トピックス


2008_日本代表・・さて、岡田武史が志向するトータルフットボールの輪郭が整いはじめた・・(カタールvs日本、0-3)・・(2008年11月20日、木曜日)

そうそう、やっぱりシリア戦からの良いイメージが、うまく「有機的に発展」していると思いますよ。田中達也にしても、玉田圭司にしても(まあ・・)大久保嘉人にしても、そしてサイドでの「複数サポートコンビネーション」の明確なイメージ作りにしても。そのことについては「シリア戦レポート」を参照してください。

 そして、その「良いイメージ発展グループ」に、クールな日本人とヨーロッパのハードワーカーが加わった。そう、遠藤保仁、そして中村俊輔と長谷部誠。

 良いイメージとは、もちろん攻守にわたる汗かきハードワークのこと。その中心になっているのが優れた守備意識(=強烈な意志!!)というわけです。そのことについては、昨日アップした「コラム」も参照してください。

 その意味で、岡田武史監督は、良いイメージが発展する潮流を阻害するような危険性が内包された要素は避けたということでしょう。要は、攻守にわたる全力ハードワーク(=全力ダッシュの量と質)に不安がある大久保嘉人と松井大輔を「一緒」にグラウンドに送り出さないという決断をしたということです。

 カタールだけれど、流石にブルーノ・メツだね、彼らの攻守にわたる組織プレーマインドは、ブルーノという「ストロング・ハンド」に率いられることで何倍にもアップしたと感じますよ。要は、攻守にわたる汗かきプレーに対する「意志」が格段に高まっているということです。そんな強烈な(闘う)意志をベースに、ゲーム立ち上がりからガンガンと前からプレッシャーを掛けてくるカタール。その勢いからは、本当に危険なスピリチュアルエネルギーが放散されていた。

 だからこそ、その勢いをしっかりと受け止め、臆することなく、タテへ、前へ『人数を掛けて=勇気をもって』押し返していった日本代表の立派なプレー姿勢を、誇りにまで感じたのです。

 カタールの前への勢いを、抜群の守備意識をベースに、短い時間で効果的に「抑制」してしまった日本代表。そんな日本代表のダイナミズム(活力・迫力・力強さ)は、カタールの勢いに触発され、活性化したという部分もあったかもしれないけれど、私の目には、彼らが『意志を爆発させる』ことでゲームの展開を逆流させていったと映っていました。

 昔だったら、そんな「主体的な反発力」などまったく期待できなかった。中東チームの、暴力的とまで言えるくらいの勢いに呑み込まれ足が止まったに違いない。私は、そんな「暗黒の時代」からサッカーをやっているのですよ。だからこそ、この試合で日本代表が魅せつづけた、立派な「反攻ダイナミズム」を誇りにさえ感じたというわけです。とにかく、岡田武史は良い仕事をしている。

 そんな強烈な意志プレーの迸(ほとばし)りを引っ張った主役は、田中達也、中村俊輔、長谷部誠、遠藤ヤット・・等々。まあ、全員だネ。

 具体的なグラウンド上の現象としては、田中達也や中村俊輔が魅せつづけた前戦からのスーパー守備(達也の爆発チェイス&チェック、俊輔の"サンドウィッチ"ボール奪取勝負はチーム全体に勇気を与えた!)長谷部誠の勇気あるオーバーラップ、遠藤ヤットの「クールに燃える」攻守にわたる汗かきチームプレー・・等々、数え上げたらキリがない。とにかく、そんな個々の「闘う意志」が、攻守にわたって有機的に連鎖しつづけたのです。ホント、素晴らしい。

 先制ゴールを奪った後だけれど、カタールがより積極的に攻め上がってきたよね。でも日本代表は、そんな勢いにまったく動ずることなく、冷静に組織ディフェンスを展開し、効果的なボール奪取から、鋭い(カウンター気味の)攻めを仕掛けていった。

 やはり、カタールの攻めは、まだまだ「局面での個人勝負」を切り貼りするような感じだから、日本も協力プレスを掛けやすかったんだろうね。セバスティアンに代表されるカタールの個の才能がボールをもったら、素早いチェイス&チェックでボールの動きを停滞させ(=守備の起点の演出)その状況を予測し、忠実に「次のサポートアクション」をスタートしていたチームメイトが協力プレスの輪を作り出してしまう。

 そんな日本代表が展開する組織ディフェンスは、まさに、有機的なプレー連鎖の集合体と呼べるほどハイレベルなものでした。例外なく全員が、優れた守備意識に支えられた効果的な汗かきディフェンスをつづけることで培われる相互信頼。フムフム・・

 ということで、フォーバックの前で機能する守備的ハーフコンビというテーマ。この試合では、遠藤ヤットと長谷部誠が、まさに「あうんの呼吸」で、攻守にわたって縦横無尽に動き回り、効果的な仕事を魅せつづけていた。どちらも素晴らしいプレーを展開したけれど、どちらも「アンカー・タイプ」のプレーを展開したわけではなかった。

 最終ラインの前で、相手の仕掛けプロセスの「芽」を忠実に潰す仕事をメインにする「アンカー・タイプ」。もちろん、忠実なチェイス&チェックから守備の起点を作り出す(だからこそ、最終ラインも含む「周り」が次のボール奪取勝負を明確にイメージできる!)ことが主体的な仕事になるわけだけれど、これほどチーム全体の「守備意識」が高まりを魅せたら、アンカー・タイプは必要じゃないのかもしれない。もちろん相手が強くなったハナシは別だけれどネ。

 ところで牛若丸(中村憲剛のことですよ)。私は、こんな素晴らしいゲームを見せつけられたにもかかわらず、まだまだ「ダイナミック・トライアングル」にこだわりつづけますよ。そう、遠藤ヤット、中村俊輔、中村憲剛のトリオ。さて・・

 攻守にわたる優れた「全力ダッシュの量と質」に支えられる、全員守備、全員攻撃を貫くダイナミックサッカー。何となく、岡田武史が思い描くトータルフットボールの輪郭が整いはじめてきたように感じます。

 たしかに、岡田ジャパンを取り巻く雰囲気は、まだまだ盛り上がりに欠けるけれど、このような素晴らしいダイナミックサッカーをつづけていれば、おのずとポジティブなノイズのレベルも高まりを魅せていくに違いありません。継続こそチカラなり・・なのです。

------------------

 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

=============

 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]