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2007_ヨーロッパの日本人・・松井大輔と中村俊輔(ちょっと加筆)・・(2007年1月17日、水曜日)

さて、新年初となるヨーロッパの日本人。今回は松井大輔と中村俊輔。

 両人ともサイドハーフという基本ポジション(基本タスク)。それも左と右だから面白い対比になるかもしれないな・・なんて思って観はじめたのだけれど、案の定、比較することにはあまり意味がないと再認識させられた次第。何せ、対比とはいっても、両クラブのチーム戦術イメージはまったく異なるのだからね。

 その違いを簡単に表現すれば、攻守にわたって(チームメイト同士の)基本的なプレーゾーンを極力バランスさせつづけようとするル・マンに対し、基本的なポジションにこだわることなく、攻撃では協力してスペースを活用し、守備でも協力プレスを仕掛けるという組織プレーイメージが基本のセルティックなのですよ。

 要は、それぞれのプレーゾーンに対するバランスイメージ(そこを守り、そこで攻めるというイメージ)を主体に、あくまでも個人の局面勝負プレーを積み重ねていくというル・マンに対し、セルティックは、協力し合いながら、攻守にわたって「数的に優位な状況を演出しよう」というイメージだということです。

 ボールがないところでのアクション(パスレシーブのフリーランニング)をうまく活用するというイメージを共有しているからこそ、組織プレー(人とボールの動きの有機的な連鎖)と個人のドリブル勝負をうまくバランスさせられているセルティックということです。

 そんな事情もあって、中村俊輔と松井大輔の総体的パフォーマンスを比べた場合、中村俊輔のプレーコンテンツの方が、攻守わたって一回りも二回りも「大きく・深い」ものになるのは道理かもしれない。

 たしかに守備での松井は、何度か、爆発的なチェイス&チェックを魅せたし、ボール奪取勝負も仕掛けていました。でも結局は「彼のゾーン」だけのアクティビティーという印象をぬぐえない。また攻撃にしても、左サイドに貼り付いてボールが回されてくるのを待つばかり。もちろん決定的なシーンではスペースへ飛び出したり、上手いドリブル勝負は仕掛けていくけれど、周りとの「アクション連鎖」では、まさに単発といった印象なのですよ。そこには、三人目、四人目が絡む(ボールがないところでのアクションを主体にウラスペースを突いていく!)パスコンビネーションなどという共通イメージはまったく感じられません。

 松井は、たしかに秀でた能力に恵まれた選手です。でも「それ」は、まさに「井の中の蛙」状態になっている。前述した爆発的なディフェンスアクションや攻撃でのドリブル突破、はたまた仕掛けのドリブルから繰り出される魅惑的な仕掛けパスといった優れた才能プレーを魅せられるにつけ、ガチガチの戦術サッカーという「井戸のなか」に押し込められていることがホントに惜しいと思われて仕方ない。

 それに対して、際限なく自分自身を「主体的に解放し」つづけている中村俊輔。

 その「解放」の絶対的なベースは、言うまでもなく、攻守にわたる主体的な汗かきプレーであり、主体的に仕掛けをリードしていこうとする積極的で攻撃的なプレー姿勢。それは、考えながら(主体的に判断、決断し)走りつづける(勇気をもってリスクにチャレンジしつづける)こと・・とも換言できるということかな。そんな中村のプレーコンテンツについては、昨年末に上げた「このコラム」を参照してください。

 その後、あらためて俊輔のプレーを観戦したけれど、たしかに、着実に発展をつづけていると感じますよ。彼のプレーには、明確な「意志」がある。意志があるところには、おのずと「道」が出来てくる・・。意志さえあれば、おのずと「道」が見えてくる・・のです。

 そんな彼の「意志」だけれど、その背景には明確なイメージターゲットがあるとも感じます。もちろん、まず何といってもチャンピオンズリーグだよね。ヨーロッパ(世界)頂点レベルでのギリギリの勝負だからね。そしてもう一つの明確なモティベーション。それは、言わずと知れた、イビツァ・オシムさん率いる日本代表です。

 イビツァ・オシムさんに対するアピール意志の具体的内容については、以前のコラムで触れました。その、チャンピオンズリーグコラムは「こちら」ですが、そこでは、彼の「意志コンテンツ」をうまくまとめられたと自画自賛の湯浅なのです。

 私は、来週からヨーロッパへ出張です。ビジネスだけじゃなく、友人達と旧交を温めたり、ブンデスリーガ後期開幕ゲームを観戦したりする予定。さて・・

 




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