The Core Column


The Core Column(29)__組織と個のバランス(攻撃のリズム)こそが!・・組織サッカーの加速装置、香川真司のケース・・(2014年3月18日、火曜日)

■メインテーマと、ウェイン・ルーニーというチームリーダーについて・・

「何をやっているんだよ・・アイツが全力チェイスを仕掛けているのに!!」

そのとき、文句が口をついた。

それは、マンチェスター・ユナイテッドの右サイドバック、ラファエルに対してのモノだった。

相手パスレシーバーへのラファエルのチェック(寄せ)が遅れたことで、「アイツ」がパスコースを限定したことで「そこしかなくなった」にもかかわらず、そのパスをインターセプトできなかったんだよ。

プレミアリーグ第29節、ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン(WBA)対マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)戦でのことだ。

マンUが、「0-3」というアウェー勝利をかざったこのゲームは、終盤の(ロスタイムも入れたら)20分弱だったけれど、7試合ぶりに香川真司が出場したプレミアリーグ戦でもあった。

巷(ちまた)では、「目立った活躍はできなかった・・」なんていうノイズもあったけれど、私は、彼の特長とチームにとっての「プラス価値」が、とてもよく表現されていたと思っている。

彼が入ったことで、それまで沈滞気味だった「人とボールの動き」が明らかに活性化したと思っているのだ。

ということで、このコラムでは、香川真司が、「組織サッカーの加速装置」として存在感を発揮したというテーマを深めていこうと思う。

冒頭のシーン。「アイツ」とは、ウェイン・ルーニーのことだ。

最前線で、相手のボールを全力でチェイスするウェイン・ルーニー。でも、そんな彼の守備ハードワークが、右サイドバック、ラファエルの、相手パスレシーバーへの「寄せ」が甘かったことで、結局は「本物のムダ走り」に終わってしまったのだ。

でも彼は、ラファエルに文句を言うこともなく、その後も、まったくめげずにチェイス&チェック(守備ハードワーク)をブチかましつづけるのだよ。

そんな彼に、攻撃となったら、チームメイトの誰もがボールを集めようとする。

そのベースが、トラップ&コントロール&ボールキープ&勝負パス、またはドリブル突破やシュートといった、ボール絡みプレーへの信頼にあることは言うまでもない。

でも私は、それ以上に、ルーニーが攻守にわたってブチかましつづける、組織的な(汗かき)ハードワークの量と質に対する、チームメイトからのレスペクトもあると思っている。

チームリーダーとして自他ともに認めるウェイン・ルーニー。そのバックボーンは、もちろん、強烈な意志のパワーなのである。

まあ、契約更改したことで受け取る大金に対する「意地」もあるかな・・あっと、それ「も」、プライドという意志パワーのパックボーンの一つか・・。

■マンチェスター・ユナイテッドが抱える問題・・

私は、今シーズンのマンUが、まだ、攻撃における組織プレーと個人プレーのバランスという「微妙な課題」を、十分に克服できずにいると思っている。

それは、組織(パス)サッカーの内実に問題があるからに他ならない。

WBA戦につづく第30節では(香川真司は出場せず・・)、リヴァプールとのホームゲームに、「0-3」という屈辱的な大敗を喫してしまったのだけれど、そこでも、マンUが展開する組織サッカーの劣化ばかりが目立っていた。

それぞれの選手がアタマに描写する「スペース攻略のイメージ」がうまく重なり合っていない(シンクロしていない!)。それでは、人とボールの動きがスムーズに連動していかないのも道理だ。

だから、多くのシーンで、相手ディフェンスブロックの「眼前」でパスを回す「だけ」になってしまう。そして最後は、無理なカタチの勝負コンビネーションや「ゴリ押しドリブル勝負」を仕掛けていく。

