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2010_ACL・・やはり中村憲剛は牛若丸だった・・(フロンターレvs城南一和, 3-0)・・(2010年4月14日、水曜日)

最初は、「北京へ行くぞ〜〜っ!」なんて声が出たけれど、すぐに、「いや・・行きたいな〜」なんて、声からチカラが失われていった。

 フロンターレが見事な勝利を収め、(決勝トーナメントへ進出できる!)グループリーグ二位の座を争うライバルの北京国安が、メルボルンとのアウェーゲームに引き分けたことを知ったとき、思わず、そんな声が出ていた。でも、すぐに、ゴールデンウィーク真っ最中のその日は別件があったことを思い出した。そうだよな〜、北京へ行くなら、少なくとも二日はスケジュールを空けなきゃならないしな〜〜・・。

 まあ、どうなるか分からないけれど、このゲーム(フロンターレ対城南一和)を見届けたとき、本当に、北京でのギリギリの最終勝負マッチ「も」観てみたくなったんですよ。それほど、フロンターレが展開したサッカーは、立派で魅力的だった。それも、チョン・テセが出場停止だったにもかかわらず・・(中村憲剛とヴィトール・ジュニオールもベンチスタートだったにもかかわらず・・)。

 シーズン当初はちょっと心配になったけれど、ここにきて、高畠勉監督がパフォームしている優れた仕事を体感できて、安心できた。

 立ち上がりのフロンターレ。(既に決勝トーナメントへの進出を決めていることもあって!?)ちょっと気合いの乗らない城南一和の受け身サッカーを尻目に、どんどん積極的に突っ掛けていく。フロンターレは勝つしかないから、当然のプレー姿勢ではあったけれど、それでも、「あの」強い城南一和ディフェンスが、見るからに不安定になるくらい効果的なリスクチャレンジプレーをブチかましていくのですよ。とても頼もしく感じたものです。

 そんな流れのなかで、前半4分、フロンターレが見事な先制ゴールを奪う。谷口博之。レナチーニョの「置くような」横パスから、狙いすましたミドルシュートを見事に決めた。まさに、鳥肌モノのスーパーシュートだったネ。

 その後も攻めつづけるフロンターレ。私は、心のなかで「相手はまだ寝ている・・ここがチャンス・・もう一点ブチ込んでしまえ〜〜っ!」なんてリキを入れていた。でも、徐々に城南一和も押し返しはじめ、ラドンチッチを中心に、とても危険な仕掛けを繰り出してくるようになるのですよ。

 このラドンチッチが曲者。動かないし守備もしないけれど(ヤツが、攻守の組織プレーにも精進したら完全に世界レベルプレイヤーだね!)、ツボにはまったら、とても力強く、危険な最終勝負プレーを繰り出していくのですよ。ヘディングでも、足をつかった勝負シュートでも。

 このラドンチッチだけれど、試合全体を通して、たぶん4-5回は、絶対的チャンスに恵まれたと思う。そう、誰もが失点を覚悟するようなシーン。とにかくヘディングが高く、パワフル。フロンターレのセンターバックコンビ、伊藤宏樹や寺田周平が、まさに「ノーチャンス!」ってな競り合いシーンが繰り返される。

 城南一和は、韓国人による強固なディフェンスブロックをバックボーンに、一発ロングパスを、優秀なポストプレイヤーでもあるラドンチッチに送り込み、そこからのセカンドボールを拾った、モリーナやファブリシオといった外国人選手がシュートチャンスにつなげていくというのが典型的なチャンスメイクプロセスだね。よく言えば「徹底サッカー」。悪いニュアンスで表現すれば「前後分断サッカー」。さて・・

 そんな互角の展開のなか、前半21分に、田坂祐介が、見事なフリーキックシュートを決めるのです。ちょっとビックリした。私にとっては、それほど「唐突なゴール」だったのです。何せ田坂祐介は、そのフリーキックゴールまでは、消極的なプレーの方が目立っていたからね。

 ドリブルで突っ掛けていきながら、最後のところで逃げの横パスを出して相手にインターセプトされてしまうシーンが連続したのですよ。何度、「何やってんだっ、オマエ〜〜!!」なんて怒りの声が出たことか。そんな田坂が素晴らしいフリーキックゴールを奪ったのです。ゴールに勝る刺激はないですからネ、そこからの田坂が、生き返ったようにピチピチとプレーしはじめたことは言うまでもありません。フムフム・・

 ただ後半の城南一和は、何人か選手を入れ替えたことで、危険度を増幅させていった。もちろんラドンチッチの危険度も高まっていった。そして、フロンターレが押し込まれるシーンが連続するようになっていく。

 そして(この)コラムは、このゲームでのメインテーマに入っていくことになるわけです。中村憲剛とヴィトール・ジュニオールの復帰。彼らが出てきた次の瞬間から、フロンターレのサッカーが、まさに何倍にもレベルアップしたっちゅう感覚に包まれるほど、この二人の存在感は大きかった。特に中村憲剛。やはりヤツは牛若丸・・。

 ケンゴとヴィトールによってフロンターレのサッカーが何倍にも高質なものへと変容した・・と書いたわけですが、何とか、その意味合いまでも表現しなければいけないよね。例えば・・

 ・・ケンゴがボールを持ったとき、黒津勝やレナチーニョ、はたまたヴィトール・ジュニオールが、脇目もふらずに決定的スペースへ飛び出していく・・その、ボールがないところでの決定的フリーランニングの量と質が、明確に増幅したと感じる・・そして、そんな決定的な動きに、ケンゴからのラストパスがピタリと重なるのです・・またケンゴは、余裕のタメを演出することで城南一和ディフェンスブロックの注意を引きつけ(彼らの視線と意識を引きつけ)、そこから、とても正確なサイドチェンジのラストパスを通しちゃったりする・・美しい・・

 ・・またヴィトール・ジュニオールも、例によっての、攻守にわたる素早くダイナミックな汗かきアクションをベースに、ココゾの勝負ドリブルやシュートをブチかましていく・・

 そんな二人の「補強プレー」が、フロンターレに自信を与えないはずがない。それまで、ちょっと押し込まれるシーンが連続していたけれど、この二人が入ってからは、まさにチーム一丸となった強烈な「ボール奪取勝負」をバックボーンに、攻守の組織プレーが活性化していくのですよ。そして、だからこそ、より「有利なカタチ」で個人勝負を繰り出していけるようにもなる。フムフム・・

 そんな素敵なプレーを繰り広げたフロンターレだったから、最後の大勝負が繰り広げられるはずの、北京国安とのアウェーゲームに馳せ参じたいと真剣に思ったというわけです。さて、どうしようかな・・

 あっと・・最後に、ちょっと唐突だけれど、稲本潤一が、例によっての、高みで安定した実効プレーを披露したことも付け加えておきます。それでは、今日はこのあたりで・・

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓することになりました。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 




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