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2007_高校選手権_決勝・・なかなか面白いコンテンツが凝縮されていました・・またプリンスリーグについても・・(盛岡商業高校vs作陽高校、2-1)・・(2007年1月8日、 月曜日)

「自分たちが入れても、逆にそれが失点だったとしても、とにかくゴールが生まれればウチのチームの闘う意志が自然と高揚していくことは分かっていた・・同点ゴールが決まったときは、これでウチに(勝負の!)流れがきたと確信した・・」。優勝した盛岡商業の齋藤監督が、そう胸を張っていました。

 また齋藤監督は、さまざまな質問を受ける流れのなかで、「技術があっても、それを存分に発揮できなければ宝の持ち腐れ・・ウチ程度の能力レベルの選手だったら全国には本当にたくさんいるはず・・だからこそ、しっかりと走ることが大事だという原則で選手たちにアプローチしつづけた・・選手たちもそのことをしっかりと理解した・・そして彼らは(その理解がベースになっているからこそ)最後の最後まで走り切った・・」ということも言っていました。

 盛岡商業の選手は、その齋藤監督の言葉どおり、最後まで120パーセントのマインドで闘い抜きました。齋藤監督は、それに対する確信があったからこそ、冒頭に紹介した勝負の流れが明確に見えていたというわけです。とにかくそれは、観ている人々の自然な感動と共感を呼び起こす立派なプレー姿勢でした。だからこそ、心からの賛辞が口をついていた。You guys deserved this triumph !!

 盛岡商業は、とにかくよく走り、よく闘った。ボールを失った次の瞬間には、間髪を入れずに全力ダッシュのチェイシングに入る選手たち。そんな「ディフェンスの起点プレー」があるからこそ、次、その次と有機的に連鎖しつづける「協力プレス」も効果的に機能する。

 また攻撃でもレベルを超えた勢いを魅せつづけました。ゲーム立ち上がりから、攻撃の流れに参加してくる人数が、作陽高校よりも一人多いというイメージ。作陽高校では、まったくといっていいほど、後方の「6人守備ブロック」から攻撃サポートに飛び出しくシーンが見られなかったのに対し、盛岡商業の攻撃では、多くのケースで、4人プラス1人が参加していたのです。

 またその攻め上がりにしても、とにかく直接的に「最終勝負を仕掛け」ていくというイメージ。横への展開パスやタメ(個人プレー)といったスマートな変化はあまり見られないけれど、その吹っ切れた仕掛けには小気味よさがありました。もちろん、チーム全体がそのイメージで統一されているからこその(相乗効果の)勢いというわけです。

 また盛岡商業の選手たちは、ボールを奪い返した作陽が、後方ゾーンでボールをキープしながら展開パスを狙う(ポゼッション系のプレー・・作陽、野村監督)ということを明確にイメージしていたとも感じました。だから、前線で一人がチェイス&チェックを仕掛けたら、二人目、三人目の味方が、次、その次の作陽選手(ボールポゼッション系のパスレシーバー)に狙いを定めてボール奪取勝負のアクションを起こすのですよ。そんな忠実な協力プレッシングが、前半9分の、高い位置でのボール奪取からドリブルシュートへ至るというビッグチャンスを生み出し、選手たちに勇気を与えたというわけです。

 たしかに(個人的な能力やチーム戦術など)総合的なチカラでは作陽に一日の長があるでしょう。自分たちが先制ゴールを奪ってからは(まあ、作陽エースの村井が入って最前線にポストが出来たこともあったのだろうけれど)、攻撃での組織プレーコンテンツが何倍にも盛り上がり、それこそがオレたち本来の実力だと誇示する時間帯もありました。そこでは、守備的ハーフコンビの8番(立川)と10番(酒井)も、彼ら本来のプレーイメージである前線への充実したサポートを繰り出していきました。

 そしてゲームの流れが完全に作陽へと傾きかけていくのですよ。だからこそ、そんな状況からの盛岡商業の盛り返しが物凄くインプレッシブだったのです。素晴らしく忠実な全力ディフェンスと、最高の勢いが乗った勇気ある仕掛け。盛岡商業の闘う意志が、ほとばしりました。

 以前の日本サッカーでは、「走る」という表現は、次元の低さの象徴のようにイメージされていた時期もありました。でも今は、そのニュアンスは明らかに好転している。要は、走るというアクションが、考えることと勇気ある実行力に同義だと捉えられるようになったということなんだろうね。盛岡商業、齋藤監督が強調した「走る」という言葉には、そんな背景ファクターが力強く感じられましたよ。これもまた、イビチャ・オシムさんの功績なのかな・・。

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 ところで記者会見。そこでフリーランスの元川悦子さんが、両監督に対して同じ内容の質問をぶつけました。「(盛岡商業、齋藤監督に対しては)東北地方の・・(作陽高校、野村監督に対しては)中国地方の・・そこでのレベルアップの背景ファクターについて、どのように考えていますか?」。なかなか興味深い質問になりました。何せ、その質問に対して、両監督ともに、同じニュアンスの答えを返していたのですからね。骨子はプリンスリーグ・・。

 「我々の地方全体のレベルアップには、プリンスリーグが大きく貢献していると思う・・それによって他の学校との関係も(広がったし)深まったし、ライバル意識が高揚することで(サッカーを進歩させるための)良い刺激になっている・・日本全国のレベル差は、着実に縮まっている・・」などと、お二人とも、同じようなニュアンスのことをおっしゃっていたというわけです。

 トーナメントだったら、一発勝負に勝つことだけをイメージするだろうけれど(勝負優先の戦術サッカー!?)、リーグとなったら、サッカー内容も問われてくる。そうなれば、自ずと、サッカー内容もまたチームの「アイデンティティー(誇り)」として存在意義を高揚させていくことになる。フムフム・・。

 プリンスリーグとは、言わずと知れた「JFAプリンスリーグ U18」のこと。2003年からはじまったのですが、毎年3月から8月にかけて全国9地域で行われる、高校生(ユース)年代のサッカー大会です。詳しくは、ウィキ・ペディアをご参照下さい。

 要は、それまでトーナメント主体だった「U18」年代(高校とサッカークラブのユースチーム)に、リーグ戦という新しい形態の「勝負マッチ」を組織したということです。そのことについては、以前の「The 対談」で、わたしの母校である湘南高等学校の清水先生と話したことがあります。

 そのときの記事は「こちら」。清水先生は、「あの」中村俊輔を、国民体育大会に臨む神奈川県国体選抜チームで指導したこともあるのですが、そのときのエピソードなども挿入されていて、なかなか面白い記事になっている(自画自賛・・失礼!)。

 野洲の活躍や、「初」同士の決勝など、着実に高校サッカーでもポジティブな変化が進行しているということなんだろうね。期待しましょう。




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