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2007_アジアカップ・・今日はサウジアラビアについて・・でもまず、マレーシアでの出来事を記録しておきます・・(2007年7月23日、月曜日)

昨日のクアラルンプール。韓国vsイランのエキサイティングマッチを楽しみ抜いた後、監督会見にもアテンドしました。でも延長とPK戦の後ですからね、そのときの時刻はすでに(マレーシア時間で)2140時をまわっていました。インドネシア(ジャカルタ)で行われているもう一つの準々決勝、サウジアラビア対ウズベキスタン戦はもうはじまっています。会見場を後にしてプレスセンターに設置されているモニターへと急いだのですが、信じられないことに、そこで流れていたのは、何と「F-1中継」・・。

 すぐに、AFC(アジアフットボール連盟)の役員をつかまえ、「もう一つの準々決勝は?」と質問しました。ところが、その役員は「エッ?」という顔をする。それだけじゃなく、「一体、何を言っているのですか?」と聞き返すのですよ。まさに、信じられない反応。そしてビクッとした。この役員は、本当に何も知らないらしい・・。そして意を決し、とにかく、ゆっくりと説明することにしたのですよ。

 「いまこの時間に、ジャカルタで、アジアカップのもう一つの準々決勝が行われています。サウジアラビア対ウズベキスタン。その試合をプレスセンターのモニターで観戦したいのです。一般のテレビ番組ではライブ中継がないことはホテルで確かめてあります。だからプレスセンターでそのゲームを観ようと思っていたのです。すぐにチャンネルを合わせてくれませんか?」

 そんな私の説明に、まだ合点がいかないその役員氏。「テレビの番組表を見てみましょうか?」「いやいや、いま言ったとおり、普通のテレビ番組ではライブ中継はありません。でも、プレスセンターには、中継信号が来ているはずです。それを、プレスセンターのモニターにつなげて欲しいのですよ」「いや、そんな信号は来ていないはずですよ。いまここには、そのことが分かる者もいないし・・」

 もう一度意を決し直したた私は、もっとゆっくりとした口調で説明します。「プレスガイドに明確に書かれているように、四つの会場に設置されたプレスセンターでは、すべての試合がライブで観られるようにアレンジされているはずなのですよ。そのことをご存じありませんか?」

 「そうですよね・・」と口を濁す役員氏。「アナタが、その件に関する責任者ですよね?」「・・・・」「とにかく、ここでは観られないのですね?」「まあ・・そういうことです・・」

 それ以上話すことは時間の無駄でした。落胆は大きかったですよ。やっぱりライブで観たかったし、そこで発見したポイントを、昨日のゲームレポートにもミックスするつもりでしたからね。まあ仕方ない。

 ということで、ホテルへ帰るタクシーのなかでコラムを書くつもりで、タクシーを呼んでもらおうと他の役員に頼むことにしました。でも、そこに待っていた反応はまさにショッキング・・。「ここでタクシーをつかまえる? そりゃ無理だ。メディアホテルへ行くメディアバスがあるから、それに乗ってホテルまで行けばタクシーがつかまるでしょう」なんていうつれない返事なのですよ。外は雨が降り続いていたし、たしかに道路で流しのタクシーを捕まえるのは至難の業のように思えました。

 私が予約したホテルは、空港の近く。スタジアムから40-50キロも離れています。そしてメディアホテルは、スタジアムを中心にして、その、まさに反対側に位置しているのですよ。メディアホテルまで行ってしまったら、そこでタクシーを拾えたとしても、100キロ近くも戻らなければならない。ホントに途方にくれましたよ。でも、プレスセンターで働いていた地元の方が尽力してくれて、かなり待たせられたけれど、結局は地元タクシーを呼ぶことに成功したのです。地元タクシーは、遠いホテルだから、そこまで行きたがらないらしいのですよ。それでも、その方の説得で、何とか一台は手配できたという次第でした。(手配してくれた地元の方に)感謝してます。

 でも、そのタクシーを手配するまでに一時間あまりも費やしてしまった。仕方なく、スタジアムのプレスセンターで、まったく気乗りしない心理状態でコラムを書いてアップした次第。もう、それを読み返す勇気はありません。

 そんなこんなで、結局ホテルにたどり着いたのは真夜中ということになってしまいました。それでもタクシーの運転手は良い方だった。まあ、それだけが唯一の救いでしたかネ。そして、ホテルで数時間の仮眠を取った後、午前4時にゴソゴソと起き出し、ハノイ行きの飛行機に乗り込んだというわけです。

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 マレーシアでは、(前述したように)既にアジアカップは過去のモノになっていましたよ。それに比べてベトナムは、まだまだ熱い。今日も、準々決勝の四試合を、「スター・スポーツ」チャンネルが何度もリピートしていました。ということで、先ほど、サウジアラビア対ウズベキスタン戦を見終わったところです。

 たしかに結果は「2-1」でサウジが勝利を収めたけれど、内容では、完璧にウズベキスタンのものでした。先日のレポートでも書いたように、ウズベキスタンは個のチカラではかなり見劣りするけれど(だから高くは評価されていないけれど)、基本的にはヨーロッパテイストのスマートなサッカーを展開するのですよ。

