The Core Column


The Core Column(41)_コラム再開のお知らせ(まずW杯期間中に発表したプリントメディア文章から)・・(2014年8月27日、水曜日)

■帰国してからのアクシデント(頸椎ヘルニアの再発・悪化)・・

どうも皆さん、本当にご無沙汰してしまって。

まあ、HPコラムでは、もう何度も書いているから、ここで反復する必要はないと思いますが、取り敢えず・・。

そう、頸椎ヘルニアによる神経痛。

ブラジルW杯がはじまる3週間前あたりから悩まされはじめ、W杯を通して苦しめられた。でも、W杯が終了し、帰国する頃には、完治を意識できるほどに回復していたんですよ。

そして帰国してから、いつもの生活ペースをスタートしようとしたんです。そう、単車での移動に、毎日のトレーニング(早足ウォーキングに自重マッスルトレーニング)。

特に腹筋のシットアップトレーニング。

両膝を曲げ(もちろん足の支持はなしだよ!)、ヒジをピンと伸ばした両腕をアタマに付けたシットアップ。まあ100回程度だけれど、そこでは、シットアップした頂点で、上半身を、鋭く左右に振る「ウェービング動作」を加えているんですよ。

でも、それがいけなかった。

グ〜、ピッ、ピッ・・ってな感じのリズム。でも、この、頂点での、急激な上半身(左右)ウェービング動作がいけなかったんだ。

あるとき、「ピッ、ピッ」ってな軽快なリズムで上半身を振ったとき、「うなじ」に、ピッっと痛みが奔ったんですよ。そう、頸椎ヘルニアの再発・悪化。

もう大ショックだった。そして落ち込んだ。

何せ、10週間も苦しめられていたんだからね。その神経痛が、以前にもどってしまったんだよ。そして、苦しみも復活した。フ〜〜ッ・・

・・首を反り返らせて視線を上げることが出来ない(首を持ち上げられない!)・・だから単車に乗れない・・歩くときも、うつむかなければ、肩胛骨から腕に かけて痛みが奔る・・だから電車での移動もままならない・・スタジアム観戦でも、異様な格好をしなければグラウンドを見ることができない・・記者会見で も、イスの背もたれへ身体を押しつけなければ(要は、ふんぞり返らなければ!)壇上へ視線を向けられない・・フ〜〜ッ・・

そんな、こんなで、(今でも!)落ち込んでいるっちゅう体たらくなんですよ。

でもここにきて、再び、徐々に完治の感覚が戻ってきている。そう、希望こそが、思考と行動の(生きるための!)唯一のエネルギー・・ってな感じ。

ということで、コラムを書く心理エネルギー(セルフモティベーション推力)も、徐々に高揚させられるようになってきたっちゅうわけです。

でも・・

W杯の前までのように、1週間ごとのアップ(火曜日はコアコラム、水曜日はバイオグラフィー)・・というのは難しい。

だから、これからは、二つの新連載アップは、ランダムということにさせてください。

ということで今回は、W杯期間中にプリントメディアへ寄稿した文章のなかから、二つを選んで照会させていただくことにしました。

一つは、決勝の翌日に仕上げた、「商工ジャーナル」での連載用のコラム。もう一つは、日本代表に必要なエッセンスというテーマで北海道新聞に寄稿したコラムです。

では・・

■まず、商工ジャーナル用のコラム・・

さて、ブラジルW杯が、ドイツ優勝で幕を閉じた。

今回は、2つの新しい歴史が刻まれた。まず、南米のW杯で初めてヨーロッパチームが優勝したこと。もう一つが、ブラジルの怪物ロナウドのW杯通算総ゴール数を、ドイツ希代のストライカー、ミロスラフ・クローゼが書き換えたこと。

そう、両方とも、ドイツが歴史を塗り替えた。彼らのサッカー内容からすれば、まさに順当な成果といえるだろう。世界中のエキスパートが、今大会のベストチームはドイツだと口を揃えるのも頷ける。

