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2007_ACL・・リターンマッチでは、チームに内在する刺激ツールの「性能」が問われる!・・(レッズvs全北、2-1)・・(2007年9月19日、水曜日)

「たぶん91分の失点のことを言っているのだろうが、そのアウェーゴールがどんな意味を持つかについては後になって分かってくるから、ここでコメントする性格のものではない・・とにかく状況は我々にとって有利なことは確か・・そこでもっとも大事になってくることは、最後の最後まで集中を切らさずにプレーをつづけることだ・・」

 試合後の記者会見。アウェーのリターンマッチは厳しい闘いになると思うが・・という質問に対し、ホルガー・オジェック監督が、そう答えていました。さて・・

 皆さんも観られたように、この試合では、レッズが実力を見せつけました。優れた守備をベースにしたゲームコントロールにしても、仕掛けプロセスでの、組織プレーと個人勝負プレーが高みでバランスした攻撃内容にしても、全北とは、まさに「有意差」があると感じたモノです。

 とはいっても、そこは本物の心理ゲームであるサッカー。リターンマッチは、確実に厳しいモノになること請け合いです。

 サッカーは本物の心理ゲーム。それは、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実な要素が満載されていることで、他のスポーツと比べても「より広範に」選手の「意志の強さ」が問われてくるという意味です。要は、心理的に少しでもビビッたり、受け身で消極的になった途端に、サッカーの内容が地に落ちてしまうのがサッカーだということです。オジェック監督が言った「集中」とは、まさにそのニュアンスでしょう。

 私も、レッズ守備ブロックが、強い「闘う意志」をもって「主体的」に集中すれば、全北の攻撃を、かなり効果的に抑えられると確信します。でも、全北が最後の15分間に魅せたように、彼らの闘う意志のポテンシャルが相当なレベルにあることも確かな事実。もちろん「日本」が相手という意味も含めてね。

 全北の「闘う意志」は、もちろん局面での「競り合いの内容」に如実に現れてきます。素晴らしい勢いの忠実なチェックやマーキング、競り合いでの汚さをも含めた厳しさ、そして諦めない粘り・・などなど。彼らは強敵なのですよ。

 まして次は全北のホームゲームですからね。「闘う意志」は何倍にも増幅するでしょう。全北のチェ・ガンヒ監督は、これまでのACLでのギリギリの勝負が証明しているように、追い込まれたときの全北は、(実力以上のチカラを発揮することで!?)無類の勝負強さを発揮するだろうという自信のコメントを残しました。

 何となく、リターンマッチでのネガティブな状況が目に見えてきます。局面での競り合いで五分以上の闘いを展開され、押し込まれるなかで徐々にレッズの足が止まり気味になっていく・・そしてレッズが心理的な悪魔のサイクルにはまり込んでいく・・。

 とにかく、次のアウェー戦が厳しい闘いになることは必至です。ただ逆に、レッズが(事前のイメージトレーニングによる)最高の緊張感をもってゲームに臨めるというポジティブな側面もあります。要は、チーム全体が、相手にペースを握られ押し込まれるという展開をしっかりとイメージできていれば、たとえ心理的な悪魔のサイクルに捉まったとしても、自らの「意志」で、そのサイクルのクサリを断ち切ることが出来るに違いないということです。

 この試合でレッズ選手たちが何度も魅せた、ネガティブな状況を強烈にはね返してしまうチカラ。言葉で表現するのは難しい「サッカー的な現象」なのですが、要は、すべての絶対的ベースである高い守備意識と、ボールを奪い返してからの(ボールのないところで)押し上げていく意志のチカラとでも表現できますかネ。それがあったからこそ、全北に押し込まれていても、組織プレーをベースに、相手の意志を減退させてしまうほどの勢いで押し返す(組織的に仕掛けていく)ことができたのです。

 ここで言いたかったテーマは、サッカーでは、常に「脅威と機会は表裏一体」であるということ。もちろん「そのこと」はサッカーに限らないけれど、それでも、前述した「心理ゲーム」というテーマ同様、サッカーの場合は、比較的、脅威と機会の関係性(相互影響度)が強いのですよ。だから、「表」から「裏」への揺動も、急激かつ大幅であることが多いというわけです。なかなかサッカーの奥は深い・・というか、その奥深さを言葉で表現するのは難しい・・。

 ところで、(リターンマッチでレッズが立ち向かわなければならないかもしれない)悪魔のサイクルというネガティブ現象だけれど、それを断ち切るための「意志」というテーマについては、この試合での二点目ゴールシーンを良い例として挙げることができるかもしれない。

 そこでゴールを決めた田中達也に、ワンツーでラストパスを出したのは、流れのなかで最前線まで飛び出していったトゥーリオだったからね。彼が魅せた、状況を着実に判断した素晴らしいタイミングの攻撃参加は、チームの「全体的な意志の流れ」を活性化させられるくらい強烈な刺激ファクターになり得るということです。

 このトゥーリオの、「刺激」としての攻め上がりについては、先日のスイス戦について事後的に発表した「追加コラム」も参照してください。

 最後に、この二点目ゴールが「田中コンビ」によるゴールだった・・という蛇足。

 わたしは、久しく、トゥーリオが「田中」という名字だったことを忘れていたのです。だから、クラーゲンフルトでメンバー表を受け取ったとき、DFリストに載せられていた「Tanaka」という名前に、一瞬「どうして達也が守備なんだ!?」なんて思ってしまったという体たらくだったのですよ。

 もちろんすぐに、それがトゥーリオだと気付きましたよ(そのことを隣のジャーナリスト仲間に言わなくて良かった・・)。とにかく私にとって彼のプレーマインド(サッカー文化的なバックボーン)は、まったく「日本」じゃないということです。だから、彼に対する期待内容も、より広範なものになるというわけです。まあ、そんなわけで「タナカ」という名前には違和感を覚えてしまったのです。もちろん彼の普段の生活文化的な感覚は、ピュアに日本的なものなんだろうけれどね。

 グラウンドでは、狩猟民族の闘うマインドを前面に押し出してプレーし、日常では、(世界的にも高く評価されている)日本的な社会性マインドを精神基盤にして生活する!? もしかしたら、トゥーリオこそが、サッカーに必要な闘うマインドと、日本的な社会性マインドをうまく使い分けるという意味で、理想的なサッカー人だったりして・・。

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