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2008_「ユーロ08」・・良かった・・ドイツにとっては、失敗こそが、次のブレイクの「機会」になるはずだからネ・・ドイツ対クロアチア(1-2)・・(2008年6月13日、金曜日)

何か(私のHPに対して)すごいアクセス数だな〜〜・・たぶん、ドイツがクロアチアに負けたから(ここで、クロアチアがドイツに勝ったと表現しないところが私の肩入れスタンスの象徴・・ドイツは第二の故郷だから仕方ないよ!)それに対して湯浅がどのように反応するのか興味津々ってわけなんだろうね・・フ〜〜・・

 何せドイツは、1998年フランスワールドカップでも、準々決勝でクロアチアに叩き潰されてしまったからね。あのときは、本当にガクッときてしまった。真夜中にパリへ戻る特別列車をリヨンのプラットフォームで待つドイツ人ジャーナリスト連中の表情にも、これ以上ないというほどの焦燥感があふれていたっけ。そのときのコラムについては「こちら」を参照してください。わたしも、当時のコラムを懐かしく読み返しました。

 このゲームだけれど、結論からすれば、ドイツはちょっと高慢にプレーし過ぎたといったところですかね。まあ、ツキに見放されたことも確かな事実だったけれど、それでも(ドイツが押し込んでいたにもかかわらず)チャンスの量と質では互角だったし(クロアチア選手の、カウンターを繰り出していくときのイメージシンクロレベルは見事!)、ドイツのポドルスキーが「2-1」となるキャノン・シュートを決めてからクロアチアが展開した(モドリッチに代表される!?)見事なテクニックを駆使して、ドイツが仕掛けてくるボール奪取勝負のアプローチを翻弄した「したたかなゲーム運び」は見事の一言だったから、まあクロアチアが正当に奪い取った勝利と言えないこともない。

 「ドイツの高慢さ」については、2006ワールドカップ準備マッチの対ジーコジャパン(まあ実際には『ヒデ・ジャパン』だったかな・・)戦のときもそうだったし、それ以外のフレンドリーマッチでも・・。とにかくドイツの場合、タイトルが掛かっていないゲームで気の抜けたサッカーに終始することも結構多いんですよ。

 例えば、ボールを奪われてからの「守備へ戻る勢い」が十分ではなかったり、ボールがないところでのマークや「ボール奪取狙い」がいい加減だったり、パスやクロスの出所に対するチェックが不十分だったり・・等々、「小さな現象」を数え上げればキリがない。

 クロアチアに奪われた2点にしても、両方ともアーリークロスからの失点だったわけだけれど、クロスを上げる相手選手に対するチェックが甘かったし、ボールが送り込まれるセンターゾーンでの相手パスレシーバーに対するマークにも「ギリギリの緊張感」がなかったり・・。とはいっても、クロアチアの2点目については(ドイツが)ツキに見放されたとしか言いようがないけれどネ。

 まあ、とにかく、最終戦(オーストリアとの勝負マッチ)に、勝つか引き分けさえすれば問題はないわけですが、そんな消極的な姿勢ではなく、やはりドイツは絶対に勝たなければならないのですよ。脅威を機会へと転換させるためにもネ(これについては後述)。

 要は、ドイツにとってのグループリーグ最終戦は、様々な意味を含め、真に大事なマッチになるということです。それも相手は、ホストカントリーのオーストリア(もう一つのホストであるスイスは既に敗退が決定!)。そして場所は、首都のウイーンだゼ。フムフム・・

 要は、いまのドイツにとっては(チームの緊張感を高揚させ、気持ちを一つにするために!)願ってもない状況になったと言える。本当に強いチームにとって「脅威」とは、まさに願ってもない「機会」なのですよ。そしてドイツチームのなかに、「ふざけるな・・おれ達を甘く見るなヨ!!」という攻撃的なマインドが充満してくる。そう・・2002ワールドカップや2006ワールドカップのときのようにネ。

