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2009_「J1」_第1節・・アルディージャの「強固な意志」・・エスパルスとレッズの「バランス感覚」・・また、鎌倉「シーキャッスル」についても・・(2009年3月9日、月曜日)

スゴかったね〜〜、アルディージャの全力プレー。もちろん「攻守にわたる細かな戦術的決まり事」がうまく機能していたということもあるんだろうけれど、ホントに最後の最後まで、明確な「意志」の減退を感じることがなかった。新監督、張外龍さんの「確信のウデ」を感じますよ。

 確信のウデ。わたしはそう表現するのだけれど、監督さんが、選手たちに「自信と確信」を植え付けられなかったら、チームが機能するはずがないからね。そのプロセスでは、成功体感を積み重ねていかなければならないわけだけれど、もちろん(偶然要素が大きく作用する!)ツキに恵まれる必要もある。

 そんな、チームの自信と確信レベルを「必要十分状態」までアップさせられるプロセスでは、必然ファクターが偶然ファクターを「包み込んで」いなければならない。そこに監督さんのウデが見えてくる・・というわけです。張外龍さんは、まだ10代の新井涼平を筆頭に、何人もの「J1新人」を積極的に登用したことも含め、なかなか良い仕事をしていると思いますよ。

 その、アルディージャの全力プレーだけれど、彼らは、とにかく「ダイナミック」にボールを奪いにいき、それが成就した次の瞬間には「シュートをイメージ」していると感じる。

 要は、ボールを奪い返すという守備の目的の先に(素早く効率的に相手ゴールへ迫って!)シュートを打つという攻撃の目的も明確にイメージしているということだけれど、彼らにとっては、相手からボールを奪い返す守備のプロセスで既に「シュートまでのプロセス」もイメージしているとまで表現できるかもしれないね。

 要は、イメージトレーニングの賜物。もちろん「強いエスパルス」が相手だから、そう簡単にはボールを奪い返せないし、相手ゴールへ迫れるわけでもない。それでも・・ここが一番スゴいところなのだけれど・・何度失敗しても、彼らの意志に陰りを感じることがないのですよ。そのことが、ホントに素晴らしいと思った。

 ということで具体的なグラウンド上の現象だけれど、もちろん(個のチカラの単純総計という視点で!)地力に優るエスパルスに分があった。

 何といっても、ヨーンセンと岡崎慎司で組むツートップが素晴らしい。そこでのボールキープに対する確信があるから、最前線への積極的なタテパス供給だけではなく、それがうまく通ったときの後方からのサポートにも抜群の勢いが乗っていく。キャプテンの兵働昭弘と枝村匠馬で組むサイドハーフと両サイドバックのコンビで繰り出していくサイドからの仕掛けだけではなく、若い山本真希も、まさに縦横無尽という表現がピタリと当てはまるように、攻守にわたって実効プレーを繰り広げる。もちろん忠実なバランサーは伊東輝悦。

 こりゃ、やっぱりチカラの差がアリアリだな〜〜・・たしかにアルディージャも頑張っているけれど、最後はエスパルスの軍門に降(くだ)っちゃうんだろうな〜〜・・なんて安易に思っていた。ところが・・

 そのアルディージャのチャンスメイクは、まさに「唐突」でしたね。前半も佳境にさしかかったタイミングで飛び出したサイドからのクロス攻撃。それが、二度、三度とつづき、まさに「どうしてゴールにならないの?」ってなビッグチャンスにつながったのですよ。

 具体的なプレー現象を表現するのは割愛するけれど、それこそが「アルディージャのツボ」。粘り尽く忠実なボール奪取勝負を積み重ね、「そこ」から蜂の一刺しカウンターを見舞う・・。

 全体的にはエスパルスにゲームのペースを握られている展開にもかかわらず、その「状況」になったら、周りの選手たちのスイッチが入り、まさに「何かに突き動かされる」ように何人もの選手が最終勝負シーンへ『全力で』突っ込んでいくのです。もちろんそれは、「粘り強いイメージトレーニング」に支えられた「イメージ・シンクロ・コンビネーション」。ホントに素晴らしかった。

