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2011_アジアカップ(番外編)・・その後のテーマ(その5)・・インテルの長友佑都・・(2011年2月7日、月曜日)

我らがマイティーマウス、長友佑都。

 彼のアジアカップでのプレーについて、まあ観てりゃ分かる・・と、これまで詳細に表現することはしなかったけれど、日本時間の今朝、インテルに移籍した長友佑都が、後半30分から(左サイドバックとして)出場したことを受けて、ちょっと掘り下げてみようかな・・とキーボードに向かった次第。

 良かったですよ〜〜・・長友佑都。とても確かな(彼の体型やプレースタイルから・・ちょっと異質な・・っちゅう形容詞も成立する!?)存在感を発揮していた。

 長友佑都の近くでプレーする守備的ハーフ、カンビアッソも、彼を捜してパスを付けていた。まあ、彼だけじゃなく、誰もが彼に積極的にパスを付けていた・・ってな雰囲気もあったね。インテルでのデビュー戦だから、できるだけ多く長友佑都にボールを触らせよう(パスを回そう)っちゅう雰囲気「も」あったというなんだろうね。

 もちろん「そんなチームメイトたちの意識」のバックボーンには、チームメイトたちが、ここ数日のトレーニングでの長友佑都の存在感だけじゃなく、彼の前チーム、チェゼーナでの活躍を体感しているからに他ならない・・ということだろうね。要は、チームメイトたちが、「コイツは、オレ達にとって(金儲けにとって!?)価値ある仲間だ・・」と期待しているっちゅうことです。フムフム・・

 まあ・・ネ、たしかに彼が入ってから、ローマに二点も入れられちゃった(4-1から4-3へと追い付かれそうになった・・)。でもそれは、二つともセットプレーから(一つはフリーキック、もう一つはコーナーキックから)だったし、どちらかといったら偶発的なゴールだったから、決して長友佑都の登場からインテルのサッカーが変調をきたしたっちゅうことじゃないですよ・・念のため。

 ということで、長友佑都のプレーに関する簡単なコメントです。

 彼については、まず何といっても、その素晴らしい「運動量」を挙げなければいけません。一人の選手の(一試合の)平均的な走る距離は、11キロから13キロといったところ。でも彼の場合は、おしなべて、それよりも「1キロ」程度多い。それも、トンコ、トンコといった緩慢なジョギングなんかじゃなく、全力スプリントの割合が多いところが素晴らしい。

 攻守にわたる全力スプリント・・。いつも書いている通り、「それ」は、明確な意志の発露なのですよ。攻守にわたって、明確な「やりたいプレー」のイメージをもっているからこそ出てくる全力スプリント・・というわけです。長友佑都は、攻守にわたって、限界まで「仕事を探しつづけ」られる、素晴らしい自己主張プレイヤーなのですよ。

 この試合でも、ジョギング程度のスピードでチャンスを見計らい、そして何度も「爆発」した。3回、4回と、超速スプリントで左サイドをオーバーラップしていったのです。そのうちの2回は、効果的なチャンスを作り出す「ラスト・グラウンダー・クロス」につながった。それは、それは、抜群の存在感を発揮したシーンだった。

 例えば・・左サイドで(カメルーン代表のエース!)エトーがボールを持つ・・そこで一旦「タメ」が演出される・・そして次の瞬間、その大外を回った長友が「爆発」する・・もちろん(明確に長友佑都のオーバーラップをイメージしていた!)エトーから、長友佑都が狙うタテの決定的スペースへタテパスが供給されたことは言うまでもない・・

 ・・そして相手サイドバックをスピードで置き去りにした長友佑都が、まったくスピードを落とすことなくボールをコントロールしてゴールライン際まで運び、ラスト・クロスを供給する・・

 ・・また、相手と正面から対峙したカタチでボールを持ったシーンでも、長友佑都は、勇気をもってドリブル勝負にチャレンジし、そこから中央ゾーンへ危険なラストパスを供給する・・なんていう素晴らしい勝負シーンを演出したこともあった・・頼もしい限り・・

 要は、長友佑都の場合、運動量もさることながら、その、メリハリの効いた変幻自在なスピードコントロールも特筆だということです。チームメイトたちも、左サイドの前方にスペースが空いたら、絶対に長友佑都がオーバーラップして来るに違いないと思っているしね(そのことを明確に感じる・・)。

 もちろん、その素晴らしい運動量とスピードは、守備においても抜群の存在感を発揮する。とにかく一対一に強いのですよ。長友佑都と正対した相手ボールホルダーも、結局はドリブル突破にチャレンジすることなく横パスで逃げるというシーンが多い。そりゃそうだ・・いくら「カット」で長友佑都を振り回しても、次の瞬間には必ず「追い付いて」粘り強くチェックされてしまうんだから・・

 とはいっても、守備での、味方との「有機的なコンビネーション」とか「読み」とかいった部分では、まだまだ課題が見え隠れする。まあ、絶対的な基盤である「一対一での強さ」が確固たるレベルにあるのだから、有機的な連鎖コンビネーションにしても、徐々に機能性がアップしていくに違いないとは思うけれどね・・。

 たしかに長友佑都は、マイコンやキヴー、はたまた、この試合では左サイドバックとして先発したアルゼンチンの英雄サネッティーとは、ちょっと異なるタイプのプレイヤーと言えるかもしれない。要は、パス・レシーブで勝負シーンを演出するシーンが多いということです。

 多くのケースで、足許パスを受けてからドリブル勝負を仕掛けていくというチームメイトとは違い、長友佑都の場合は、組織プレー(パス)によってスペースを攻略するのですよ。

 わたしは、長友佑都が加入したことによって、人とボールの動きという視点で、「足許パス」からのドリブル勝負の方がより目立つ(要は、タテへ勝負を仕掛けていくような、ダイレクトパスと、三人目、四人目のフリーランニングが有機的に絡んでいくコンビネーションが少ない!)インテル選手たちがアタマに描く仕掛けの流れのイメージに、「より広い選択肢の提供」というポジティブな変化が起きるかもしれない・・とまで期待しているのですよ。

 長友佑都には(物理的能力だけではなく、そのパーソナリティーにも!)そんなことまで期待できるようなキャパシティー(天賦の才)が備わっている・・と感じるわけです。

 ガンバレ〜〜、我らがマイティーマウス〜〜・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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