 忠実でクリエイティブな(うまくイメージが有機的に連鎖しつづける)高質なディフェンスをベースに、攻撃では、人とボールがよく動く素晴らしい組織プレーを展開する。全体的なサッカーの質では、完全にサウジを圧倒していました。それに、バーとポストに数回ずつブチ当てるような完璧なゴールチャンスも作り出していたしね。

 そんなハイレベルなウズベキスタンに対し、相変わらずサウジアラビアは、守備的なプレーをベースに必殺のカウンターを狙うというチーム戦術イメージが基本のようです。とはいっても、強いはずのサウジ守備だけれど、この試合では、個のチカラでは見劣りするウズベキスタンの組織プレーに完全にウラを突かれるといったシーンを何度も目撃しましたよ。

 もちろん、だからといって、日本代表も同じようにサウジアラビアをキリキリ舞いさせられかといったら、そうは問屋が卸さないだろうけれどね。彼らも、日本が相手となったら、より強いイメージをもって「ボールがないところや、三人目、四人目に対するマーク」をしっかりと徹底してくるはずだからね。

 サウジアラビアの攻撃だけれど、やはり、安全な横パスを主体にした緩慢なポゼッションから、局面での個の勝負(ドリブルで相手マークを外すようなプレー)をブツ切りに積み重ねていくという低次元の仕掛けコンテンツは変わらない。もちろん個のチカラは十分だから、ツボにはまれば強烈だけれどネ。この試合でも、2-3度、ウズベキスタン守備が、彼らのドリブルでズタズタに切り裂かれるといったシーンがありました。

 彼らのコンビネーションだけれど、そのイメージは、基本的には「ワンツー」だけだね。要は、絶対にボールがくるというシーンにしか走らないということ。日本のように、クリエイティブなムダ走りを「複合的に組み合わせる」なんていう高度なコンビネーションイメージなどはまったく持ちあわせていない。とはいっても、ウズベキスタン戦での、コンビネーションを基盤にした二点目は見事だった。

 それは、三人が絡んだコンビネーションでした。まあ、基本的には、二つの「ワンツー」をダイレクトでつづけたといったものです。でもツボにはまった。そんなときは、彼らのスピードとパワーが存分に発揮されるというわけです。そのシーンは、ホントにものすごい迫力でした。要は、絶対にチャンスになるという(ボールがないところで走るための)大きなモティベーションがあったということです。

 もうお分かりのように、逆を返せば、そんな直接的な(具体的に見える)モティベーションが「ない」状況での彼らは、まったくといっていいほど、ボールなしの動きを「複合的に組み合わせる」なんてことにはチャレンジしないのですよ。彼らの仕掛けでは、相手守備ブロックの背後スペースを突いていくなんていうイメージはほとんどないに等しい。

 だからこそ、サウジの守備ブロックは、そんな複合的なコンビネーションに対応するだけの高度なイメージを有していないとも言えるのです。攻撃と守備は、常に表裏一体の関係にあるのですよ。そこに、ブラジルやアルゼンチンの守備の強さバックボーンがあるというわけです。ということで、そんなサウジ守備ブロックの「次元が低いイメージ描写能力」が、ウズベキスタンが魅せたチャンスの量と質という結果の背景にあったというわけです。まあ、あれほどの絶対的なチャンスを決められなかったウズベキスタンだから、負けたことは自業自得だったけれどネ。

 また、サウジの攻撃では、まず何といってもカウンターに注意が必要です。

 自陣内でボールを奪い返し、そのまま爆発的な超速ドリブルでウズベキスタン守備ブロックをズタズタにしたシーンは印象的だった。そのドリブルを仕掛けたのは、たしか16番の守備的ハーフ。そんな決定的シーンだからね、周りの味方も、ボールがないところで動く、動く。ということで、その16番は、ドリブル突破だけではなく、両サイドへのラストパスという可能性も持っていた次第。やはり「目の前に具体的なチャンスが出てきたときのサウジ選手たちの「爆発アクション」にはスゴイ迫力がありました。

 また、こんなカウンターシーンも目撃した。それは、後方からの一発ロングパス。それを、9番のセンターフォワード、マレクがヘッドで決定的スペースへ流す。そしてマレクのフォワードパートナーである20番のヤッサーが、マレクがヘディングする前のタイミングで、ウズベキスタン守備ブロックのウラに広がる決定的スペースへ爆発ダッシュで抜け出していたのです。これは、本当に危険な「最終勝負イメージ」です。サウジ選手は、そんなカタチ(イメージがシンクロする最終勝負イメージ)を持っているのですよ。

 とにかく、この9番のマレクのジャンプ力はスゴイ。セットプレーでも、彼の高さがターゲットになっていました。もちろん彼を「オトリ」にして、他の選手がヘディングに入り込んでくるという変化もあります。これは本当に要注意です。

 いまは、そんなところですかね。これから日本代表のトレーニングを観察しに行ってきます。考えて走りながら(クリエイティブなムダ走りを積み重ねながら)創造的にスペースを突いていく・・という日本代表のトレーニング。それについては「このコラム」を参照してください。それでは・・

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」をご参照ください。
 




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