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チャンピオンズリーグ再開!・・ここでは三試合をまとめてレポートします・・(2003年2月21日、金曜日)

さてチャンピオンズリーグが再開しました。もちろん私も、放映された試合は全部チェックしていますよ。

 ここでは、それらの試合で気付いたポイントを短くまとめます。

 とはいっても、昨日にアップした「A3」レポートによってアクセス数が多くなり、私が契約しているプライベートHPサーバーがオーバーロードしてしまいました。ということで、このレポートのアップは、明日の金曜日ということになります。悪しからず・・。

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 ではまず、バルセロナ対インテル戦から。結果は皆さんご存じのとおり、ホームのバルセロナが「3-0」という完勝をおさめました。もちろんそれは数字的なものです。それでは内容は・・? やっぱりバルセロナの完勝。ゲーム内容と数字的な結果が一致すると、何かホッとしたりして・・。

 守備ブロックが強いイタリア勢ですが、この試合では、切れまくるサビオラに四苦八苦させられてしまいます。もちろん彼一人ではなく、左サイドのモッタ、また守備的ハーフでゲームメイカーでもあるシャビ、タイミングの良い忠実なバックアッププレーをつづけるコクー等の活躍も目立ちました。彼らがいたからこそ、サビオラの才能が活かされた・・。

 先制点は、まさにエキサイティングという表現がピタリと当てはまるスーパーゴールでした。シャビの、素早いボールコントロールからの間髪を入れないグラウンダーパス。狙うは、最前線のサビオラ。このバスが素晴らしかったんですよ。インテル最終ラインの中央ディフェンダーたちが「読みイメージ」を構築する間を与えないシャビの素早いパス動作。そして、相手からある程度の間合いを取ったサビオラの足許への、ズバッという強烈なグラウンダーパスが地を這う。それによって、サビオラのプレー選択肢が大きく広がったというわけです。このゴールについては、最前線への、素早いタイミングのグラウンダーパスの可能性というテーマで、来週のサッカーマガジンで書きます。

 インテルの守備ブロックは、例によって強固でしたよ。相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する忠実で激しいチェック。それをベースにした、素早い強力プレス。それはよかったのですが、この日のバルセロナは出来が違った。彼らは、そんな頑強なインテル守備ブロックを何度もこじ開けてしまったのです。

 バルセロナの二点目ですが、そこでも強いタテパスを受けたサビオラのドリブルシュートが効きます。そのシュートをバルセロナGKが弾いたことでCKを取り、そこからのこぼれ球をコクーが決めたという次第。

 序盤は互角だったのですが(インテルも、ビエリが惜しいシュートを放ったりした!)、徐々に、素早いボールの動きでインテルの激しいディフェンスを外しはじめたバルセロナがゲームの主導権を握っていきます。そして後半、3-0となった後に起きた、フラストレーションのたまったレコパの一発退場。

 このシーンでは、明らかにレコパは、故意に、スライディングしたプジョールの顔を蹴りましたよ。一度、プジョールのスライディングを避けるために曲げた右足を、彼の顔を目がけて再び伸ばしたんですからね。レッドカードを受けた後、必死にプジョールに「言い訳」をしにいったレコパでしたが、まあ受け容れられるはずがありません。後悔先に立たず。仕方ない。

 まあ試合の行方は、その前に決まっていましたけれどね。

 ファン・ハールからチームを受け継いだアンティッチ監督。よくチームをまとめていると感じます。さて、バルセロナの逆襲がはじまった。

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 次は、マンチェスター・ユナイテッド対ユーヴェントス。

 この試合でも、攻撃においても基本的なポジショニングバランスを「あまり」崩さないイタリア(ユーヴェントス)の効果的な守備が目立ちに目立ちます(とにかくイタリアチームの戻りは早い、早い・・また、ボールホルダーへのチェックも忠実&ハード!)。まあ、開始4分にマンUのブラウンに先制ゴールを決められたこと(CKからのアシストは、言わずと知れたベッカム様!)、また多くの主力を欠いたことで選手たちの危機感が高まったこともあったのでしょう。普段はサブの選手たちが、チャンスをモノにしようと、全力を出しきる闘いを展開していました。

 特に、左サイドを基本ポジションにプレーしたサラジェッタ。良い選手です。うまいキープからの「実」のある展開パス。危険な単独勝負。全体的には、落ち着いた実効プレーを展開しました。流石にユーヴェントス、優れたリザーブを抱えている。