 (全体的なゲームの流れからすれば!)そのチャンスメイクがあまりにも唐突だったから、観ているこちらも「エッ!?」と目をこすってしまった。そして思った。そうか・・この精神的な粘りに支えられた強烈な意志こそが、アルディージャのツボなんだな・・

 ところで試合後の監督会見。エスパルスの長谷川健太監督に、こんな質問をぶつけてみた。

 「アルディージャとの対戦は、昨シーズンも含めてこれで三試合つづけてゴール無しの引き分けということになったが、観ている方にとっては面白くないサッカーという印象が残るかもしれない(私は楽しんだけれど、というニュアンスを含めたつもりだったけれどネ・・あははっ・・)、偶然要素は別として、そのようなゲーム展開になった必然的な要素は何だと思われるか?」

 それに対して長谷川健太監督は、こんなニュアンスのことを言っていた。

 「アルディージャの頑張りは素晴らしいんですよ・・シーズン前のトレーニングマッチでも素晴らしいサッカーを魅せていたし、多くのゴールを奪っていた・・あれだけ忠実なサッカーを(守備を)やられたら、そう簡単には崩せない・・それに、アウェーゲームということも考えれば、こちらから積極的にリスクを冒して攻め上がることに対して慎重になるのは自然だと思う・・たしかに観ていて面白くないサッカーという評価になるんだろうけれど(イヤイヤ、長谷川さん・・オレには、ものすごく興味深く、面白いサッカーだったんだよ!!・・質問が舌足らずだったかな・・あははっ)・・」

 このやり取りにおけるディスカッションテーマは、もちろん、リスク・チャレンジとバランス感覚(守備意識!)。

 土曜日のレッズは(アントラーズ対レッズ戦)、攻め過ぎて墓穴を掘った(!?)。要は、攻撃に、バランスが崩れたカタチで人数を掛けすぎた・・とか、攻撃選手たちの守備意識と、全力チェイス&チェックに代表される実際のディフェンス実効レベルが足りなかった・・とかいうことでしょうね。

 でも、この試合でのエスパルスは、アルディージャのカウンター意図をしっかりと意識し、注意深くバランスを取りながら攻め上がったのですよ。もちろん消極的というわけではなく、あくまでも「バランス感覚」に対する意識を、よりシャープにしてゲームに臨んだということです。

 攻守の切り替え。特に、攻撃から守備への切り替えというテーマ。これは監督にとって永遠のテーマです。バランスを取り「過ぎた」ら、まさに消極的で次元の低いサッカーになってしまう。そうなったら、選手たちの発展を阻害してしまうのは目に見えている。

 だからこそ私は、優れた守備意識(もちろん実効汗かきプレーが伴った!)に支えられたリスクチャレンジこそが究極のテーマだと言いつづけているわけです。

 開幕戦でのレッズは、そのポイントで足りない部分もあったんだろうね。誰もが「苦しい、守備への戻り」を当たり前のこととして、それにも全力で取り組めるように意識(意志)をブラッシュアップしなければなりません。まあスリーバックからフォーバック(=ツーバック)になったことで、人数とポジショニングバランスに対するイメージ的な悪影響「も」あったのかもしれない。

 そしてエスパルスの長谷川健太監督に対しては、とにかく、リスクチャレンジのバッファー(緩衝装置)としてのバランス感覚(守備意識)を限りなく引き上げていくことを期待しますよ。

 最大限の人数を掛けることで、常に数的に優位なカタチを作りつづける仕掛け(≒リスクチャレンジ)のリスク要素を極限まで減少させるための優れたバランス感覚(≒優れた守備意識と実行力)。それこそが、全てのコーチにとっての永遠のテーマなのですよ。

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 最後になりましたが、私のもっとも近い友人たちが「ジャパンタイムス」に記事として採りあげられたのでお知らせします。

 鎌倉の長谷にある「シーキャッスル」というドイツ料理レストラン。彼らについては、以前も書いたことがあります。その「コラム」も参照していただきたいのですが、その彼らが、今度はジャパンタイムスでも採りあげられた。嬉しくて、その「記事」にリンクを張っちゃうことにしました。

 鎌倉へ行ったら、是非、長谷にある(長谷の海岸沿い!)シーキャッスルにお立ち寄り下さいネ・・あははっ・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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