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- 2010_UCL準決勝・・インテルの守備がメインテーマだけれど、バルサが魅せた「タラレバのドラマ」にも手に汗握った・・(バルセロナvsインテル、1-0)・・(2010年4月29日、木曜日)
- ・・まずシャビが、無回転のミドル弾を飛ばす(ブレ球だったのに、インテルGKジュリオ・セザルはよく落ち着いて対応した!)・・
・・そしてメッシが、ドリブルシュートをブチかます(これも相手GKほぼ正面)・・そして最後は、ボージャン・クルキッチがゴールを割ったかに見えたけれど、その直前に、トゥーレ・ヤヤがハンドを犯したという判定・・フ〜〜ッ・・
後半39分にバルセロナのピケがゴールを挙げてからタイムアップまでの、ロスタイムも含めた10分ほどの間に、バルセロナは、何度も決定機を作り出した。そんなシーンを(たまに、手に汗握ってフリーズしながら!?)観ているうちに、昨シーズンの同じ準決勝、対チェルシー戦の後半ロスタイムにイニエスタが挙げた、まさに神様のイタズラとしか思えない「ミドル決勝ゴール」のシーンが脳裏にチラついていた。でも結局は・・
この試合のテーマは、もちろん、インテルの守備。そのポイントについては後述するけれど、まずは、バルサが作り出したチャンスシーンからいきましょうか。
前半では、何といっても、メッシのドリブルシュート。右サイドでボールを持ち、中央ゾーンへ切れ込んでいく得意の突破ドリブルから放たれた、流れるような素早いモーションからの強烈なシュートだった。誰もがゴールを確信した瞬間。でも、インテルGKジュリオ・セザルが、ギリギリのところで弾き出した。横っ飛びの見事なセービングから、指先で、メッシが放ったシュートのコースを変えた。鳥肌が立った。
その瞬間、1970年メキシコワールドカップで、ペレが放ったヘディングシュートを(正確にゴール直前でバウンドするような、それも、ゴールの左ポスト際に飛び込んでいくようなスーパーヘディングシュートを!)伸びきった身体が、完璧に地面と平行になるほどの見事な横っ飛びで、これまたギリギリのところで指先で弾き出したイングランド代表GK、ゴードン・バンクスの伝説的なスーパーセーブシーンが脳裏をよぎった。
あっと・・バルサのチャンス。前半では、ダニエウ・アウベスが送り込んだグラウンダークロスをダイレクトで叩いたペドロのシュートシーンもあった。これは、わずかにポストを外れていった。
そして後半、交替出場したボージャン・クルキッチが放った、まさに120%の可能性を秘めた、フリーのヘディングシュート。ただこれも、僅かに右ポストを外れていった。誰もが、自分の目を疑ったはず。どうして、あの決定的ヘディングシュートがゴールに入らなかったんだ!?
そして、前述したピケの(決勝)ゴールと、その後の何度かの決定機へとドラマがつながっていくわけです。バルセロナが放ったシュートは、15本(枠内が4本)。それに対して、インテルは1本(枠内ゼロ)。ということで、「タラレバ」なしに、インテルの守備を賞賛しましょう。
バルサが攻め立て、インテルが、強固な守備ブロックで守る・・という全体的なゲームの構図。その図式は、前半28分に、インテルのモッタが、二枚目イエローで退場になってから、より先鋭化した。そのポイントについては、解説の名波浩も触れていた。その退場でインテル選手のイメージは完全に統一され、逆にバルサはやり難くなった・・。サスガの視点だね。
このことは、前回のコラムでも書いたけれど、とにかくインテル守備のポイントは、粘り強さ、我慢強さにあったと思う。
・・素早く忠実なチェイス&チェック・・でも、チェックまでで、決して、安易にアタックに入らない・・そして、例えばメッシがドリブルに入っても、その仕掛けアクションに付いていく・・とにかく、粘り強く、我慢強く・・
・・もちろん、ボールがないところでの守備アクションも秀逸・・人数が多いにもかかわらず、決して「アナタ任せ」になることなく、自ら仕事を探しつづける・・だから、自然と、効果的なトライアングル(ディアゴナーレ)が連続する・・まさに、有機的なプレー連鎖の集合体といった趣のディフェンス・・
・・アナタ任せにならない集中力・・ときには、味方のディフェンダーまでハネ退けて、自分がマーキングに入ったり、ギリギリのカバーリングでスライディングタックルを見舞ったりする・・とにかく、インテル選手が魅せつづけた、自ら仕事を探しつづけるプレー(守備)姿勢は、とても感動的だった・・
たしかに、組織プレーと個人勝負プレーの「バランス状態」が、これ以上ないという極限レベルまで上り詰めた世界最高のサッカーを展開するバルセロナが敗れたことは残念だったけれど、まあ「それ」もサッカーだからネ。
これでインテルは、もう一つの準決勝で、リヨンを余裕をもって退けたバイエルン・ミュンヘンと対戦することになった。
まったく互角の対戦ということだけれど、一発勝負だからネ、エトーやスナイデルといったスピードある天才を擁するインテルの方が、しっかりと守備ブロックを安定させてカウンター(ショートカウンター!?)を狙うというチーム戦術イメージを徹底するという意味合いも含めて(もちろん、ジョゼ・モウリーニョのウデという意味合いも含めて!)ちょっと有利かな・・
でもバイエルンにも、ファンハールという「ストロング・ハンド」がいる。彼は、イビツァ・オリッチという最前線の汗かきの(その仕事内容イメージの)価値を、チーム内だけではなく、メディアも含めた周りの環境にも知らしめた。とても良い仕事をしていると思う。またカウンターという視点でも、リベリーとロッベンという天才を擁しているし(効果的なカウンターの絶対的なベースになる)彼らの守備ブロックもとても強固だからネ〜〜。
フム〜〜・・。こりゃ、決勝のゲーム展開を予測するのは止めにするのが正解だね。とにかく、お互い、先の見えないドラマを、とことん愉しみ尽くしましょう。
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お知らせですが、きたる5月3日の月曜日。NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ(ヨココム)が主催する「湯浅健二の独演会」が、昨年につづいて開催されることになりました。テーマは「岡田ジャパン」・・まあ、「日本人はなぜシュートを打たないのか?」っちゅうテーマにも入っていかざるを得ない!? さて・・。詳しくは「ここ」を参照してください。
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ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。
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