湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2010年4月10日、土曜日)

 

さて、レッズが本格的な上昇気流に乗りはじめた・・(ALvsR, 0-2)

 

レビュー
 
 昨夜、二試合をレポートした後から、アルビレックス対レッズを観はじめたのですが、どうもうまくアタマに入ってこない。

 皆さんも経験があるはずです。要は、サッカー内容の本質がアタマに浮かんでこない・・観察しているサッカーの背景コノテーション(言外に含蓄される意味)のアイデアが広がりをもっていかない・・そして、単にゲームの流れに「目をやっている」だけ・・っちゅう体たらくなのですよ。

 まあ、ビデオを観はじめたのは、既に「0200AM」を回っていましたからね。それに、その2時間後には、本物の「エル・クラシコ」もはじまってしまう。えっ!?・・あ〜〜・・、要は、リーガ・エスパニョーラの、レアル・マドリー対FCバルセロナの勝負マッチのことです。「それ」にしても、どうせ観ても同じ感じだろうし、勝敗だけ「しか」アタマに残らないに違いない・・。

 ということで、観戦をギブアップして寝ることにした次第なのでした。そして、ゴソゴソと起き出したのは翌朝の0900AMをまわっていた。フ〜〜・・、まあ仕方ない。

 でもサ・・・、今朝ビデオを観る前に、偶発的にエル・クラシコの結果まで「も」知ってしまったのですよ(・・アルビレックス対レッズの結果は昨夜のうちから知っていた・・もちろんこのゲームについては戦術的なポイントの分析が目的ですからネ・・)。

 エル・クラシコの結果を偶然知ってしまったこと・・。自分のミスだったけれど、本当にアタマにきた!! だから仕方なく「ゲーム内容」についても情報サイトを読むことにした。そして、エル・クラシコを観戦するモティベーションが、勝負の行方を手に汗握って追うのとは違う、純粋に戦術的な興味へと移っていった・・バルサのレベルを超えた組織プレー・・メッシ・・等々。もちろん、結果を知らないで、そんな戦術ポイントに舌鼓を打っていたら、分析アイデアも、もっと新鮮でダイナミックに、アタマのなかで展開していったに違いなかったけれど・・。フ〜〜ッ・・、まあ仕方ない。

 ということで、再びアルビレックス対レッズ戦を観はじめたのでした。そうしたら、たしかに昨夜とは違う。アタマに浮かんでくる様々なアイデアの広がりが違うんですよ。そうそう・・これだよ・・

 ということで、最初に気付いたのは、やはりというか・・レッズ選手の、組織プレーを効果的に機能させようとする姿勢(意識と意志)が顕著に活性化しているというテーマでした。そして、その意志が、より高いレベルで「有機的に連鎖」するようになっている・・

 ちょっと前までは、(それは、部分的なダイナミズムなんて表現できるかもしれないけれど・・)一人ひとりの強い意志が、微妙ではあるけれど、「ブツ切り」に表現されているという印象の方が強かった。要は、勝負イメージが、うまく有機的に連鎖しなかったという印象の方が強かったのですよ。それが、ここにきて、攻守にわたる組織プレーの流れが、本格的に「チーム全体として」機能していると思えるようになってきた。守備においても・・攻撃においても・・

 守備でのボール奪取プロセスについては、もう言うまでもありませんよね。忠実で、ダイナミックな「チェイス&チェック」を絶対的なベースに、その周りで展開される、インターセプト(相手トラップの瞬間でのアタック)や協力プレスなど、有機的に連鎖しつづける組織プレーが、とてもうまく回りつづけている。まあ・・素敵に機能しつづける、「統一されたハーモニーに裏打ちされた効果的な集散」・・ってなことですかね。

 だからこそ、次の組織的な攻撃もうまく機能する。もちろん(人とボールが動きつづける)組織パスが、とても効果的に機能しつづけているからこそ、相手守備ブロックの「中」や「背後」のスペースを上手く攻略していける。だからこそ、良いカタチで「勝負ドリブル」も仕掛けていけるし、効果的な勝負コンビネーションもスタートさせられる。そして、だからこそ、とても可能性の高いシュートシーンも演出できる。フムフム・・

 エジミウソンやポンテだけじゃなく、田中達也のドリブルシュートも、どんどんと「次の次元へ」と発展していると感じます(聞くところによると、日本代表の岡田監督も、最終メンバー発表に二段階にするかもしれないとのこと・・それは良いアイデアだと思いますよ!)。

 もちろん、そんな前戦プレイヤーだけじゃなく、このところ、世界を意識した本格的なブレイクスルーへ向けて、とても大きなステップを踏みつづけている阿部勇樹も、(相手守備ブロックにとっては、まさに消えてしまうに等しい!)三人目・四人目プレイヤーとして、最後の勝負所で、スッと顔を出してシュートに絡んでしまうのです。フムフム・・

 結局、このゲームでのシュート数は、アウェーを戦うレッズの16本に対し、ホームのアルビレックスは9本だったわけですが、その「本当の内容」には、その数字以上の「量と質の差」があったと評価するのがフェアでしょうね。とにかく、レッズの攻撃は、どんどんと発展していると感じますよ。もちろん、選手個々の、強烈な「組織マインド」を絶対的なベースにしてネ・・

 レッズの攻撃を支えているポンテ。契約は延長するしかないでしょうね。攻守にわたって「強烈な意志と実効プレー」を魅せる彼のような「タイプ」は、柏木陽介も含めて、いまのレッズでは代替が効かないと思う。もちろん契約が延長された瞬間に、ポンテの「緊張の糸」がプツリと切れてしまう危険性は誰も否定できないわけだから、それなりの「心理マネージメント」は必要だよ。まあ、フォルカー・フィンケという「ストロング・ハンド」ならば大丈夫だとは思うけれど・・

 サヌ。とても素敵なデビューを果たした。フォルカー・フィンケに「もっと出来るはずだ・・」と檄を飛ばされたらしいけれど、彼のような「アフリカのワイルドな文化」がチームに持ち込まれることは、チームの体質を強化する「異文化ミックス現象」という視点でも、とても期待できる。そう・・フランスやオランダが「世界へブレイクスルー」を果たしたキッカケの大きなところも「それ」だったわけだからネ。あっ・・ちょっと論が飛躍しすぎか・・スミマセン・・あははっ・・

 センターバックコンビ。特に山田暢久。これから、また、「天才ヤマダ」って呼ぶことにしましょうかネ。とても深い自覚をベースにした集中力を魅せつづけている・・だからこそ、彼の天賦の才が存分に発揮される・・まあ、まだ、ポンッ!て、集中が抜けてしまうシーンも散見されるけれど、それもどんどん改善していくでしょう・・

 最後に闘莉王。彼が抜けたことは、阿部勇樹や山田暢久のパフォーマンスアップにしても、忠実なラインコントロールが機能しはじめたことにしてもチーム全体の雰囲気(体質的なバックボーン!?)にしても、今のところは、とてもポジティブに作用していると思うね。

 (強烈すぎる自己主張というパーソナリティーも含む!)天才という「諸刃の剣」・・。それもまた、サッカーチームを発展させるプロセスにおける、メインテーマ(深〜い学習テーマ)の一つなのですよ。

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓することになりました。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 



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