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2008_CWC・・両チームが持ち味を出し切った「意味深」な勝負マッチ・・(パチューカvsアルアハリ, 4-2)・・(2008年12月13日、土曜日)

「質問の意味がよく分からないのだが?・・とにかく、ピッチを支配していたのが我々だったのは確かなことだった・・タテへ仕掛けていかないということだったが、決してそんなことはなかったと思っている・・前へ攻め上がり(仕掛け)すぎても、うまく機能しない・・(だからといって我々が)意味なく横へパスを回していたというわけではない・・メキシコ国内では、我々は攻撃的なチームだと評価されているんだよ・・」

 パチューカのエンリケ・メサ監督が、厳しい表情で(憮然として!?)私の質問に対して、そんなニュアンスのことを答えてくれました。

 質問の骨子は、こんな感じ。「勝利、おめでとうございました・・(部分的には)素晴らしいサッカーをみせてもらったと思っています・・ただ、勝ったから聞きますが、あれほど能力の高い選手がいるのに、どうしても安全な横パスばかりが目立っていたという印象をぬぐえないのですよ・・もっとタテへ仕掛けていけたはずだと思うのです・・パチューカは、もっと攻撃的なサッカーが出来るチームだと思うのですが・・」

 ちょっと挑発気味にすぎましたかネ。でも、試合は、まさにそんな展開だったと思うのですよ。

 たしかにパチューカの方がチカラは上・・そのことは、局面でのボールをめぐるせめぎ合いや、局面でのボール扱いやコンビネーションなどに明確に現れていた・・ただパチューカは、ポゼッションを強く意識するあまり(!?)最終勝負への仕掛け(リスクチャレンジ)が消極的にすぎた・・等々・・

 「とにかく、自分たちがボールをキープすることがもっとも大事なテーマだと思っている・・」といった、パチューカ、メサ監督の発言にあるように、彼らにとっては、とにかくボールをしっかりと(安全に)キープすることは、もっとも大事なテーマだということらしいね。でもネ・・

 たしかにボールポゼッションでは超一流かもしれないけれど(2005年のコンフェデカップでも感じていた!?)基本的にそれは、タテへ最終勝負を仕掛けていくためのファウンデーション(準備プロセス)だからね。いくらボールを安全にキープできたとしても、それで「シュート」を打てるわけじゃないのですよ。

 言うまでもなく、攻撃の目的はシュートを打つこと。いくら天才的なボールキープでタメを演出できても、美しいドリブルで観客のため息を誘えても、またパチューカのように、ボールを確実にキープ出来ても、それが「シュートを打つこと」に貢献できていなければ、単なる見せ物にしか過ぎないのです。

 もちろんパチューカは、ボールをしっかりと動かしつづけることで相手守備ブロックのバランスを崩し(ディフェンスの穴を作り出し!)ココゾッ!の急激テンポアップで最終勝負を仕掛けていくというイメージであることはよく分かる。

 その視点じゃ、彼らにとっては、3点目のゴールが、もっとも理想イメージに近いものだったはず。ワンツーと爆発的なパス&ムーブを積み重ねた素早くスムーズなコンビネーションで、完璧にアルアハリの守備ブロックを崩し切り、ウラの決定的スペースを攻略したゴールだったからね。

 それでも、前半は言うにおよばず、後半の立ち上がりに「2-1」という追い掛けゴールを決めてからも、どうも最終勝負への仕掛けが「カッタるく」感じられたのは私だけではなかったように思うのですよ。実際、昨年のクラブワールドカップでも、同じようなゲーム展開で、エトワール・サヘルに敗れ去ったからネ。そのときのレポートは「こちら」

 とはいっても、最後は、実力の差を魅せつけてくれたパチューカ。そうそう・・はじめから、キープするところと仕掛けていくところをメリハリ良く使い分ければ(ボールキープを、爆発的な仕掛けの準備プロセスとして上手く活用するというイメージをもっと強く持っていれば)よかったんだよ・・出来るんだから・・なんてネ。

 とにかく、一発トーナメントであるからこそ、実力チームが勝ち上がったことは本当に意義深い出来事だったと思っている筆者なのです。本当に良かった・・よかった。

 明日は、ガンバとアデレードの「ガチンコ勝負」。いまから血湧き肉躍りますよ。そんな期待に胸膨らんでいるからこそ、もし神様のイタズラで、ワイタケレとアルアハリが勝ち進んでいたら・・なんて思うと寒気がしてくるわけです。

 ワイタケレとアルアハリの皆さん、ゴメンなさい。同じサッカー人として、あるまじき発言かもしれないけれど、でも・・やはり(繰り返しになるけれど)実力チームが順当に勝ち上がることが大会を盛り上げる原動力だと思うのですよ。

 最後に、「このゲームについては、こんな見方もできる」という発想を紹介します。要は、この試合が、両チームともに、自分たちを成功に導いてくれる「得意なゲーム展開」をしっかりと体現できていたという希有なゲームだったということです。

 最初は(まあ後半の半ばくらいまで)アルアハリが、しっかりとした守備をベースにした蜂の一刺しという鋭いカウンターでリードを奪い(そこまでのゲーム展開では、パチューカが逆転できるなんてことは誰にもイメージできなかった!?)、その後パチューカが、得意のセットプレーや(中盤でのタメがあるからこそ効果的な!?)爆発的テンポアップをベースにした「小さなワンツー」を積み重ねる創造的コンビネーションでアルアハリを圧倒した・・。フムフム・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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