世界中のコーチが志向するのは、美しく勝つこと。そして、そのバックボーンは、何といってもハイレベルな組織サッカーだ。

今大会で、運動量、バス数で圧倒的な数字を残したのはドイツ。彼らは、サッカーの基本はパスゲームであり、その、流れるような人とボールの動きによる優れたパスワークにこそ、サッカーの美しさの本質が潜んでいるという事実を、世界中に思い起こさせた。

もちろん、そこに個の才能プレーを「効果的」に絡めれば、美しさと勝負強さのレベルをより向上させられる。そう、ドイツのように。

優れた組織プレーと個人プレーのハイレベルなバランス。それこそが、全てのサッカー人が目指すべきターゲットなのである。

ところで決勝。そこでは、二つの「異なった」サッカーがぶつかり合う興味深い勝負マッチが展開された。攻守にわたる究極の(美しい)組織サッカーを追求す るドイツが、メッシという希代の才能を中心に、しっかりと守り、そこから個の才能を前面に押し出す必殺カウンターを仕掛けていく勝負至上サッカーと対峙し たのだ。誰もが息を呑んで注目するのも道理だった。

あくまでも「自分たちのサッカー」を貫こうとするドイツ。ただ立ち上がりは、強力な守備ブロックを擁するアルゼンチンを攻めあぐみ、逆にカウンターから大 ピンチに陥る。アルゼンチンが仕掛けた戦術サッカーに呑み込まれそうになったのだ。私も含め、ドイツを応援する誰もが、何度もフリーズさせられた。

ただドイツは、追い詰められるほどにチカラを発揮する伝統そのままに、徐々に自分たちのサッカーを取り戻していくのである。タテへ仕掛けていく「意志」が際限なくアップする。そう、リスクへのチャレンジ。その量と質こそが、ドイツサッカーの真髄なのだ。

この決勝には、そんな興味深いコノテーション(言外に含蓄される意味)が満載だった。

そしてドイツが、粘るアルゼンチンを振り切って世界の頂点に立った。世界中のエキスパートやサッカーファンは、この結果に納得し、胸をなで下ろしていたことだろう。

やはりサッカーは、限りなく自由に、そして積極的にプレーするなかで、美しく勝つことを志向すべきなのだ。そう、最後の最後まで組織的にリスクへチャレンジしつづけたドイツのように。(了)

■次が、北海道新聞のために書いたコラム・・

「このままじゃダメだ・・オレ達は、ゼロから再スタートしなけりゃいけない・・サッカーは勝てばいいってもんじゃない・・内容でも評価されなければいけないんだ・・」

1996年のヨーロッパ選手権を制したドイツ。にもかかわらず、ドイツサッカーの重鎮が、そう危機感をあらわにした。当時のドイツには、「勝負強いだけのパワーサッカー・・」という、有り難くないイメージが付きまとっていたのだ。

そこから彼らは、若い選手に、主体的に考え、戦術的に工夫しながら創造力とテクニックを磨かせるという基本ベクトルを、忍耐づよく徹底した。

そしてドイツは再生した。他を圧倒する運動量とパス数をベースに、美しさと勝負強さが高質にバランスする組織サッカーで、再び世界の頂点に立ったのである。その絶対的ベースは、個人の卓越したテクニックと、強烈な『闘う意志』だった。

それに対して日本代表は、世界とのチカラの差を見せつけられ、惨敗した。

彼らに足りなかったのは何か・・。

イレギュラーするボールを足で扱う不確実なサッカー。その基盤は、フィジカル、テクニック、戦術、そして心理・精神的な基盤といった様々なファクターだ。

日本は、その全てにおいて劣っていた。私は、「世界トップとの最後の僅差」と表現する。あるレベルまではスムーズに到達するけれど、そこから最後の壁をクリアするのが難しいのだ。

