トピックス
- 2011_J_プレシーズンマッチ・・まだまだ新生レッズのチーム戦術は見えてこない・・(ARvsR, 3-0)・・(2011年2月20日、日曜日)
- さて、どうだろうネ〜〜・・。もちろん、実質的なゲーム内容は、スコアとは似ても似つかないモノだったですよ。でもサ・・
まあとにかく、プレシーズンにしては、とてもエキサイティングな勝負マッチになったことだけは確かな事実だったよね。やはり両チームには、何らかのこだわり(深層心理に潜む強烈なモティベーション!?)があるということなんだろうか。プレシーズンの冷静な調整というよりも、意地の仕掛け合い・・っちゅう感じのガチンコ勝負へとゲームが「成長」していったわけだからね。
まあ、観ている方にとっても、入場料にオツリがくるといった、価値あるエキサイティングなガチンコ勝負になったわけです。
私も、「NACK5スタジアム大宮」が、ヨーロッパテイストにあふれる魅力的なサッカー専用スタジアムということもあって、ホントに足を伸ばしてよかったと、心の底から思ったモノです(わたしは、大宮へ行くたびに、アーヘンとかオッフェンバッハといったドイツの地方スタジアムで観客が放散する魅惑的な熱狂エネルギーに思いを馳せるのですよ)。
ということで、そんなスタジアムの雰囲気とサッカー内容に背中を押されるように、印象レベルのコラムをアップしようとキーボードに向かった次第なのでした。
ゲーム立ち上がりのアルディージャは、確固たるチーム戦術イメージを、正確に、そしてダイナミックにグラウンドへ描写するかのごとく(!?)素晴らしく勢いのある攻撃を仕掛けていった。
対するレッズは、そんなアルディージャの攻撃をしっかりと受け止めながら、(ショート)カウンターや、新加入のセンターバック永田充からの正確なロングフィードを起点にしたシンプルな仕掛けなど、機を見計らって必殺の攻撃を繰り出していく。そして実際に、何本も決定的チャンスを作り出した。
そんな印象的な立ち上がりだったからなんだろうね、ペトロヴィッチ監督が、「前半は素晴らしいサッカーを展開した・・あそこで、三点でも四点でもゴールを奪っていれば、スンナリと勝負も決まっていたはずだ・・」なんていうニュアンスのコメントを出していた。
まあ、そのコメントには半分だけアグリーだね。それは、前半も半ばを過ぎたあたりから、アルディージャが、全体的なゲームの流れを「互角以上」に支配しはじめたわけだから。
アルディージャは、本当によくトレーニングされたチームです。いつもながら、鈴木淳監督の優れた仕事に心からの拍手をおくっていた筆者なのでした。
まずディフェンス。そこで彼らが魅せつづける、効果的で忠実な「集散」はホントに秀逸でした。チェイス&チェックと周りのボール奪取アクションが、とてもスムーズに連動しつづけるのですよ。だからこそ、次の攻撃にも勢いが乗る。彼らの攻撃では、ボールがないところでの勝負の動きを、とても効果的に活用していたことが印象的でした。
後半も(レッズ山田暢久が退場になったこともあって・・)アルディージャが、全体的な勝負の流れを牛耳っていた。レッズが攻め上がっていく状況で、何本も、必殺カウンターを見舞ったのです。
ということで、まあ結果については、アルディージャが自分たちの手で勝利をもぎ取った・・という評価はフェアだと思うね。でも、スコア(点差)については、それが「何か」を正確に表現しているわけではない・・と思うけれど・・。
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ということで、ここからはレッズについて気になった戦術的なポイントを(その背景にある意味合いも含めて・・)簡略にピックアップすることにします。
まず、前半(20分あたりまでの立ち上がりの時間帯)に作り出した決定的チャンスから。
前述したように、そのチャンスメイクの流れは、ほとんどがカウンターやロングフィードからでした。要は、人とボールが動きつづけるような(攻守にわたって数的に有利な状況を作りつづけるという基本イメージの)組織サッカーというよりも、個の勝負を、より前面に押し出すタイプのチャンスメイクの方が目立っていたということです。
確かにこの試合では、そんな仕掛けプロセスがチャンスにつながった。でも相手に、対策を練られたら(レッズに対しては特に厳しくゲーム戦術を練ってくる!?)厳しくなるのは見えている。
要は、組織プレーを絶対的なベースに、個の勝負「も」より積極的にチャレンジしていく(より勝負にこだわる・・)サッカーを心がけるというアプローチが正しい方向性だということです。そう、攻撃の変化。そのためにも、いろいろな「攻め方イメージのオプション」を持っていることが大切だというわけです。
ロジック「ばかり」を前面に押し出すようなアプローチではなく、そこに「個の勝負という遊び」を入れて自由度をアップさせることで、相手ディフェンスにターゲットを絞り込ませない・・とも言えそうだね。
