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2011_アジアカップ・・その後のテーマ(その3)・・大人のダブルボランチ・・(2011年2月3日、木曜日)

ズバッ・・ズバッ・・ズバッ!!

 そのとき、ホントに、そんな音が聞こえた(・・ような気がした)。韓国戦、前半16分。左サイドを完璧に崩した日本代表が(最後のクロスは、もちろん長友佑都!)決定的チャンスを作り出した。

 演出家は、遠藤保仁。詳細なコンビネーション・コンテンツについては、ビデオをご覧アレ。

 ・・最初は、タテの関係にあった香川真司と遠藤保仁が、タテ方向にパスを交換する・・ズバッ・・最後に戻されてきたボールをコントロールした遠藤保仁は、すかさず、今度は、左サイド最前線に上がっていた本田圭佑への鋭いタテパスを通す・・ズバッ・・そして本田圭佑は、遠藤保仁へ、そのままダイレクトで、鋭いバックパスを返す・・

 ・・このタテのパス交換(ボールの動き)が進行していたとき、もう一つの「意志」が爆発していた(決定的な人の動き)・・左サイドの大友佑都が、大外から超速スプリントをスタートしたのだ・・

 ・・そして、長友佑都が狙うタテの決定的スペースへ、(本田圭佑からの)バックパスを受けた遠藤保仁が、迷わずダイレクトで、鋭い、タテのスルーパスを通した・・ズバッ・・

 マークしていた「イ・チョンヨン」のウラを攻略した長友佑都。でもそれは、遠藤保仁の完璧なダイレクト(タテ)スルーパスだったから、長友佑都は、シンプルに走り抜ける「だけ」で、イ・チョンヨン背後の決定的スペースを突いていけた・・っちゅう表現の方が正確だね。

 まさに、遠藤保仁が、マイティーマウス長友佑都を、タテの決定的スペースへ「送り込んだ」というコンビネーション。最後の瞬間、タテパスに追い付いた長友佑都は、そのままダイレクトでクロスを上げるだけでよかった。

 そのとき、長友佑都のクロスイメージと、韓国ゴール前で待つ前田遼一と、ファーサイドから「走り込んで」くる岡崎慎司が描いていた「最終勝負イメージ」が完璧に「シンクロ」していたことは言うまでもないよね。

 えも言われぬほど美しいコンビネーションからの絶対的チャンスメイク。

 たしかに日本代表は、この韓国戦でも他の勝負マッチでも、実際にゴールに結びついたモノも含めて多くのエキサイティングなチャンスを作り出したけれど、私にとってこのチャンスメイク・プロセスは、遠藤保仁が「後方から組み立てた」という意味合いも含め、とても印象深いものだったのですよ。

 ということで大人のダブルボランチ。遠藤保仁と長谷部誠で組んだ中盤の底コンビ。

 たしかに、最前線のウラにある決定的スペースへの(三人目、四人目としての!)飛び出しというプレーは目立たなかったけれど(もちろん常に狙ってはいたのだろうけれど・・)、この二人は、守備においても、攻撃においても、常にチームの「重心」&「コントロールタワー・コンビ」として、素晴らしい機能性を魅せつづけていた。

 まあ、大会の立ち上がりゲームでは、本田圭佑(松井大輔)に代表される「足許プレイヤー」の組織プレーイメージが(まだ!?)高揚していなかったこともあって、流れるような組織コンビネーションをリードする・・というのは難しかったわけだけれど、大会が進むにつれて、大人のダブルボランチを中心に、攻守にわたる組織プレーの機能性も格段にアップしていった(大会を通した目に見えるチームの成長=ホンモノの勝負の場だからこその、実の詰まった成長!!)。

 そんな「発展の流れ」に乗るように、(まあ・・具体的にはシリア戦を通して!)足許プレイヤーたちも、ボールがないところでの動きとシンプルなパス回し&ムーブに代表される(!)組織プレーと、自分たちの才能を活かした勝負ドリブルや「タメ」のボールキープといった個人勝負プレーの「効果的なメリハリ」が出てくるようになったよネ(組織プレーと個人勝負プレーのハイレベルなバランス!!)。