特に、勝負の突破ドリブル。

それを、有利なカタチで仕掛けていけないことには、今のマンUが抱える病巣の深さが如実に表現されていると思う。

有利なカタチとは、言うまでもなく、相手守備の(背後の!?)スペースで、ある程度フリーでボールを持つシチュエーションのことだ。

そう、スペースの攻略。そして、また別の発想が、私のアタマに浮かんでくるんだよ。

たまに、「優れた攻撃のリズム」という表現も使うのだが・・

私は、優れたサッカーには、ある特定の「リズム」があると思っているのだ。

そう、組織パスプレーと個人勝負プレーが、うまく噛み合っている攻撃のことだ。

優れた「攻撃のリズム」には、組織パスサッカーをうまく機能させるのは言うまでもなく、そこには、チームの誰もが自分たちの武器として「期待」している特定プレイヤーの「ドリブル勝負」もまた、「イメージ的に組み込まれている」ものなのである。

分かりにくいかもしれないけれど・・。

優れた攻撃のリズムという「イメージ」が、チーム内で確実にシェアされていれば・・

チームの誰もが認める(≒期待する!?)スーパードリブラーが、より「良いカタチ」で勝負ドリブルに入っていけるだろうし、周りのチームメイトたちもまた、同時に、ボールがないところでの、パスレシーブやサポートのアクションをスタートできる・・ということだ。

今のマンUでは、そんな「攻撃のリズム」が、うまく機能していない(仕掛けイメージが明確にシェアされていない・・)と、思うのである。

■そこに登場した「組織サッカーの加速装置」・・

WBA対マンUのプレミアリーグ戦に戻ろう。

そう、香川真司。

彼が登場したのは、後半31分。ロスタイムも入れれば、残り20分弱といったところだった。

プレーできる時間が短すぎる!?

いやいや・・。私は、香川真司の価値を、デイヴィッド・モイーズやチームに再認識させるために、十分な時間だと確信していたんだよ。

そして思ったとおり、マンUの組織サッカーが、良い方向へと回りはじめるんだ。

また、そんなポジティブ変化のなかで、ウェイン・ルーニーのプレーが(再び!)冴えわたりはじめたことも特筆の現象だった。

それも、ゲーム終了間際の時間帯であるにもかかわらずだぜ・・。

ルーニーにボールが集まることに変わりはないけれど、それまでと違うのは、そこに「加速装置」が備わったことだ。ボールを持つルーニーが、香川真司との「連係」を積極的に模索しようとするのも当前じゃないか。

もちろん「それ」は、ウェイン・ルーニーが、香川真司との組織コンビネーションを「楽しめる」からに他ならない。まあ、人間的にも、香川真司のことを好ましく感じているという側面もあるんだろうけれど・・。

