トピックス
- 2008_北京オリンピック_その3・・初心(チャレンジャーマインド)に立ち戻った「忠実なナデシコ」が奇蹟の勝ち抜き!・・(ノルウェーvs日本、1-5)・・(2008年8月12日、火曜日)
- こうなってみると、ニュージーランド戦で澤穂希が(美しく)流し込んだ同点ゴールの重みを感じるじゃありませんか。
その試合の後のテレビインタビューで、澤穂希が(そのゴールが)次につながるハズだと気丈に語っていたけれど、そのときは、どちらかといえば、その発言を「強がり」と受け取ったものです。今となってみたら、そのことに対して「穴があったら・・」なんて思う。ホント、お見それ致しました。
でもさ・・あの(ニュージーランドとの)初戦での「なでしこジャパン」は、明らかに、自分たちは格上のハズだという「意識の落とし穴」にはまっていたわけだからネ。逆にニュージーランドは、チャレンジャーとして、全力で忠実プレスを掛けつづけた。その意志のパワーはすごいレベルだった。
そんなニュージーランドに対して日本代表は、思うような組織サッカーを展開できないという(思い上がっていたからこその!)フラストレーションもあって、徐々に足が止まり気味になってしまい、イージーなミスで二点を先行されてしまうわけです。そんな展開を観ながら、「こんなハズじゃなかった・・」という彼女たちの安易な(高慢な!?)マインドが透けて見えたものです。
まだまだ発展途上の女子サッカーでは、どんな相手に対しても、攻守にわたって、全精力をつぎ込んで真面目に「ボールがないところでの汗かきプレー」に奔走しなければ「本来の実力差を顕在化させられない」という事実を忘れ、アロガント(高慢な)意識で試合に臨んでいた!? まあ、そう言われても仕方のないゲーム内容だったわけです。
たしかに最後の時間帯では(チーム全体が一生懸命に走ることで!)本来の実力の差を感じさせてくれはしたけれど(そんな忠実な意志が澤穂希の素晴らしい同点ゴールとなって結実した!?)実質的な試合展開からすれば、何とも「情けない」内容だったわけです。だから私も、レポートする気力を絞り出すことが出来なかった。
そして次のアメリカ戦。たしかに謙虚な忠実マインド(全力の汗かきマインド)は回復したけれど、初戦を落としたアメリカが必死だったこともあって、結局は「実力的な惜敗」ということになってしまった。
そのアメリカ戦だけれど、そこでは(このノルウェー戦でも同様なことを感じていたけれど!)シュートに至る最終勝負シーンでの「フィジカル能力の差」も体感させられていました。
いくら中盤での展開が上手くても、やはり、トラップしてからシュートへ持ち込んでいくシーンなど、極限のフィジカル&テクニックが要求される「個のチカラによる最終勝負」を成就させることは簡単じゃない・・。それこそが「フィジカル要素が先行する」いまの女子サッカーの現実であり、そのことを思い知らされていたのですよ。そんなこともあって、また実際に競り負けたこともあって、アメリカ戦でもレポートする気力がアップすることはありませんでした。でも・・
このノルウェー戦だけれど、本来の実力からすれば(内容をしっかりと観ていれば!)「5-1」という結果は、サッカーの神様のイタズラだったと誰もが感じたことでしょう。やはり(まだまだフィジカル要素の方が先行した女子サッカーでは)ノルウェーの実力は、確実に日本の上を行くのですよ。それでもナデシコは5点も叩き込んでしまった。
この試合での「ナデシコ」にとって理想的なゴールは、何といっても、前半31分に近賀が挙げた同点ゴールでしょう。左サイドで展開パスを受けた宮間が、ココゾ!の「またぎフェイント」で相手を振り切ってクロスを上げ、それを、ファーサイドに詰めていた「サイドバック」の近賀がボレーで決めたという同点ゴール。
またぎフェイントという『局面での瞬発的な器用さ』と、相手とのフィジカルコンタクトを必要としない「点で勝負するダイレクトシュート」。それこそが、ナデシコが志向すべき「最終勝負シーン」なのですよ。
その後の得点は、フリーキックからのこぼれ球に対する「粘り」が相手のミスを誘ったオウンゴールと、攻め上がりすぎた相手のウラを突くカウンターからのドリブルシュートが相手の足に当たったラッキーゴール。
まあ、澤穂希の「極限の粘りが功を奏した」四点目と、素晴らしいカウンターからの「勇気あふれる」原のドリブルシュートは見事だったけれどネ。あっと・・そのニュアンスじゃ、三点目のドリブルシュートを放った大野の勇気もたたえられるべきだった・・スミマセン。
とにかく、ナデシコが、もう一試合、世界へチャレンジしていく(日本サッカーを世界へアピール出来る!)チャンスを勝ち取ったことは素晴らしい出来事です。
そんなノルウェー戦を観ながら、今年の2月に中国で行われた「東アジア選手権(男女)」でのナデシコの活躍に思いを馳せたモノです。そこでは、ドラマチックだった北朝鮮との初戦だけではなく、優勝をもぎ取ったトーナメント全体の「流れ」も思い出していた(そのときのナデシコの活躍については、これと、これと、そしてこの三つのコラムを参照してください)。こりゃ、もしかすると、もしかするかも知れないゾ。
何せ、いまの女子サッカーでは、「フィジカル要素」が先行しているからこそ、局面での器用なテクニックと極限の組織プレーに徹すれば(もちろんボールが無いところでの汗かきの動きなど、その徹底度を極限まで高めることが大前提だけれど!)確実に光明が見えてくるハズだからネ。
その象徴こそが、このノルウェー戦で近賀が叩き込んだ(前半3分の)同点ゴールだったわけです。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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