 ユーヴェが試合の主導権を握った背景には、マンUの中盤ディフェンスが甘かったこともありました。どうも、ロイ・キーンのモティベーションが低いと感じます。普通だったら、強烈なチェックに行くところなのに、この試合では、様子見になってしまうシーンが続出してしまって・・。そんなチームリーダーの消極ヴィールスが蔓延した?! とにかくマンUの中盤守備は、消極姿勢ばかりが目立っていました。だから、中盤でフリーになったユーヴェの選手たちが、クルクルとパスを回すというわけです。

 とはいっても、そこはマンU。危険地帯に入ってきたら、頑強な最終守備ブロックがしっかりと受け止めます。要は、ユーヴェのボールの動きに、最前線への強烈なグラウンダーパスなどの「変化」が足りないから、決定的な場面ではマンUのディフェンダーに抑え込まれてしまうということです。攻めつづけるユーヴェでしたが、前半での決定機は、ネドベドの中距離シュートくらいでした(左ポストを直撃!)。

 それにしても、マンUは、一時期から比べたら、パフォーマンスが低落気味だと感じます。先日レポートしたFAカップ5回戦でも、ホームで、アーセナルにうっちゃられてしまったりして・・。まあ、絶対的なゲームメイカーであるヴェーロンが戻ってくれば、確実に復調するでしょうけれどね。

 ゲームを全体的に支配されつづけるマンU。それでも私は、「ヤツらは、明確にカウンターを狙っている・・だから、一発の勝負ロングパスが出せるベッカムにボールを集めようとしている・・」なんて思っていたのですが、どうもそんなアイデアがうまく機能しない。ベッカムからは、例によっての夢のようなロングフィードやサイドチェンジパス、はたまた正確なクロスは飛ぶのですが、それがシュートチャンスにつながらない。また人数をかけた「カウンターシーン」の演出もままならない。

 ゲームは、支配しながらもシュートチャンスを作り出せないユーヴェに対し、堅牢な守備ブロックでそれを受け止め、単発のカウンターを仕掛けていくマンUという構図がつづきます。まあ、後半の15分あたりから10分間ほど、攻撃に人数をかけはじめたマンUがペースを握る時間帯はありましたが、またまたユーヴェにペースを奪い返されてしまって・・。

 それでも最後は、中盤での一発プレスでボールを奪い返したベッカムから、「これぞベッカム様!」という、フワッとしたラストロング(タテ)パスが、走り込むファン・ニステルローイにピタリと合います。素晴らしいラスト・ロビングパスと、ファン・ニステルローイのダイレクトシュートではありました。

 あっと、最後の最後に、この試合で、例によっての安定したパフォーマンスを魅せつづけたネドベドが、意地の中距離シュートを決めました。まあ、マンUのバルテズにとっては、ブラインド・シュート(シュートボールが、選手たちの陰で見にくくなること)ではありましたが・・。

 そしてマンUが、2-1という堅実な勝利をモノにしたわけですが、ユーヴェの怪我人が暗い影を落としていたことも確かな事実でした。次のリターンマッチが楽しみです。

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 さて、最後は、レアル・マドリー対ドルトムント(2-1で、ホームのマドリーが勝利!)。

 注目は、何といってもまずロナウド。レアルとロナウドについては、プリントメディアで発表した文章もふくめて先月の末にレポートしましたし、来週発売の週刊プレイボーイの連載でも書きました。「あれ」では、あの才能が本当にもったいない・・。

 ところがこの試合では、明確なロナウドの「イメチェン」を感じたんですよ。もちろん自分主体の、プレーイメージ改善姿勢のことです。

 それは、最前線に突っ立っていた先週までのロナウドからすれば、本当に明確な「変化の兆し」でした。

 「他の選手たちは、チームの成功あってのスターだというメカニズムを理解しているのに、ロナウドだけがチームに協力しない・・」というデル・ボスケ監督の発言が効いた?! それとも、チーム内で話し合いがあったのか?! まあ、そこのところ(チーム内部的な出来事)については知る由もありませんが、その立ち上がりの時間帯、明らかに、ロナウドのプレー姿勢に変化が見られたことだけは確かな事実だったのです。もちろん私は、興奮していました。「よし! それだ!!」・・なんてネ。

 それでも、変化の兆しが感じられたのは、わずか15分くらいで、その後は、また元のロナウドに戻ってしまいます。それでも、少なくとも兆しだけは感じさせてくれたのだからオーケーかな?!

