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05_ヨーロッパの日本人・・今週は、レポートを書き足していきます・・まず中村俊輔、そして小野伸二に中田英寿・・(2005年10月2日、日曜日)

まあ、相手はそんなに強くないし、相手も含め、全体的にテクニカルな選手が少ないこともあるんだろうけれど、それにしても中村俊輔の目立ち方は特筆に値するネ。今や、セルティック攻撃の明確なリーダーといった雰囲気ですよ。

 とにかく良いカタチでボールを持つ頻度が抜群に高い。それは、ボールがないところでのアクションの量と質が優れているからに他なりませんが、味方の全員が「シュンスケ」を探しているという側面もあります。そんな信頼の絶対的ベースは、もちろんボール絡みのプレーコンテンツの素晴らしさ。要は、シンプルにやるべきところと「個の勝負」を仕掛けるところの使い分け(メリハリ)がいいということです。またボール絡みのプレーにしても、以前のような「こねくり回し」とは隔絶した、実効ある「個のエスプリプレー」と呼べるレベルにあります。いや、素晴らしい。

 中村によって、セルティック中盤での人とボールの動きも活性化したと感じているのは私だけではないはずです。この試合の前半終了間際のセルティック追加ゴールのシーン。ゴールに至るまでの10本近い組み立てパスをリードしたのは、疑いなく中村俊輔でした。ボールのないところで動き回り、ダイレクトのシンプルパスの「基点」になることで、どんどんとボールの動きを活性化させていく中村俊輔。最後は、ワンツースリーという素早いリズムをイメージしたシンプルなパス&ムーブでリターンパスを受け(最後の&ムーブは全力ダッシュ近い!)、これまたシンプルなタイミングで、逆サイドでフリーになっていたペトロフへ、ズバッという鋭いグラウンダーパスを決める(そこからのパスを受けたマローニーが振り向きざまにシュートを決めた!)。いや、ホント、ほれぼれする仕掛けのリーダーぶりでした。

 こうなったら、中村の敵は「彼自身のなかにあり」ってなことになりますかネ。彼には、より高いところを目指して欲しい。だからこそ、ディフェンスやボールがないところでのプレーコンテンツをもっともっと高めて欲しい。何といっても、マズローの欲求五段階説からすれば、「自己実現欲求」のレベルに達しようとしている中村俊輔ですからね。そうなったらもう、自分自身の意志のみが問われるというわけです。

 守備にしても攻撃でのボールなしのプレーにしても、まだまだ発展する可能性を秘めた中村俊輔。これからは、目標をどんどんと昇華させていくことで、社会的なレスペクトの高揚もターゲットにしましょう。それによって、スコットランド(イギリス連邦)における「日本」のイメージアップにも、中田英寿とともに貢献する・・。サッカーが「ものすごく深いボールゲーム」であり「社会メカニズムの凝縮」という側面も有しているからこそ、自身のプレーコンテンツによって、インテリジェンスを超越した哲学的なメカニズムをも表現できると思っている湯浅なのですよ。ボール絡みの魅惑プレーだけではなく、チームにとって重要な意味があるクリエイティブな汗かきプレーをも積み重ねることができる・・とかネ・・。そんな様々な側面を内包するプレーコンテンツには、サッカーが自分自身の意志によってプレーされる限りなく自由なボールゲームであるからこそ、より深い意義があるのですよ。ちょっと論旨が「展開し過ぎ」ですかね・・。まあ今夜は、このあたりでベッドに入ることにします。明日は、小野伸二や中田英寿を、この文章に書き足すカタチでレポートする予定です。では・・

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 やっぱり、イラついている小野伸二は観たくないね。それを象徴していたのが、前半でのファール覚悟のスライディングタックル。あのシーンは、ちょっといただけなかった。