 ということで、このダブルボランチを「大人の」と形容したことの背景ですが、要は、前述したように、決定的スペースへの積極的な飛び出しよりも、チーム全体の前後左右の「人数&ポジショニング」バランスをコントロールすることの方に気を遣っていた・・ということです。

 このチームには、岡崎慎司と香川真司という「攻守の汗かきプレー」でも信頼に足る組織プレイヤーがいるし、両サイドには長友佑都や内田篤人もいる。要は、彼らのサイドにおける「タテのポジションチェンジ」を、より積極的に演出したということです。

 両サイドバックとサイドハーフの縦横無尽のポジションチェンジを、とても効果的にサポートしつづけた大人のダブルボランチ・・ってなところですかね。そう、彼らが後ろ髪を引かれることなく思い切って「仕掛けて」いけるようにネ。

 守備・・。もちろん彼らは、チェイス&チェックから忠実マーキング、協力プレスからインターセプトまで、すべてを忠実&効果的にこなしていた。それでも、岡崎慎司と香川真司という汗かきハードワーカーがいるお陰で、彼らのコントロール機能が、より威力を発揮したというのも確かな事実だと思う。やはり守備は「共同作業」なんだよ。守備こそが全てのスタートラインだし、それこそがホンモノの組織(協力)プレーということだね。

 あっと・・本田圭佑や前田遼一も、より積極的&忠実に、最前線からのディフェンスを効果的に展開するなど、彼らの組織プレーイメージが「発展」していったことも忘れちゃならない。もちろんワールドカップとは比べものにならないけれど、「そこ」もまたホンモノの勝負の場であることには変わりはないからね。やはり彼らも、「非日常の特異な刺激」に動かされたということです。

 攻撃・・。たしかに、例えば香川真司(サウジ戦での柏木陽介!?)が下がってきた状況では、遠藤保仁や長谷部誠が、彼らと入れ替わりに「高いポジション」を取ることはあった。でも、基本的には、後方からのゲームメイクというイメージが骨子だね。

 サイドハーフやトップ選手、はたまた(オーバーラップを繰り返す)サイドバックにしても、彼らがいるからこそ、後ろ髪を引かれることなく仕掛けて行けたわけだからね。

 そんな彼らの仕掛けイメージは、やはり、「タテへっ!!」ということになる。もちろん、ザッケローニの意志を、実際にグラウンド上で遂行する「エクステンション・ハンド」として。

・・組み立て段階では、攻撃的ハーフやトップ選手への「タテパス」の供給や、オーバーラップするサイドバックが狙うタテのスペースへの「スルーパス」の供給をイメージする・・また仕掛け段階では、最前線のヴァイタルエリアへ入り込んだ味方選手への「タテパス」の供給や、岡崎慎司に代表される、相手最終ラインの背後に広がる決定的スペースへの飛び出しフリーランニングへの「最終勝負ラストパス」の供給・・などに積極的にチャレンジする・・などなど・・

 そして、相手の視界から消えることでチャンスを見計らい、肝心な状況でヴァイタルエリアにスッと顔を出して「タメのドリブル」を仕掛けたり、自らミドルシュートをブチかましたりする。質実剛健な大人のプレーイメージ!? フムフム・・

 ちょっと冗長になりはじめたから、ここらで一旦キーボードから離れようと思うけれど、最後に、シリア戦とカタール戦で、日本が一人足りなくなってからの「大人たち」の活躍には言及したいね。

 そんな厳しい状況で、彼らは、自ら、攻守わたって「仕事」を増やしていったのですよ。要は、自分たちの意志で、より積極的に仕掛けていっただけではなく、全力でディフェンスにも戻って実効プレーを展開したということです。一人足りない穴を、自らのアクションの量と質を(強烈な意志をもって!!)アップさせることでカバーしてしまった。とにかくアタマが下がりました。具体的なプレーについては、皆さんもビデオを見返して下さい。では・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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