 「2002」のときは、才能ある選手の多くがケガなどで離脱したことが、最初からチームの緊張感を高めるバックボーンにあった(メディアも、こんな下手なチームにはまったく期待できない・・というニュアンスで代表を揶揄しつづけた!)。このことについては、後に、ルディー・フェラー(当時のドイツ代表監督)やミヒャエル・スキッベ(当時の代表コーチ)も言っていた。

 また「2006」のときは、日本とのフレンドリーマッチに青息吐息で引き分けたゲームが「分岐点」になった。私は、そのことについても複数の「インサイダー証言」を持っています。日本とのゲームがキッカケになって(ヒデのゲーム戦術イメージがツボにはまり、ドイツ守備ブロックがウラを突かれまくった!)、現実的なラインコントロールやマークの受け渡しと忠実マーキングが、メリハリ良くイメージされるようになったのです。

 とはいっても、クロアチア戦でのドイツの内容が最低だったとは思いませんよ。試合中に書いたメモにも、下記のようにポジティブな要素が列挙されていたしね。とはいっても、実際には、前述したような「小さなところ」で勝負が決まるという事実は動かしがたいわけで、そのポイントで、一部ドイツ選手のマインドが「甘かった」というのは確かなことだったわけです。

 ということで、最後に、(次のオーストリア戦での内容あるサッカーを期待しながら!)ドイツのポジティブポイントを列挙しておくことにします。では・・

 ■守備意識が高い・・それこそが相互信頼と「質実剛健サッカー」の絶対的ベース・・上手さ(美しさ)は感じられないけれど、とにかく攻守にわたって「基本に忠実な」サッカーを展開する・・面白くはないけれど、とにかく強い・・

 ■守備意識に対する相互信頼がベース・・だからチャンスとなったら、脇目も振らずに多くの選手がスペースへ上がっていく・・バラックとフリングス、またフリッツとポドルスキーが絡む、縦横無尽のポジションチェンジ・・

 ■数的に優位な組織プレーを展開するために必要な「後方からの押し上げ(サポートの動き)・・それには、ゲームの流れにおける「微妙なニュアンス」が内包されている・・一つは、その人の動きがあるからこそ、相手も下がらざるを得ないというニュアンス・・そして「そのこと」が、相手を心理的な悪魔のサイクルに陥れてしまう・・そこまで相手のマインドを凌駕することがターゲットイメージ・・でも、その心理的なバランスが崩れたとき(もちろんクロアチアは、そんなゲーム展開を明確にイメージし、虎視眈々とカウンターを狙っていた!)墓穴を掘ってしまう・・

 ■バラックの攻守にわたる素晴らしいリンクマンぶり・・汗かきのディフェンスプレーなどもハイレベル!・・彼は、CL決勝での(チェルシーでの)好調を維持している・・

 ■チャンスがあれば、本当にシンプルな早いタイミングで「直接的なラスト縦パス」や「アーリークロス」が出てくる・・マリオ・ゴメスやバラックの「アタマ」という発想・・そのような「シンプルな最終勝負に対するイメージのシンクロ」はドイツの強みであり、相手にとっては冷や汗の出る脅威・・だからこそ、周りが「ヘディングのこぼれ球」を狙って動く・・

 ■ドイツは、チャンスとなったら、ボールのないところで忠実に「最後まで走り抜ける」・・それこそが、決定的スペース攻略のキーポイント・・「プレー・ウィズアウト・ボール」というコンセプトが、子供の頃から浸透している・・それこそが真のサッカー文化!・・

 ■セットプレーでも世界トップ・・バラックの直接フリーキック・・コーナーキックやフリーキックからの「高さ勝負」・・やはり勝負強さは超一流・・

 まあ、こんなところですかネ。グループ最終戦だけれど、その時はもう帰国していますからね。とにかく、その勝負マッチが待ち遠しい限りです。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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