「それ」は、香川真司にとっても、とても重要なことだ。何といっても、契約を更改したばかりのウェイン・ルーニーは、マンUの絶対的リーダーなのだから。

この二人の間には、とても良いイメージシンクロ関係が成り立っているのである。

ルーニーが、香川真司にパスを出し、そのままパス&ムーブで次のスペースへ抜け出していく。そこへ、測ったようなリターンパスが、香川真司から戻される。

そして再び、パス&ムーブで動いた香川真司へ(彼が狙うスペースへ!)ダブルリターンパスが送り込まれる。

二人だけで演出しちゃう「ワン・ツー・スリー・フォー」なんていう組織コンビネーションが加速するのも道理じゃないか。

もちろん、フアン・マタやウェルベック、はたまたフェライニや両サイドバックといった連中も、そんな、加速をつづける人とボールの動きに「乗って」くる。

マンUの組織サッカーが、目立って活性化していったのだ。人とボールが、よりスムーズに、大きく、そして素早く動きはじめたのである。

仕掛けの組織コンビネーションと個の勝負ドリブルが、高質にバランスしはじめるのも道理じゃないか。

そして、イメージ・シンクロ組織プレーに支えられた「優れた攻撃のリズム」も再生されていく。

なかでも、攻撃陣のポジションチェンジが目立っていた。

香川真司と交替してベンチへ下がったヤヌザイは、左サイドに張り付き気味だった。

そして、「ここ」がポイントなのだけれど・・

香川真司が登場してから、前述したように、最前線カルテット(ウェルベック、マタ、香川真司、そしてルーニー)のポジションチェンジが風雲急を告げるんだよ。

それだけではなく、ボランチのフェライニ(まあ、キャリックはアンカー気味・・)、はたまた両サイドバック(エヴラとラファエル)も、どんどんと前方のスペースへ押し上げていくようになったのだ。

そう、タテ方向のポジションチェンジ。

そりゃ、人とボールの動きが、縦横無尽に加速していくのも道理じゃないか。

そのキッカケの大きな部分を占めたのが、絶対的リーダーのウェイン・ルーニーと香川真司が織りなした、素早くシンプルな人とボールの動きによる「攻撃リズムの活性化」だったのである。

■ところで、日本代表・・

余談だけれど・・。

先日のニュージーランド戦について、「こんなコラム」をアップした。

そこでの主要テーマは、「もっとポジションチェンジを・・」というものだった。そのニュアンスは・・

・・前半は、組織サッカーの流れに「スムーズな良いリズム」が感じられた・・でも後半は、人とボールの動きが停滞気味になったことで(ボールのこねくり回しが多かったことで!?)攻撃も沈滞してしまった・・

・・ワールドカップで対戦する相手は、世界の強者なんだから、もっとポジションチェンジを活性化させることで、攻めに変化をつけなければ簡単に潰されてしまう・・といったモノだった・・

後半に日本代表の攻撃(組織プレー)が沈滞気味になった主な原因は、中盤のセンターゾーンに「仁王立ち」するようにボールをこねくり回す本田圭佑が、ヴァイタルエリアの「フタ」になってしまうシーンが目立ち過ぎていたことだ。

とにかく、日本代表の前線カルテットは、もっと活発なポジションチェンジを意識しなければならないと思う。

彼らが、自分たちの良さを存分に発揮できるための大前提は、人とボールが活発でスムーズに動きつづける組織(パス)サッカーがうまく機能することなのだから・・。

それがあれば、香川真司や岡ア慎司、またポストプレー(ボールキープ&勝負パス)で抜群の存在感を発揮する本田圭佑にしても、自分たちの特長を、より実効あるカタチでに表現できるはずだ。

その視点じゃ、日本代表も(今の)マンUも、同じタイプのテーマを抱えているということか。

■チャンスは確実に増大していく・・

香川真司という、組織サッカーの「加速装置」。

新任監督のデイヴィッド・モイーズは、個人勝負に強みを持つプレイヤーを、より高く評価する(好む)傾向があると思う。

その視点じゃ、たしかに香川真司の価値は、そんなに高くない。

ミランへ移籍した本田圭佑について書いた「以前のコア・コラム」でも書いたように、香川真司と本田圭佑は、「本物のドリブラー」ではないと思うのだ。

彼らは、組織パスコンビネーションサッカーをベースにしているからこそ、自分たちの才能を、最大限に発揮できるのである。

ということで、香川真司が存在感をアップさせ、その本領を発揮できるチャンスは・・??

ここにきて、デイヴィッド・モイーズも、個の勝負プレーを効果的に機能させられる絶対的ベースは「組織サッカーの量と質にあり・・」という普遍的なコンセプトを見つめ直しはじめた(見つめ直さざるを得なくなった!?)と感じる。

また香川真司には、マンUの絶対的リーダー、ウェイン・ルーニーとの相性(信頼関係)が抜群・・という強みもある。

私は、そんな様々な視点で、香川真司が復活するチャンスが、これから、どんどん増大していくに違いないと思っているのだが・・。

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「The Core Column」の全リストは、「こちら」です。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

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