 そしてレアルの組織プレー(パスワーク)も、元に戻ったロナウドが大きな原因で、徐々に沈滞していく。やはり「縦方向のボールの動き」も絡まなければ、忠実なドルトムント守備ブロックを振り回せるはずがありませんからね。

 とはいっても、そこはレアル。組織がダメなら個人があるさ。フィーゴが、ジダンが、ラウールが、はたまたフラビオ・コンセイソンやロベカルが、中盤の高い位置からどんどんと個人勝負に挑んでいくのです。それが功を奏し、互角に立ち上がったゲームが、徐々にレアルのペースになっていきます。どうも、ロイターやフリングス、ヴェルンスやメッツェルダーでは、彼らの突進を余裕を持って受け止められない・・。それでも、ギリギリのところで耐えつづけるドルトムント。

 とはいっても、ドルトムントも押されっぱなしではありません。攻守にわたって抜群の運動量で実効プレーをつづけるロシツキーを中心に、エヴェルトン、コレル、アモローゾといった攻撃陣ばかりではなく、デーデ、エヴァニウソンといったディフェンダーも、チャンスを見計らって押し上げていきます。もちろんそこでは、クリエイティブなタテのポジションチェンジがくり返されます。それでも、次のディフェンスでバランスの崩れることがない。やはり彼らの守備意識は超一流です。

 タテのポジションチェンジでディフェンダーが攻め上がれば、ロシツキーばかりではなく、エヴェルトンやアモローゾ、はたまた最前線のコレルまでもが、必要に応じて最終ラインまで戻って忠実なディフェンスを展開するのです。

 守備に対する強い意識が選手全員に深く浸透しているからこそ、攻め上がるディフェンダーも後ろ髪を引かれることがない・・だからこそ、タテのポジションチェンジも高い効果を発揮する・・それこそが、ポジションなしのサッカーという理想型へ向かうドイツサッカーの真髄・・。そのことについては、いろいろなメディアで既に何度も書いている通りです。

 特に、コレルのプレーは特筆ものでした。足でもよし。アタマでもよし。守備に入ってもよし。前半30分に、そのコレルがズバッと決めた先制ゴールは、彼の忠実な仕事の正当な報酬でした。

 もちろんその後は、レアルの攻めのペースが高まりつづけ、何度も決定的なチャンスを作り出します。フィニッシャーの中心は、やはりラウール。ドリブル勝負ばかりではなく、シンプルな展開パスから、素晴らしく忠実でクリエイティブな爆発フリーランニングも魅せつづけるのです。そんな忠実な実効プレーが結実したのは、前半のロスタイム。倒れ込みながらも、粘りのスライディングシュートを決めたのです。これで1-1。

 決勝ゴールを演出したのは、右サイドで抜け出したジダンでした。後半11分のことです。フリーで持ち上がるジダン。冷静にゴール前の状況を見極めます。そして選択したのが、ファーポストスペースをイメージした「トラバース・ラストパス」。それは、ゴールキーパーと守備ラインの間の決定的スペースを、ゴールラインに平行に横切るパスのことです。

 それが、まさに夢のラストパスとなります。彼には明確にイメージできていました。ファーサイドで待つロナウドだったら、このパスコース、このパススピードでも追いつく! そしてまさに、そのロナウドが決勝ゴールを決めたのです。

 とはいっても、そのトラバース・ラストパスに追いついたロナウドのシュートは、ゴールへ向かうのではなく、ロナウドのシュートコースを予測して倒れ込むドルトムントのスーパーGK、レーマンの身体にぶつかってしまったのですがネ(そこからレーマンの身体の下を通り、コロコロとゴール内へ!)。

 その後、残り20分を切ったところで、ロナウドとグティーが交代しました。そしてレアルのサッカーに、以前の「組織プレーのパワー」が蘇ってきます。2-1でリードされているドルトムントが必死に攻め上がってくる状況にもかかわらず・・です。

 組織プレーと個人勝負プレーがハイレベルにバランスし、全方位から相手守備ブロックを崩していける魅惑的なレアルサッカー。ちょっと心が躍ったものです。

 個人の能力を単純に積み上げた「基本的なチーム力」では、レアルの方が上でしょう。それでも次はドルトムントのホーム、ヴェストファーレン・シュタディオンですからね。この7万人ほどの観客を呑み込む巨大な競技場は、マンUのオールドトラフォードにも匹敵する、夢のように素晴らしいサッカー専用スタジアムです。

 その雰囲気は、まさに本場。私も、何度も、スタンドの興奮をシェアしたものです。本当に次(来週の火曜日)のリターンマッチが楽しみで仕方ありません。




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