The Core Column
- The Core Column(61)_戦友カリオカ(ラモス瑠偉)との対話・・久保建英(2)・・(2019年6月12日、水曜日)
- ■久保建英という希有な才能・・
「そりゃ、誰が見たって、あのドリブル突破からの強烈シュートは、スゴイって感じるよな」
そんな私のアプローチに、頷(うなづ)きながらカリオカが反応する。
「そうだよね・・誰が見たって、あれは素晴らしかった・・でも・・」
「えっ!?・・でも・・何?」
「久保のすごさは、そんなドリブル勝負だけじゃないんですよ」
「カリオカが言いたいのは、相手にとって危険なドリブルがあるからこそ、久保建英が秘めるパス能力も活きるっていうことなんだろ?」
「そうそう・・湯浅さんは、よく分かってるネ〜〜・・」
「久保がボールをもったら、相手はドリブルをイメージして警戒するでしょ。そこがビッグチャンスだし、久保は、そのこともイメージしているんだよ」
わたし。
「そういえば、カリオカも、ドリブルで突進していきながら、最後の瞬間に決定的スルーパスを通すのが上手かったよな」
「そして・・サ・・」
「そのパスをイメージせずに走り切らなかった(決定的スペースへ入り込まなかった!?)チームメイトには、強烈な文句を飛ばしてビビらせたりしてね(笑)」
「カリオカが言うのは、ドリブルで、相手の視線やアクションを引きつけ、最後の瞬間に、その逆を突く・・そんなイメージなんだろ・・」
私のアプローチに、カリオカが応える。
「そうそう、それそれ・・」
「久保のドリブルは、ホントに上手いし危険だよね。だからこそ、そこから送り込まれるスルーパスの威力が、何倍にもなるんだ」
そういうことだ。
やっぱりサッカーでは、組織パスプレーと個人勝負プレーを、高次元でバランスさせることが重要なテーマなんだよ。
そして、そのバランスが高まれば、高まるほど、ハイレベルなサッカーになるというわけだ。
わたし。
「そして、それもまた、ホンモノの天才へ成長していくための王道っていうわけだな・・」
カリオカ。
「そうさ・・」
「これまでの日本のチャンスメイカーじゃ、パスとドリブルの両方で、相手を怖がらせる選手は、あまりいなかったからね」
「でも、いまじゃ、中島翔哉、南野拓実、堂安律なんていう若手スター連中は、その両面で、チカラを発揮しているよね」
「だからこそ、大迫(勇也)も含めて、パスコンビネーションと勝負ドリブルを組み合わせる、とても危険な最終勝負を仕掛けていけるんだよ」
わたし。
「そう、まさにその通り」
「いま、両面を備えた、若手の優れた才能たちに、久保建英っていう競争相手が加わったというわけか」
「また日本の若手じゃ、その意味で、とても才能がある選手が目立ちはじめているしね」
「ところで・・」
「さっきの、久保建英が魅せた、勝負ドリブルから鋭いシュートを放ったシーンだけれど、多分メディアは、そればっかり採りあげるんだろうな。なんてったって、分かりやすいからね」
「でも、久保建英の優れたパス能力にフォーカスするメディアは、そんなに多くないかもしれない」
「オレは、FC東京のゲームを観るなかで、久保建英が、ドリブルとパスを、とても高いレベルでバランスさせているのを体感しているんだよ」
「エルサルバドル戦でも、あの派手なシーン以外にも、とてもスムーズに、そして相手に読まれにくいモーションで、ギリギリの決定的バスを送り込んでいた」
それに対して、カリオカ。
「そうそう・・」
「ドリブルで突っ掛けながら、ノールックの素早いモーションから、何度か決定的パスを送り込んでいたよね」
「あのパスが通っていたら、それこそ完璧フリーの大迫(勇也)とか中島(翔哉)がゴールを奪っていたに違いない」
「まあ、そのパスは、相手の身体やアタマに当たっちゃったけれど・・ホント、惜しかった・・あのパスの瞬間、オレも身体を硬くしちゃったよ」
「とにかく、あの体勢から、相手がまったくイメージできないタイミングで、あんな鋭い(浮き球の!)スルーパスを送り込むんだから、久保の才能には疑う余地はないよね」
それに対して、わたしも。
「そう・・ホントにそう思う」
「ところで、久保建英のディフェンスだけれど、それも、とても内容があったと思うんだ」
「タイミングの良いインターセプトもそうだけれど、やっぱり、前線からの全力チェイスが特筆だったよな」
「それがあったことで、後方のチームメイトが、より効果的にボール奪取アタックを仕掛けられた・・とかさ・・」
「あっと・・」
「一度などは、相手パスレシーバーへの爆発アタックでボールを奪い返し、そこからショートカウンターの流れを創りだしたシーンもあったな」
「そういえば、カリオカも、攻守ハードワークとリスクチャレンジが、すごかった。読売サッカークラブ時代は、オレも、カリオカにゃ、大いに助けられたっけ」
「感謝しているよ・・ホントだよ(笑)」
ニカッと微笑んだ、カリオカ。
「そう、攻撃でのフリーランニングも含めて、そんな攻守ハードワークとリスクチャレンジがあるからこそ、チームメイトたちも信頼するし、彼を探してボールを付けるってコトだよね」
フムフム・・
ということで、最後に、久保建英を取り巻く「環境」というテーマにも触れておくことにした。
わたし。
「これからの久保建英の進化というテーマだけれど、やっぱり、環境だな・・」
カリオカ。
「そうだよネ・・」
「湯浅さんが言う環境のなかで、もっとも大事なのは、監督でしょ」
「これまで久保は、長谷川健太とか森保一も含めた、優秀なプロコーチとめぐり会っているよね。それが、とても良かったと思う」
「デビューのさせ方とか、チーム内での戦術的な使い方とかさ。それで、選手の将来が決まっちゃうといっても言いすぎじゃないからね」
わたし。
「そうそう、そうなんだよ」
「まあ今までは、優れた監督との出会いとか、これから行くコパ(南米選手権)や、来シーズンからチャレンジする本場のサッカーとか、環境としては、これ以上ないほど整いつつある」
「特に、本場のチャレンジじゃ、競争は激烈だろうし、そこで出会う監督だって超一流だろうから・・まあ、久保建英の将来は、明るいよね」
それに対してカリオカ。
「そう・・」
「コパじゃ、南米の、ハンパないプレッシャーに耐えながら、それを乗り越えていかなきゃならないし、来シーズンの本場チャレンジだって、とても厳しいモノになるよね」
「まあ、久保のことだから、環境が厳しくなればなるほど大きく飛んでいくとは思うけれど・・」
「とにかくオレ達も(日本も)、しっかりとバックアップしていかなきゃいけないよね」
そんなコトを話し合いながら、最後は、互いに「フンフン・・」ってな感じで、久保建英に対する期待と希望を(自分たちなりに!?)見つめていた次第。
へへっ・・
<次からは、サッカーの根源的なテーマに入っていきます>
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「The Core Column」の全リストは、「こちら」です。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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