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2007_ヨーロッパの日本人・・今回は、中村俊輔と、番外の中村憲剛、そして高原直泰・・(2007年3月5日、月曜日)

スコットランドリーグ今節の(ホームでの)ダンファームリン戦でも、グラスゴー・セルティックの中村俊輔は、たしかにケガをした手をかばうように全力の競り合いは微妙に避けるようにしていたけれど、全体的には好調プレーを維持していました。豊富な運動量を絶対的なベースに、そのなかでハイレベルにバランスする(攻守にわたる)組織プレーと個人プレー(ボール絡みの魔法)ってな具合。

 いいね、ホントに。スコットランドリーグの2月MVPに選ばれたのも当然の成りゆきだと思いますよ。またセルティックのストラカン監督も、一試合でのランニング距離に関する統計数字を持ち出し、中村俊輔をベタ褒めしていたそうな。彼は、テクニックだけじゃなく、豊富な運動量を基盤にチームプレーにも徹している・・ってな具合だったらしい。

 そんな中村俊輔について書いたコラムだけれど、ちょいと、ここでレビューしてみませんか? 彼については、かなり多くのコラムを書いたけれど、その中でのお薦めは、俊輔のプレーコンテンツを広く、そして深く表現することにトライした昨年末の「このコラム」と、ヨーロッパでプレーする日本人選手に対する遠隔操作アプローチをつづけるイビツァ・オシムさんに対するアピールイメージの具体的内容をまとめた、チャンピオンズリーグの「このコラム」ですかね。

 さてと、今日は、ちょっと番外ですが、ヨーロッパの日本人コラムに「ドメスティック日本人」にも登場してもらうことにしました。一昨日、2007年3月3日のJリーグ開幕戦(ホームでのアントラーズ戦)で素晴らしく多彩なプレーで存在感をアピールしたフロンターレの中村憲剛。だから、今回は「中村ブラザーズ」コラム!? オヤジの駄洒落・・スミマセン・・。

 どうして中村憲剛のことも書く気になったかって? それは、今シーズンの開幕ゲームに臨む彼の「意志のコンテンツ」に、微妙な変化の兆しを感じたからです。その意志は、もちろんグラウンド上の現象にそのまま投影される。要は、攻守にわたる憲剛のプレーが、明らかに、高揚するベクトル上に乗っていると感じたわけです。

 これまで私は、中村憲剛について、攻撃におけるボール展開の起点とか、仕掛けコンビネーションの軸(基本的にはパサー)などのタスクを担うセンターハーフとして期待されていたことで、フロンターレのチーム戦術に則ったプレーイメージが先行し過ぎていた(!?)と思っていました。だから、全体的な活動量や行動半径、また仕掛けイメージなどが抑えられ気味だったと思っていたのです。

 彼ほどの能力があるならば、もっともっと出来るはず・・リスクへチャレンジしていかなければ、天から授かった才能が伸び悩んでしまう・・両サイドと谷口、そしてマギヌンと話し合うことで、もっと縦横無尽のポジションチェンジを仕掛けていってもいいのではないか・・もっとリスクへもチャレンジしていっていいのではないか・・等々、昨シーズンは、そんなニュアンスのコラムを何度もアップしたものです。

 そんな印象が強かった中村憲剛だったけれど、オシムさんに日本代表に選出されたこともあって(!?)、一昨日の試合では、そのプレーコンテンツが進化してきていると感じたのです。またそこには、関塚監督が、彼に対するチーム戦術的な「自由度」をアップさせたという背景もあるに違いありません。

 まず守備。「寄せ」の速さと迫力にしても、外された後の、攻守の切り替えと「戻り」の素早さと迫力にしても、チェイス&チェックの忠実さと迫力にしても、カバーリングやインターセプトアクションの読みや実効レベルにしても、協力プレスアクションへの注入エネルギー量にしても、はたまた、ボールがないところでの忠実マーク(ボールがないところで走り抜ける相手を、最後の最後までマークしつづける守備プレー!)の優れた実効レベルにしても。とにかく、昨シーズンとは一味違う。強い意志をベースに、それらの守備ブレーの一つひとつが、広く、深く、速く、そして力強くなっていると感じる。

 何度、瞬間的な攻守の切り替えから、何10メートルも全力で戻って守備に参加したシーンを目撃したことか。もちろん昨シーズンもやっていた。ただ、そのコンテンツが、より広く、よりエネルギッシュになったと思うのです。

 攻撃でも、昨シーズンは、足許パスを止まって待つシーンが多かったけれど(もちろんパサーとしてのイメージがメイン・・チームメイトも、そんな中村憲剛に積極的に探してパスを付けていた!)、昨日の試合では、センターゾーンで二列目から飛び出していくだけではなく、グラウンド全面でフリーランニングを仕掛けていっていたという印象が強く残りました。例えば、左サイドの村上がボールを持った次の瞬間に、タッチライン際から彼を回り込んでタテのスペースへ走り抜け、そこでパスを受け決定的クロスを入れたり・・。

 そしてこのコラムは、日本代表のミッドフィールドというテーマに入っていく。

 要は、選手タイプの組み合わせというテーマのことです。パサー、汗かき、ドリブラー、ボールのデバイダー(中継&分配プレイヤー)、はたまた、ゲームメイカー、チャンスメイカー、シャドーストライカー、衛星プレイヤー等々、とにかくタイプの呼称は数限りなく出てくる。

 とはいっても、やはり、才能に恵まれた選手たちが、高い守備意識をベースに、積極的に汗かきディフェンスをこなしたり、攻撃でも、ボールがないところでの「クリエイティブなムダ走り」を繰り返すといった組織プレーにも全力で取り組めるなど、豊富な運動量をベースに、攻守にわたる様々な役割をマルチにこなせるならば、逸れに越したことはない。もちろん、互いに「使い・使われる」という組織プレーのメカニズムに対する深い理解と、それを底流にした実行力を基盤にしてネ。それこそが、本当の意味での、実効あるポリヴァレント性!?

 だからこそ、中村ブラザーズや遠藤保仁といったクリエイティブ系プレイヤーの「ホンモノの共演」に対する期待も高まるのですよ。とはいっても、やはり、ホンモノの汗かきタイプの選手(そのプレイヤーこそ、強い意志と創造性の象徴!!)は必要だろうけれどね。さて・・。

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 最後に、どんどんとプレーの実効レベルを高揚させつづけている高原直泰についても一言。

 たしかに、これまで何度も書いているように、世界トップクラスのストライカーから比べれば、限界は明白だけれど、それでも、持てるチカラを常に100パーセント「以上」発揮しつづけるというプレー姿勢の高原は、着実に発展しつづけている。

 今節のハノーファー戦でも、肝心なシュート場面で「そこにいる」という、ストライカーとしての感覚的な鋭さだけではなく(見事な先制ゴール!=三試合連続ゴール!)、確実なボールコントロールからの「つなぎプレー」や、ココゾ!の守備参加(後半早々の、全力で追いかけてタックルを見舞いボールを奪い返したシーンは圧巻!)、また、逆サイドのシュトライトへ飛ばした正確なサイドチェンジパスなど、確固たる存在感を魅せつづけていました。

 相手は、ブンデスリーガの強者ディフェンダーだからね、そこで、あれだけのしっかりしたキープやパスが出来たり、シュートが打てているという事実には、たしかに大きな意味と意義がある。「とにかく調子がいい・・」。そんな高原のコメントが示すように、彼の確信レベルもうなぎ上りということなんでしょう。頼もしい限りです。

 




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