも飛び出して行きにくくなる(足が止まり気味になってしまう)のも道理ってな具合でした。

 そんな「停滞状況」が、後半になって徐々に解放されるようになっていった。遠藤がボールを持ったら、タテ方向への人とボールのリスキーな動きが「加速」するようになったのです。まあ、よりリスキーな方向へと一歩踏み出した攻撃が出るようになったということです。

 前半では、その「タテ方向への動きを加速する」ための「やり方」に誤解があった!? まあ、岡田監督が言った「やり方」って、また違う戦術的ニュアンスなんだろうね。それは外野には分からない。今度、聞いてみよう。まあそれは、コンビネーションの「イメージ・シンクロ内容」に関するものかもしれないし、タテへの動きの「キッカケ」ついてのことかもしれないし、遠藤ヤットのタスク(その他の選手のタスク内容)についての誤解だったのかもしれないし・・。

 リスクチャレンジだけれど、「よりリスキーな方向へ一歩踏み出した」サッカーを展開した後半には、何度か、北朝鮮の危険なカウンターを浴びた。それについて質問してみました。「その危険なカウンター場面だけれど、それは、リスクを負った攻めをしているのだから当然だと受け容れるか、それとも、あってはいけいなことと考えるか・・」

 それに対して岡田監督は、「今日の展開では、カウンターシーンは仕方ないと考える・・ただし、ワールドカップ予選という本番では、(相手の危険なカウンターを)極力避けなければならない状況も出てくるということ・・」と明快に答えていた。でも、やはりこちらは、「常に、リスクチャレンジ方向に一歩踏み出したバランス感覚」を期待するのですよ。

 そんな「リスクチャレンジ」については、先日アップした「このコラム」を参照してください。

 ちょっとここで話を変えて、田代有三について・・。後半になってタテ方向への(コンピネーションの)動きが出はじめたことで、田代有三の存在感も大幅にアップしていきました。前半でも何度か、最前線で目の覚めるようなボールキープ(≒ポストプレー)を披露していたわけだけれど、後半になったら、そのクオリティーが、より鮮明になっていった。それに、相手と競り合いながら「強引」にシュートまで行くなんて派手な(意志を爆発させる)シーンもあったしね。

 これは「めぐり会い」みたいなものです。これまでも何度かアントラーズで良いプレーをする田代を観てきたけれど、ここまで印象深くはなかったのですよ。それが・・。今日は、本当に素晴らしい若武者に出会ったという興奮を味わっていました。田代有三。これからは、「何を今更っ!!」なんていうブーイングも謙虚に受け容れながら、もっともっと彼に注目するつもりです。それにしても「あのヘディング」は惜しかった。タラレバ・・失礼。

 あとは安田理大。若武者が、思い切りよいプレーで活躍してくれると本当に気持ちがいいよね。まあ、もう吹っ切れて行くっきゃない・・という「あの状況」でグラウンドに放り込まれるという「幸運」もあったけれどね。このことについては、岡田監督の「指先のフィーリング」に対して拍手を贈りましょう。それにしても安田は活きがいい。

 とにかく引き分けられて良かった。これで「様々な選手ファクター」が、より鮮明に見えてきたでしょう。それぞれのタスクを遂行する能力(主体性レベル!)・・そして、周りの味方のチカラを引き出せる能力(戦術的なイメージシンクロ能力)・・また、リスクチャレンジ姿勢(セルフモティベーション能力)・・攻守にわたって仕事を探しつづけられる能力(まあ同じ意味かな)・・などなど。

 まあ、ちょっとフラストレーションは溜まったけれど、総体的には、次の中国戦が(ネガティブ心理エネルギーが支配する完璧アウェーの雰囲気も含めて!)とても楽しみになった湯浅でした。

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 最後に、第1ゲームで行われた、地元の中国vs韓国についても、ほんのちょっとだけ触れておきます。

 要は、攻守にわたるボールがないところでのプレーコンテンツの量と質で、韓国に一日以上の長があった・・言葉を換えれば、チーム戦術的なレベル(戦術的な発想)に差があった・・それには文化的な背景があるのかもしれない(あっと、この視点は蛇足!)・・まあ、ということで、だから結果は順当なものだった・・ということです。

 日本代表の前半を観ながら、攻守にわたって主体的に(そしてダイナミックに)リスキーアクションに入りつづける韓国選手の爪の垢でも煎じて飲んだ方がいいんじゃないの・・なんて不遜なことを思っていた次第。

 それにしても中国。あれほどの個のチカラを有しながら、今でも、局面勝負のブツ切りサッカーから抜け出せていない。要は、ボールがないところでのプレーの量と質が(アクションがシンクロする組織プレーの内容が)お粗末だから、いくら局面の勝負を有利に進めても、それが、ボールを奪い返すという守備の目的や、シュートを打つという攻撃の目的を達成するために貢献していないということです。

 とはいっても、日本を相手にしたときは(また初戦を落としたことで)、ボールがないところでもガンガン走りまくるかもしれないし、局面での競り合いに、ことごとく勝利することでゲームを牛耳ってしまうかもしれない。だからこそ、次の日本vs中国が楽しみなのですよ。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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