日本は、テクニックや戦術では、世界標準の域に到達している。ただ、心理・精神的なファクターについてだけは、生活文化も大きく影響してくるから、難しい。

そう、ドイツが魅せた、積極的に勝負を仕掛けていく「強烈な意志」。不確実なファクターが満載だからこそ、勇気をもってリスクにもチャレンジしていかなければ進化など望むべくもないのだ。

W杯の統計数字。たしかに日本は、攻撃を仕掛けていく回数では他国と互角レベルにある。でもチャンスメイクの基盤であるペナルティーエリア侵入の頻度では、大きくランクを下げてしまう。

ボールはキープできるけれど、最終勝負を仕掛けていく内容では大きく劣っているというわけだ。

そこには、「組織プレーと個人プレーがアンバランス・・」という視点もある。たしかに日本人は、互いに助け合うことで連動する組織(パス)サッカーには秀でている。ただ、責任の所在が明らかになる「個」の仕掛けでは、まだまだ世界トップから引き離されているのだ。

だから、組織コンビネーションだけではなく、そこに「個」の勝負ドリブルも駆使することで相手守備をねじ伏せ、より可能性の高いチャンスを作り出すという、肝心の勝負のキモで弱さが露呈する。

日本サッカー界は、「個」を発展させなければならない。選手たちが自ら考え、積極的に自己主張する「真のサッカー文化」を醸成するのだ。

もちろん私は、誠実で謙虚、思いやり深い日本人の特質を誇りに思っている。6年間のドイツ留学生活があったからこそ、「外」から、その素晴らしさを体感できた。でも、暴力的なほどに厳しい闘いが展開されるサッカーの現場では、それがブレーキになってしまうケースも多い。

私は、二面性パーソナリティーという表現を使うのだが・・。

一度フィールドに立ったら、日本的なマインドで組織サッカーを加速させるのと同時に、欧米人にも劣らない、ある意味でエゴイスティックなまでに強烈な自己主張プレー(≒闘う意志に支えられたリスクチャレンジ!)も効果的にミックスしていける。そんな二面性である。

要は、「個」の意志だ。そのバックボーンを充実させる地道な努力こそが、いまの日本サッカーが取り組むべき最重要課題なのだと思う。

どの賢人の言葉だったか・・。意志さえあれば、おのずと道が見えてくる・・のである。(了)

■ということで、これからも、よろしくお願いします・・

ところで、これからの「The Core Column」ですが、いまは二つの方向性を探っています。

一つは、5秒間のドラマ。

要は、ある、攻撃と守備における瞬間的な「現象」から、サッカーエッセンスを抽出してディスカッションするというものです。

そして、もう一つが、サッカーエキスパートとのディベートを通じて、様々なサッカーエッセンスを抽出し、深めていく・・というもの。

サッカーエキスパートとのディスカッション。

まあ、誰にアプローチするのかは決めていないけれど、私が評価する方に、アタマを下げようと思っています。もちろん無報酬だしね。

そう、以前の、「The 対談」シリーズの復刻版。

最初は・・

岡田武史さんなんていいネ。まあ、どのようにしたら彼にアクセスできるかなんて、まったく分からないけれどサ、あははっ・・。

以前、イビツァ・オシムともやろうとしたんだよ。彼からも、オーケーはもらっていたんだ。でもその後、彼が、ものすごく忙しくなっちゃった。また私も、そう簡単には渡欧できなかった。

ということで、このハナシは立ち消えになった。

でも、以前の「The 対談」シリーズでは、例外なく、とても素敵な「刺激」をもらったから、このアイデアについては、モティベートされているんだよ。

さて、どうなることか・・

まあ最初は、5秒間のドラマからだね・・

では、(次はいつになるか分からないけれど・・)また〜〜・・

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ところで、ブラジルW杯に、後藤健生さんと「スカイプ」を介して繰り返したディスカッションをまとめた、ライブ感あふれる「ナマ対談本」が出来上がりました。

その新刊については、「こちら」をご参照ください。

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「The Core Column」の全リストは、「こちら」です。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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