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2007_アジアカップ・・オシム日本代表は、大会を通じて大きなブレイクスルーを果たすに違いない・・(日本対カタール、1-1)・・(2007年7月9日、月曜日)

そりゃ、アッタマにくるよ。サッカーの内容で完璧に凌駕し、何本も決定的チャンスを作り出したのに、結局はセットプレー「だけ」の相手に、まさにツボにはまったフリーキックを決められて勝ち点「2」を失ってしまったんだからね。

 たしかにカタールは、個のチカラでは日本を上回る部分もある。でも、例によって、その個のチカラを「組織プレー」という接着剤でリンクさせられない。要は、個人勝負をブツ切りに重ねていく低次元サッカーということ。その視点からすれば、開幕戦に登場したイラクも同じような感じだったよね。そんなカタールやイラクに対して、昨日の試合でオーストラリアを土壇場まで追い詰めたオマーンは、中東のチームとしては、ホントに「らしくない」素晴らしさを披露していたよね(その試合コラムはこちら)。オマーンのカルデロン監督は、基本的にはアルゼンチン人(いまはスペイン国籍らしい)。やはりアルゼンチンは、世界のイメージリーダーだね。

 ところで、同点ゴールを奪われたフリーキックを取られたシーンでの阿部。彼は、セバスティアンを行かせればよかったんだよ。どうせヤツはボールに追い付かなかったんだから(完璧に川口能活がコントロールできるタイミングだった!)。

 あのシーンでのセバスティアンは、とにかくフリーキックを取ることだけをイメージしていたに違いない。だから、阿部に身体を預けるように併走していった(阿部は、ルールに則ってショルダーで押し返しただけという感覚だったに違いない!)。でもアレは、完璧にセバスティアンのワナだった。阿部を追い抜いて、身体が半分だけ先に出たように「見えた」からね。「よしチャンスだ・・この6番がオレを突き飛ばしたように見せ掛けられる・・」ってな具合。そして派手な転倒。そんなワナに乗せられてしまった阿部にとっては、よい学習機会だったということです。

 これ以上書くとタラレバが高じてしまう。とにかく冷静に状況を整理しましょう。

 会見でのオシムさんには余裕がありましたよ。もちろんそれは、チームが「勝負マッチ」を通して良くなっていることを実感したからに他なりません。よし・・これでチームは、この気候条件でも(自分たちがイメージする)良いサッカーを展開できることに対して自信を持ったに違いない・・ってな具合ですかね。私も同じ印象を持ちましたよ。だからこそ悔しさが残る。あっ・・イカン、イカン・・もうタラレバはなしだったっけ。

 前半のサッカーは、本当に重苦しいものでした。相手は人数をかけて攻め上がってこないし(守備ブロックのバランスを崩さないことに集中していた!?)、日本にしても、ボールは動くけれど、人が動かないから、うまくスペースを突いていけない。

 両チームを通じた最初のチャンスらしいチャンスは、前半22分に日本が仕掛けた左サイドからの崩しでした。オーバーラップした今野が、中央ゾーンへ入り込んだ俊輔へピタリの横パスを決めたのです。俊輔のシュートは相手に当たってしまったけれど、そんなハッとさせられるシーンには貴重な意義が込められているものです。成功体感というポジティブな刺激・・。そしてそこから、日本チームのプレーに、徐々にダイナミズム(活力・迫力・力強さ)が感じられるようになっていきましたからね。そう、ボールがないところでのダイナミズム・・。

 それを象徴していたシーンが、前半35分の山岸の斜めの抜け出しフリーランニングや、その直後の前半37分に、決定的スペースへ抜け出した遠藤ヤットへ憲剛からロビングのタテパスが出された効果的なコンビネーションでした。

 そして後半は、そんな良いプレーの流れが継続的に高揚していくのですよ。それが先制ゴールにつながったことは言うまでもありません。憲剛からの素晴らしいスルーパスが今野に決まり。そこからの右足アウトサイドでのダイレクトパスが、ファーポストスペースに走り込んだ高原直泰に正確に合わせられた。目の覚めるような組織コンビネーションでした。そしてそこから、日本チームのプレーが、本当の意味で有機的に連鎖しはじめるのです。要は、ボール絡みのプレーと、ボールがないところでのプレーが有機的にリンクしはじめたということです。

 そうなったらしめたもの。人とボールがうまく動きはじめるのも道理です。その「流れ」が秘める要素のなかでもっとも重要なものは、何といっても、周りの味方が「パスがくる」と確信できることです。だからこそ、ボールがないところでの三人目、四人目の動きに勢いが乗る。だからこそ、ボールを「流して」すぐに決定的スペースへ回り込むといった創造的な動きを絡めたコンビネーションの実効レベルも倍加する。優れたサッカーは有機的なプレー(イメージ)連鎖の集合体・・なのです。

 そこでは、前戦の5人(高原、羽生、ナカナカ・コンビ、そして遠藤ヤット)が、縦横無尽にポジションチェンジを繰り返していた。羽生が入ったことも、そのポジション流動性のフローを加速させたね。(その羽生と交代した)山岸は本当に良くなっているけれど、どうも自信が追い付いていないのか、どんどんポジションをチェンジすることにはまだまだ消極的だったからね。ということで、効果的な刺激プレーヤーとして素晴らしく機能した羽生だったからこそ、彼には、ロスタイムのビッグチャンスをしっかりと決めて欲しかった。

 アッと・・どうしても「タラレバ・マインド」を振り払えない。とにかくオシム日本代表は、優れたサッカーでカタールを完璧に凌駕していたからね・・。

 とにかく、後半に日本代表が展開したダイナミックサッカーは、確実に「次」につながると思います。オシムさんも、そのことを実感していたのだと思いますよ。彼のコメントでもっとも重要だったのは、「良いサッカーになった・・ただし、(そこでの)美しさを結果につなげられるところまでは至っていない・・」でしたかね。それもまた、オシムさんの確信レベルの高揚を示唆していると思うのです。

 次のUAE戦、そしてグループリーグ最終戦で当たる地元ベトナムとの勝負マッチ。ギリギリの勝負になるからこそ、それに向けて闘うマインドを高揚させていかなければなりません。変な余裕を持つより、そんな厳しいプロセスの方が、より効果的にチームを発展ベクトルに乗せることができるはずです。高い緊張感と強い闘う意志を基盤にしたリスクへチャレンジしていくマインドこそが発展の唯一のリソース・・なのです。

 最後に、憲剛、俊輔、ヤットの「クリエイティブ・トリオ」について。以前に何度も書いたように、私は、このトリオがオシム日本代表の中核になることを願って止みませんでした。それもフォーバックでね。この三人には、それを成し得るだけのしっかりとした組織プレーマインドと高い守備意識を備えていると確信しているのですよ。そしてこの試合では、まさにそうなった。そして、素晴らしい内容のサッカーが展開できた。

 とにかく私は、このチームもまた(カナダでのワールドユースに参加しているU20代表のように)、アジアカップという本物の勝負の場で大きなブレイクスルーを果たすに違いないと確信しはじめているのです。あ〜、ホントに来てよかった。それでは、今日はこの辺で・・。

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 ところで、しつこくて申し訳ありませんが、ここでも、7月11日に出版される拙著の告知をさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」も参照して欲しいのですが、わたしをモティベートしてくれたアスキー新書の編集者のお話では、本日(7月10日の火曜日)には既に書店に並ぶはずとのことでした。
 




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