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2006_U21_日本vsシリア・・立派なサッカーで順当な勝利を収めた日本オリンピック代表・・(日本vsシリア、1-0)・・(2006年12月4日、月曜日)

タイトルのとおり、日本のオリンピック代表は、攻守にわたって立派なサッカーを展開してくれました。最後まで衰えなかった、忠実でクレバー、そしてダイナミックな組織ディフェンス。そして、三人目が効果的にスペースを使うというイメージの、人とボールが素早く、広く動きつづける組織的な仕掛け。

 日本チームの闘う意志は、素晴らしく高いレベルで安定していました。物理的&心理・精神的な状態を表現する「フォーム」。それで日本が高いレベルにあったということです。反町監督は、前回のパキスタン戦レポートで書いた期待に見事に応えてくれました。プロコーチとしてのウデを感じる。

 シリアだけれど、やはり典型的な中東チームだったね。個のチカラでは互角以上と感じさせられるシーンも多かったけれど、結局は、ドリブルや無為なボールキープという持ち過ぎ(=ボールの動きの停滞)によって自滅してしまったという印象の方が強い。要は、ボールがないところで勝負を決めるという発想が感じられなかったということです。

 ボールの動きの停滞という表現が意味する現象だけれど、何もそれは、実際にボールの動きが一つのゾーンに止まっているということだけではありません。ドリブルで動いていたとしても、日本のディフェンダーを抜き去って次のスペースへフリーで入り込めない限り(スペースの有効活用!)、それは、ボールの動きの停滞以外の何ものでもないのです。日本ディフェンス陣は、安易にアタックするのではなく、粘り強く忠実にマークしつづけたし、タイミングよく協力プレスも仕掛けていったからね。

 そんなだから、ボールの周辺にいるシリア選手の足が止まり、結局足許パスを出すことにとなってしまうのも道理。日本ディフェンス陣の「眼前」で、ボールが単純な動きを繰り返すばかりといった体たらくなのですよ。それでは、まったく怖くない。シリアは、自ら、スペース活用の可能性を潰していたのです。それこそが、中東チームが抱えるもっとも大きな課題ということです。個の能力が高いという諸刃の剣・・。

 そして、ここでもまた、いかにして数的に優位なカタチを作り出すのかという戦術テーマに行き着くというわけです。

 その視点で、日本の仕掛けは数段レベルが上でした。シリアのパスが、「二人目まで」いうイメージが強いのに対し(まあカタチにはまれば、そのスピードとパワーは脅威だったけれど・・)、日本が展開する、人とボールがよく動く組織的な仕掛けでは、常に「三人目のスペース活用」という次元の高い組織プレーイメージが内包されていました。

 ショート&ショート&ロングという流れるようなリズム感。そして「それ」に乗る三人目の動き。そんな共通イメージがバックボーンにあったからこそ、スペースを活用するために人とボールの動きが有機的に連鎖しつづけたのです。素晴らしい。

 ここでは、個々の「5秒間のドラマ」を描写しようとは思わないけれど、本田拓也を中盤の底に、本田圭佑、増田、高萩、谷口、辻尾が繰り広げた、攻守にわたるダイナミックな「動き」は、ホントに見応え十分でしたよ。あのゴツいシリア人を相手に披露した立派な闘い。頼もしい限りでした。

 余談だけれど、シリアのディフェンス。彼らは、日本が繰り出す、三人目、四人目が絡んでくるような「素早く、広い、有機的な連鎖イメージ」にうまく対応できていませんでした。もちろんそれは、シリアの攻撃が、個の勝負を主体にしているだけではなく、組織パスにしても、単純な「二人目の動きまで」しか想定していないからに他なりません。守備は、自らの攻撃の内容(レベル)を映す鏡なのです。

 このゲームの勝因は、もちろん日本のディフェンスが素晴らしい機能性を魅せつづけたことです。強力なシリア攻撃陣が繰り出す個の仕掛けプレーを粘り強くマークし、彼らがイメージする動きのある展開を抑え込んでしまうことで、(日本が)協力プレスをうまく機能させたということです。だからシリアは、追い詰められたロングシュートや、放り込みというニュアンスの方が強いクロスという寸詰まりの最終勝負しか仕掛けられなかった。

 最後に、またまた平山相太。決勝ゴールを決めました。それも、最後の瞬間にスッと相手マーカーの眼前スペースに飛び出したヘディングシュート。見事でした。

 またこの試合では、前半から、最前線のフタというのではなく、しっかりとしたポストプレーも出来ていた。しっかりとしたポストプレーとは、仕掛けの流れを「加速」できるようなプレーのこと。要は、後方からのサポートアクションに勢いが乗るようなポストプレー。それには、周りのチームメイトが、平山のプレーリズムを理解してきたという背景もあるんだろうね。アイツは、このタイミングで、スペースへパスを流す! そんな確信が、後方からの飛び出しを勢いを「加速」するということです。強いヘディングと大きな身体を駆使した粘りのスクリーニング、そしてそこから繰り出される、シンプルなタイミングの効果的な「ボールの散らし」。なかなか良かったですよ。

 そんなポテンシャルのある平山だからこそ、(減量して)もっと走れ! もっと守備をしろ! もっと、もっと・・と叱咤したくなるんですよ。それにしても、ボールがないところでの「強烈な意志が込められた全力ダッシュ」がない。だから動きにメリハリが出てこない。そんな課題もテンコ盛りの面白い素材っちゅうことですかね・・。

 




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