トピックス
- 2007_アジアカップ・・オマーンが魅せた高質サッカーと、気候順応に苦しむオーストラリア・・(オーストラリア対オマーン、1-1)・・(2007年7月8日、日曜日)
- 「オマーンは、後半になって、カウンターから100パーセントチャンスを三回も作り出しました・・でも、それを決められなかった・・カルデロン監督は、そのシーンを見ながら、これは何か悪いことが起きるんじゃないかって思いませんでしたか?」
そんな私の質問に対し、オマーンのガブリエル・カルデロン監督は、「そうだね・・オーストラリアは強いチームだし、モダンサッカーではチャンスをしっかりと決めなければ必ずしっぺ返しを喰らうということだな・・」と答えていました。
1-0とオーストラリアをリードするオマーン。内容的にも、そのまま逃げ切っても全くおかしくないという立派なゲームを展開していたけれど、後半ロスタイムに入った直後に、ロングボールからの一発勝負でブレシアーノにシュートを打たれ、そこでこぼれたボールを(例によって!?)忠実に詰めていたケーヒルに決められて引き分けに持ち込まれてしまったのですよ。
その同点ゴールシーンを見たときは、「ヒエ〜ッ・・またまた神様がイタズラをしでかした・・」なんて思ったけれど、すぐに、「まあオマーンは、あれだけの絶対的チャンスを決めなかったのだから罰が当たっても仕方ない・・何せオーストラリアは、もう失うモノは何もないという吹っ切れた勢いで全員がオマーンのゴール前へ突っ込んできていたからな・・強者たちの勢いだけでも点が入っちゃうってな雰囲気・・まあ、サッカーでは典型的ともいえるドラマパターンにはまった勝負プロセスだったということだよな・・」などと思い直したものです。
とにかくこの試合でのオマーンは、攻守にわたって、本当に素晴らしいサッカーを披露しました。特にディフェンスが素晴らしかった。最後の時間帯。もちろんオーストラリアは力ずくで攻め込んでいったけれど、しっかりと組織されたオマーン守備ブロックを崩しきれないのです(忠実なマーキングと予測ベースの効果的なカバーリングが有機的に連鎖しつづける!)。そして、本当にスマートなカウンタープロセスから、次々と(冒頭の)絶対的チャンスを作り出してしまうオマーンなのですよ。
昨日のイラクの件があったから(昨日のコラムはこちら)、オマーンが展開するスマートな組織サッカーに本当にビックリしていました。まあたしかに、日本ほどスムーズな人とボールの動きじゃないけれど、そこには、確固たる「ボールを離す(球離れの)リズム」があると感じます。だからこそ、ボールがないところでの動きも、(イラクのように)単純で単発じゃなく、二人目、三人目といった創造的で複合したサポートも出てくるというわけです。技術もしっかりしているし、フィジカルも十分だから、サッカー内容で、あの強いオーストラリアを凌駕するのも道理ってな具合でした。本当に、ちょっとビックリのゲーム展開ではありました。
とはいっても、たしかに立ち上がりは、オーストラリアの強さが際立つ「傾向」にはありました。例によってダイナミックで忠実なディフェンス。そしてボールを奪い返した後は、クリーナ主将を基軸に、ビドゥーカのポストプレーやキューウェルのスピーディーなドリブル、はたまた、右サイドを駆け上がるエマートンの爆発的オーバーラップなど、例によっての力強い攻撃を仕掛けていくのです。そんな「サッカールー」に対し、立ち上がりのオマーン選手は、ちょっとひ弱に感じられたものです。ところが、前半10分あたりから、急激にオマーンのサッカーがダイナミックに高揚していくのですよ。もちろん効果的な中盤ディフェンスを絶対的なベースにしてネ・・。
守備では、忠実なチェイス&チェック(守備の起点の演出ブレー)を基盤に、次の味方のアクション(ボール奪取勝負プレーなど)がうまく連動しつづけます。なかなかクレバーな組織ディフェンスじゃありませんか。そしてボールを奪い返したら、素早い切り替えから、前述したような組織プレーと個人勝負が高い次元でバランスしたハイレベルな攻撃をしかけていくのです。
オーストラリアもまた、気候順応(アクリマティゼーション)で苦しんでいたということなんでしょうね。前半15分あたりから、目立って足が止まり気味になっていったからね。そのことについてオーストラリアのアーノルド監督は、「気候的に厳しかった・・本当の意味で慣れるまでにはもう少し時間が必要なのかもしれない・・とにかくいまのチームマネージメントの方向を継続するしかない・・」と厳しい表情で語っていました。
最後に、昨日同様、メンバーと全体的なチーム戦術を押さえておきましょう。まずオーストラリアから。
フォーバックの前に、例によって「スーパー汗かき」のグレッラが入ります。日本代表で言うなら、鈴木啓太。忠実でダイナミックなチェイス&チェックなど、彼の汗かきディフェンスがあるからこそ、周りでの「次のボール奪取勝負」が冴えるというわけです。そして彼のパートナーであるキャプテンのクリーナが後方からゲームメイクする。
またハーフの構成は、右にシュテルジョヴスキー、左にブレシアーノが入り、その周りを「二列目の自由人」キューウェルが自在に動き回るというイメージ。そして最前線には、例によって、抜群に力強いポストプレーを展開するヴィドゥーカがワントップとして君臨するといった具合です。また右サイドバックのエマートンだけれど、以前ほどエネルギッシュではないにしても、まだまだ鋭いオーバーラップを魅せていましたよ。
そして、スーパーサブという役割を与えられているケーヒルとアロイージ。ドイツワールドカップでは日本を苦しめた切札です。ただこの試合では、切札としての効果はそんなに大きくはなかったという印象でした。後半になって登場した二人だったけれど、オマーンの組織ディフェンスと1対1の強さに、彼らの良さをうまく発揮し切れていなかったと思うのです。まあ、気候的な厳しさで、周りの味方の運動量が落ちていたということもあるよね。彼らだけで(個人勝負プレーをベースに)仕掛けていくというわけにはいかないからね。
さてオマーン。こちらもフォーバック。その前に、攻守にわたって素晴らしくクリエイティブで忠実なプレーを展開するボランチの「21番」が入ります。このチームでは、彼が創造性リーダーだね。そして次に注目しなければならないのは、彼の中盤守備パートナーであり、同時に、攻撃的ハーフである8番のチャンスメイクバートナーでもある「12番」。ポニーテールのこの選手は、抜群の運動量、実効あるディフェンス能力、優れたテクニックとパスセンス、勇気ある突破チャレンジなどなど、ホントに優秀なオールラウンドプレイヤーです。オマーンにミッドフィールドは、そんな彼らに、左サイドハーフの15番と、右サイドハーフの11番がうまく絡みつづけるといった構図。最前線ですが、この試合では20番のワントップでした。抜群にスピードのある選手。ドリブル突破力もあるしシュート力もある。なかなか危険な存在だね。
さて明日はハノイへの移動日。飛行機が遅れないことを祈るばかりです。現地への到着予定は、午後1340時。試合開始が1720時だから、ホテルを経由したらギリギリかもしれない。日本対カタール戦に遅れるわけにはいかないから、もしギリギリだったらスーツケースを持ってスタジアムへ行かざるを得なくなるかもしれないね。そのことを考えると、ちょっと憂鬱になってくる。では今日はこの辺で・・。
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ところで、しつこくて申し訳ありませんが、ここでも、7月11日に出版される拙著の告知をさせてください。本当に久しぶりの書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。それでは、次はハノイから・・。
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