 この試合での小野のプレーコンテンツも、前節レポートに右へならえ・・といった、あまり目立つものではありませんでした。どうもうまくプレーペースを高揚させられない小野伸二なのです。もちろんそれは、ゲームへの「入り方」が良くなかったからに他ならないと思っている湯浅です。まずディフェンスからゲームに入っていく・・それも自身が積極的にボールダッシュ勝負に絡んでいく・・また攻撃でも、ボールがないところでしっかりと動き回ってボールタッチの頻度を上げる・・。そんな自分主体の忠実プレーをうまく機能させられなかったから、、自分にボールを集められず、様々な意味を内包する「ボール絡みの実効レベル」を押し上げられなかったということでしょう。

 私は、攻守にわたって小野伸二がチームをリードするというシーンを期待しているのだけれど、どうも、そのレベルまで彼の実効コンテンツを高揚させるまでには、まだまだ紆余曲折がありそうだね。

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 さて、クラシックなテクニシャン&パサータイプのオコチャ(元ナイジェリア代表)とコンビを組む中田英寿。オコチャとの信頼関係は良くなっているけれど(彼らの間でうまくパスが回るようにはなってきている・・でも・・)、やっぱりオコチャを経由すると、どうしても最終勝負ゾーンの人数が「薄く」なってしまう。彼は「次のパスレシーバー」になるようなタイプじゃないですからね、だから最後の仕掛けシーンでの人数が、どうしても十分ではなくなってしまうのですよ(仕掛けが、一発勝負という単調なリズムになってしまう)。クラシックなパサータイプは、パス&ムーブを実行しない。要は、彼がコアになった(彼自身もボールのないところで積極的に機能するような)コンビネーションプレーなどはほとんど出てこないということです。何せ、自分が出すパスこそが「決定機を演出する最終兵器」だからね。味方とのコンビネーションを効果的に増幅させるための次の押し上げランニングをするよりも、まず自分のパスの成り行きを最後まで見届けようとするっちゅうわけです。フ〜ッ・・。それでも、中田に触発された部分もあるんだろうね、オコチャのプレー内容が、シンプルなタイミングのパスを出したり、たまには素早いコンビネーションもイメージするなど、より組織的な方向へ向かいはじめたことは確かだとは思うけれど・・。

 それにしても中田英寿は、攻守にわたってよく動く。入団したときの記者会見では「サッカーを楽しみたい・・」なんていう内容の発言が何度も繰り返されたわけだけれど、彼は、楽しむためには、攻守にわたる組織プレーの基本タスクを常に全力でこなさなければならないという「メカニズム」をよく理解しているということです。素晴らしいね。

 とはいっても、チームメイトたちは「勝負を急ぎ過ぎる」という傾向がまだまだ強いから、どうしても仕掛けが、前へ、前へという単調なリズムに陥ってしまう。急がば回れ・・なのにネ。

 後半に入り、オコチャがケガで退場してから、中田を経由した、人とボールがよく動く仕掛けが増えました。そのハイライトが、後半25分あたりの組織コンビネーションを基盤にした仕掛けプロセス。そこでコアとして機能した中田は、3回、4回とボールに触り、最後は、最前線で相手マークを背負っている味方とのショートワンツーから、自分自身が決定的ゾーンへ抜け出していった・・。それは、それは、素晴らしいリズムの仕掛けプロセスでした。私は、「それだ!・・これでもっと頻繁に中田を経由したコンビネーションが出てくるだろう・・」なんて確信したわけだけれど、でも結局それからも大きな変化はなかった・・。相変わらずタテへ急ぎ過ぎる仕掛けを繰り出しつづけるボルトン。そして中田は、後半38分に交代ということになってしまう・・。ちょっと残念でしたね。

 それでも、もう何度も書いたとおり、中田は、確実にボルトン選手たちの仕掛けイメージ(仕掛けのリズム)に変化をもたらすはずです。人とボールがよく動くコンビネーションベースの仕掛けプロセス。ボルトンの選手たちは、中田というリーダーに引っ張られ、徐々にその実効コンテンツ(効果)を体感していくはずだからね。その意味でも、これからのボルトンから目が離せない。ホント、ものすごく興味深いプロセスじゃありませんか。




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