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2007_なでしこジャパン・プレーオフ・・終わってみれば、良い印象ばかりが残る快勝だったけれど・・日本vsメキシコ(2-0)・・(2007年3月10日、土曜日)

いま夜中の2330時。なでしこジャパンのプレーオフを観戦した後、所用を済ませてフクアリ(ナイターのジェフ対エスパルス戦)へ。そして記者会見の後すぐに帰路につき、やっと先ほど自宅に到着したという次第です。フ〜ッ。

 コラムのアップは明日にしようかなとも思ったけれど、やはり鉄は熱いうちに打て・・だからね。とにかく、ポイントだけを短くまとめておくことにします。何せこの後、ジェフ対エスパルス戦もレポートしたいですからね。

 チーム戦術的な視点では、やはり日本に一日の長がある。もちろん組織プレーという視点でね。パワフルな個人プレーを主体に仕掛けてくる(もちろん一発タテパスからの単独勝負も含めて!)メキシコに対し、人とボールの動きが一枚も二枚も上手の日本なのですよ。そして、最後はサイドを崩して効果的なクロス攻撃を仕掛けていく。日本が挙げた見事な2ゴールは、まったく同じカタチから生まれました。左サイドを切り裂いて上げたクロスからのヘディング一閃・・。

 そして終わってみれば、なでしこジャパンの良い印象ばかりが残る快勝ということになった。とはいっても、前半では20分くらいまで、また後半も立ち上がりの10分あたりまで、メキシコに「悪いカタチで」ペースを握られ攻め込まれるという展開がつづいたことも確かな事実でした。

 要は、持ち味の組織プレーを本格的に機能させられるまでに少し時間がかかったということです。それについて大橋監督は、リズムの立て直しとポゼッションに課題を見ていると記者会見で述べていました。

 相手にペースを握られる状況が長く続きすぎた・・別の言い方をすれば、自分たちのサッカーを取り戻すまでに時間がかかり過ぎたという反省点があるということです。そこにあったのは、メキシコにゲームペースを握られ、そのネガティブな状況を自分たち主体でうまく打開できなかったという事実だったのです。

 メキシコがベースを握ったのは、もちろん守備が素晴らしかったからに他なりません。素早いチェイス&チェックに、周りのディフェンスアクションが有機的に連動しつづけるメキシコチーム。

 それに対して日本は、チェイス&チェック、協力プレス、インターセプトやボール奪取勝負アクション、はたまた逆サイドでの忠実なマーキングといった全ての守備アクションに少し甘さが見て取れただけではなく、それらがうまく(有機的に)連鎖していませんでした。一人がチェイスしても、周りの動きが連動しないから、うまくボール奪取勝負に持ち込めないのですよ。

 そんなだから、次の攻撃でも(特にボールがないところでの)動きが活性化しないことで上手くボールを動かせない。これでは、簡単にボールを奪い返されて再び押し込まれるといったネガティブな流れがつづくのも道理です。

 そんなネガティブなフローを逆流させたのは、前半も、後半も、大橋監督がリードするベンチワークでした。

 前半では、(前半20分あたりの)宮本のミスから決定的ピンチに陥るという刺激をキッカケに、ベンチから、(相手のポジショニングに合わせて)右サイドに引きつけられるようにプレーしていた酒井に対して、よりセンター寄りでプレーするよう指示が飛ばされたとのこと。そのことで、センターゾーンで孤立する場面が多かった宮本との守備的ハーフコンビが復活し、そこからチーム全体の攻守にわたる流れが活性化していったのです。

 また後半では、相手にペースを握られていた10分に、宮本と交代した柳田が左サイドに入ります。そして、中央の酒井と右サイドの宮間が「トリプル・ボランチ」的なトリオを組むのです。そして、チーム全体の攻守わたるプレーが活性化していく。それは、劇的とまで表現できそうなゲームフローの逆流でした。

 まあ、交代出場した柳田の、攻守わたる汗かきのダイナミックアクションが功を奏したということでしょう。全力でチェイス&チェックを仕掛けるだけではなく、味方のカバーリングに回ったり、何十メートルも忠実にマークしたり。そんな「刺激プレーヤー」に触発されるように、周りの選手たちも(攻守にわたって)より活発に走りはじめるのですよ。そして、それぞれのアクションが有機的にリンクしていくようになる。

 組織プレーでは、一人でも流れに乗らなければ、すぐにでも全体的なアクションフローが停滞し、選手たちの足が止まってしまいますからね。それを再び活性化し「有機的に連鎖」させる作業ほど難しいものはないのです。私は、柳田という「刺激プレーヤー」を送り出したベンチワークに拍手をおくっていましたよ。

 なでしこジャパンは、攻守にわたる動きが停滞した前半と後半の立ち上がりを、しっかりとビデオで確認しておくべきです。また、流れが活性化するまでのプロセスについても、何度もビデオを見返すことで「体感」する。それがあってはじめて、よりスムーズに、ネガティブなプレーサイクルから「主体的に」抜け出せるようになるのです。

 第二戦は、高地のメキシコでの対戦ですからね。薄い空気と暑い気候に慣れていないことも含め、日本が悪いペース(心理的な悪魔のサイクル!?)に陥る時間帯が出てくることは火を見るよりも明らかです。だからこそ、クレバーに編集されたビデオを駆使した「イメージトレーニング」が重要な意味をもってくるのです。

 悪い流れになったとき、誰もが、自然と、守備を主体にした「刺激プレー」を全力で繰り出すことができるようになる。それこそがイメージトレーニングのターゲットというわけです。まあ日本代表には、澤という素晴らしいリーダーがいるから大丈夫だとは思うけれど・・。

 最後に、なでしこジャパンの大橋監督と、2004年の3月30日にシンガポールで対談したときの記事に「リンク」を張っておきます。当時の大橋さんは、アルビレックス新潟のコーチとして、シンガポールで奮闘していました。ご一読あれ。

 




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