でもサ、「個の勝負」から入っていった(そればかりを前面に押し出し過ぎた!)場合、うまくいかないことの方が多い。だからこそ、ディシプリン(規律の確立)という視点も含め、人とボールを動かすというイメージを基本にすべきだと思うわけです。そうすれば、より効率的に相手守備の「薄いゾーン」へボールを運べるだろうし、個の勝負も、より効果的に仕掛けているでしょ。
ところで個の勝負(まあ突破ドリブルのチャレンジ)だけれど、後半途中から登場した新加入のマゾーラが魅せた爆発的なドリブル突破には舌を巻いた。あれは、本当にスゴイ。昔、むか〜し、ガンバに加入した「ン・ボマ」のプレーに目が釘付けにされた(フリーズさせられた)現象に似ているような・・。それほど、マゾーラの個の勝負プレーは驚嘆に値するレベルだったのですよ。
それに対して、期待を裏切りつづけている(同じポジションの)セルヒオ・エスクデロ。その個の勝負プレーの中途半端なこと。
彼だったら、ドリブルで相手を振り切ってしまうチカラは十分だし、実際に、何度かアルディージャ選手をブッちぎるシーンを演出した。でも、そこから繰り出す勝負バスやドリブルシュートといった最終勝負がいただけない。それらは、ことごとく「モノにならない」のですよ。その現象については、集中力を欠いた無責任プレーとしか言いようがない。
セルヒオにとってマゾーラは、これ以上ない程ポジティブな刺激になるはずだよね。同じポジションだし、やろうとするプレーも似通っている。でもマゾーラの場合は、ラストパス(ラストクロス)やドリブルシュートなど、ものすごく高い確率で危険なフィニッシュまでいってしまうのですよ。それに対してセルヒオの場合は、仕掛けのプロセスでは人々に感動を与えながら、最後は落胆させる・・というのがほとんど。
まあ、マゾーラというライバルの登場や、新任のペトロヴィッチによる効果的な心理マネージメントによって、これまでのような、集中を欠いた無責任なプレー姿勢(!)から脱却できるかもしれないね。
フォルカー・フィンケが新任のときも書いたけれど、新しい監督さんの仕事内容を評価するときの基準の一つとして、私は、セルヒオのプレー内容の変化(プレーの発展内容)を採用しているのですよ。その視点じゃ、フォルカー・フィンケは、セルヒオを(その才能を)十分に開花させた・・とは言えない。でも、ペトロヴィッチは・・??
次のポイントが、守備的ハーフコンビ。細貝萌がヨーロッパへ移籍してしまったから、鈴木啓太と柏木陽介のコンビに落ち着くのは妥当だと思いますよ。鈴木啓太も、攻守にわたって、以前のレベルまで戻っていると感じるし、この二人の機能性は、とてもよかったと思う。まあ、前述したアルディージャの時間帯では、(チームメイトとの中盤ディフェンスの連係が悪いために!)何度か振り回されるシーンも観られたけれどネ。
とはいっても、「タテ方向」の組織プレーの機能性については、それが上手くいっていたとは言い難かった。
一つは、後方からのゲームメイカー柏木陽介と、チャンスメイカーであるマルシオ・リシャルデス(以下マルシオ)によって構成される、中央ゾーンのタテの関係。また、右サイドの田中達也と平川忠亮、そして左サイドの原口元気と宇賀神友弥による「タテの関係」もある。
とにかくゲームの立ち上がりから、マルシオがボールに絡まない(絡めない)シーンの目立ち過ぎることが気になって仕方ありませんでした。マルシオと後方ボールホルダーとの「距離」が遠かった・・!? いやいや、そんなことは関係ないよ。レッズの後方ブロックは、「それでも」マルシオにパスを付けなければならないのですよ。
もちろん、マルシオが「下がって」くるという「やり方」もありだけれど、その場合、今度はチャンスメイクまでのプロセスが遠くなってしまう。
とにかく攻撃は、後方から「押し上げる」というのが基本なのです。ボールホルダーが、前後のスペースをつなぐドリブルで上がっていくこともあるけれど、やっぱり効果的なのは、ズバッという正確なタテパスを送ること。失敗しても、そんな「タテへの仕掛けパス」を、どんどん繰り出しつづけることこそが、攻撃プロセスの「ホンモノの活性化」につながるのです。
また、サイドゾーンで繰り出されるタテのポジションチェンジ(サイドハーフとサイドバックとのタテのポジションチェンジ!)だけれど、(山田暢久が退場になるまでの!?)後半立ち上がりの時間帯になって、やっと両サイドバックのオーバーラップと勝負ドリブルが出てきた。それは、ペトロヴィッチによる(ハーフタイムの)指示だった・・!? さて・・
とにかく、後半の立ち上がりになって、やっと(この試合で最初の!?)宇賀神の爆発突破ドリブルがみられたのだから、ちょっと違和感があったね。それは、タテへの仕掛けイメージが、より「個に偏っている」からこその現象だった・・またまた前後分断サッカーというテーマ・・!? さて〜〜・・
色々と書いたけれど、まだまだ、ゼリコ・ペトロヴィッチが、どのようなイメージでチーム戦術を練っているのかについては、具体的に見えてこない。まあ・・これからだね。
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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