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- 2007_アジアカップ決勝・・イラクが魅せた素晴らしい組織サッカー・・(イラク vsサウジアラビア、1-0)・・(2007年7月29日、日曜日)
- 「ビエイラ監督、おめでとうございます」「どうもありがとう」「わたしは日本のフリーランスでユアサといいます・・いま私は、自分が非常にラッキーな男だと感じています・・」「そりゃ、ボクも同じだ(笑)」
「実はわたしは、イラクとタイが対戦した大会のオープニングマッチと、そしてこの決勝で、アナタのチームをスタジアム観察することができたのです・・要は、その二試合でのアナタのチームの豹変を体感したということです・・オープニングマッチでのイラクは、まあこんなことを言うのは失礼かもしれませんが、あまり良い出来じゃなかった・・そんなイラクが、決勝では、素晴らしく組織的なスーパーサッカーを魅せてくれた・・わたしは、大会を通じてイラクが、組織プレーという点も含めて大きく発展したと思っています・・もしビエイラ監督が私の意見に賛同する場合、その発展は何だったのか、そしてどのようにやったのか、教えていただきたいのですが・・」
そんな私の質問に、イラクのビエイラ監督は、こんな風に答えてくれました。「それ(イラクが大会中に発展を遂げたこと)は準備が良かったことの証だと思う・・我々は大会がはじまる前から周到に準備を進め、大会がすすむなかでも計画された準備を十分にこなしていった・・そんな地道な努力が背景にあったと思う・・」
実は、組織プレーの発展プロセスと(心理マネージメントも含む)方法論について、より具体的に聞きたかったのだけれど、こちらは「部外者」だからね、やはり当事者のジャーナリストに遠慮するのが筋。ということで、それ以上は突っ込んで質問することはしませんでした。とにかく、絶対にその質問をぶつけてみたいと思わせるほど、決勝でイラクが展開した攻守にわたる組織プレーには、素晴らしいダイナミズム(活力・迫力・力強さ)と魅力(美しさ)が詰め込まれていたのですよ。
この試合の構図は、個の才能を前面に押し出してくるサウジアラビアに対し、イラクが組織プレーで対抗するというものです。私はそう考えていました(そのテーマをもって観戦していた)。何せ、韓国と激突した準決勝でのイラクは、攻守にわたって、素晴らしくスマートな組織プレーを展開していましたからね。
この試合でのイラクは、タイとの大会オープニングマッチとはまったくの別人になった(タイとのオープニングマッチのコラムは、こちら)。だから私は、イラクのハイレベルな組織プレーに対する興味をかき立てられていたのですよ。まあ、正直なところ、「あんな個の局面勝負をブツ切りにツギハギするような低級サッカーのサウジアラビアに勝たせてはいけない・・」とも思っていました。もちろん日本が負けたから・・なんていうことではなく、あくまでも、サッカー内容でのことです。
イラクは、とにかく守備が素晴らしかった。例によって「5番」が、中盤ディフェンスの重鎮としてリーダーシップを発揮する(結局その5番がマンオブザマッチに選ばれた・・納得!)。味方に指示を飛ばしながら、自らも忠実にチェイス&チェックを仕掛けたり、カバーリングに回ったり、はたまた、チャンスを見計らった協力プレスへ急行したり。またイラク選手は、一人ひとりの気合いの入り方が違った。要は、局面の勝負で負ける気がまったくしないのです。実際、サウジの選手にドリブルで置き去りにされる等といったシーンはほとんどありませんでした。
そして、サウジアラビアが誇る前戦の才能たち(9番のマレク、20番のヤセル、そして18番のアル・カハタニ)を、要所で、クレバーに取り囲んで仕事をさせないのです。決して、マンマークに付くという方法論ではなく、とにかくケースバイケースで、効果的な「マークとプレスの集散」を繰り返すのですよ。それこそが「強烈な意志」の現出そのものでした。この試合では、何といっても、(社会的な状況や文化的なバックボーンによる!?)闘うモティベーションの差が大きかったと思いますよ。そのテーマについては、もうこれ以上は突っ込まないけれどネ・・。
それでもサウジの才能たちは、やはりチカラがある。この試合でも、何度かは、個人勝負でイラク守備ブロックの重い扉を強引に開けてしまいそうになった場面もありました。例えば前半43分。20番のヤセルが、強引な突破ドリブルでシュートまでいったシーン。それでも最後の瞬間には、全力ダッシュで追い付いてきた選手や前方や横から飛び込んできた選手が、三方から全力タックルを仕掛けてボールを奪い返してしまうのです。そのシーンは感動モノでした。
また後半15分には、サウジ9番のマレクが、うまいボールコントロールでイラク選手のマークを外し、爆発的な25メートルの中距離シュートを放ったシーンも危険だった。最後は、イラクGKが、ギリギリのところで指先ではじき出したから事なきを得たけれど、まさにスタジアム中が(私も含めて)フリーズした瞬間でした。
あっと・・、この試合では、スタジアム全体がイラクの応援に回っていました。最初は五分五分だったけれど、時間の経過とともに、スタジアム全体がイラク支持になっていったと感じたのですよ。そんな興味深いプロセスを体感しながら、たぶんジャカルタの観客もイラクの気持ちの入った組織プレーに感動したに違いない・・個人プレーも、たしかに美しいし人々に感動を与えるけれど、組織プレーは、うまく機能すれば、それ以上の感動を呼び起こせるものなのだ・・なんてことを思っていた次第。
とにかく、後半15分過ぎあたりからのイラクの攻撃には、チーム内での「守備意識と実効レベル」に関する相互信頼をベースにしているからこその吹っ切れた勢いが乗っていると感じたものです。人とボールが素早く、大きく動きつづけるイラクの攻め。いや、ホントに中東のチームとは思えなかった。また、決勝ゴールを挙げた後の残り15分でのプレー内容も、まさに立派なものだった。サウジは、セットプレー以外では、まったくノーチャンスでしたよ。本当に素晴らしい気力と集中力でした。ビエイラ監督は、本当に良い仕事をしている。だからこそ、冒頭の質問を投げかけてみたくなったというわけです。
日本のゲームが終わった後で、こんな素晴らしい勝負マッチを観られるとは思ってもみなかった。本当に締まった良いゲームになりました。とにかく、本当にイラクが勝って良かった。また、高原直泰も「得点王」のタイトルを取ることができたしね。
さて、明日はバンコクへ移動し、そこで一日だけ骨休めすることにします。そして8月1日に帰国し、その足で埼玉スタジアムで行われる「レッズ対サンフレッチェ」を観戦する予定。堪えられない「サッカー三昧」じゃありませんか。
明日か明後日には、今回の大会を簡単に振り返ってみることにしますので・・。
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しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」をご参照ください。
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