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- 2010_クラブワールドカップ(CWC)・・世界トップとの最後の僅差というテーマ・・(2010年12月19日、日曜日)
- どうも、ご無沙汰してしまいました。
前回の「ヨーロッパの日本人コラム」では、香川真司につづき、後で内田篤人についてもコメントします・・なんて言っていたのに、所用に追われてそのままになってしまった。スミマセン・・。
香川真司と内田篤人は、体型的にも、(小回りが効いた、スキルフルでスピーディーな勝負プレーといった)プレースタイル的にも、そしてもちろん、労(攻守にわたる汗かき仕事)を惜しまないという日本的な(!?)組織マインドなどなど、ドイツでは、どちらかといったら希少なタイプなのですよ。そのことについては、友人のドイツ人エキスパートなどとも意見が一致しているところです。
この二人ですが、後藤健生さんとの共著、「日本代表はなぜ世界で勝てたのか?」では、チョン・テセや長友佑都に比べて期待薄なんていうコメントをしてしまった。その罪滅ぼしの意味も含め、これからも彼らを定期的に追いかけていくつもりです。
1970年代から80年代に活躍した(わたしのドイツ留学時代の戦友でもある)奥寺康彦からはじまり、尾崎加寿夫、風間八宏といった草分け的な日本人プロ選手。そして最近の長谷部誠。また世界シーンでの日本代表の存在感アップ。そんな基盤が、フットボールネーションのプロ市場における日本サッカーの「イメージ価値アップ」につながっているというわけです。
そんな、世界トップとの『最後の僅差』を縮めていくプロセスというテーマ。今回のクラブワールドカップでも、アフリカ代表のマゼンベ(コンゴ共和国)が、その一翼を担った。彼らは、立派なサッカーで、アフリカサッカーの「イメージ価値」を引っ張り上げたのです。
とはいっても、マゼンベ。勝利を収めた準決勝でのインテルナシオナル戦もそうだったけれど、グラウンド上の現象における『ほんの小さなところ』では、まだまだ「世界トップとの最後の僅差」は感じられた。
相手のプレッシャーと対峙する局面勝負シーンでのボールコントロールとかコンビネーション、そしてマリーシア。また何といっても、攻守にわたるボールがないところでの決定的なプレーの量と質。そんな「組織プレー的な細部のポイント」で、まだまだ雌雄を分ける確実な差を感じるということですかね。たしかに「個のチカラ」では、より大きく「最後の僅差」は縮まっているけれど・・
もちろん以前から比べれば、そんな「小さな組織プレー的な差」は着実に縮まっている。それでも、ココゾの勝負所で繰り出される、ボールがないところでの決定的な動きに対する「イメージ描写力」という視点で、まだまだ明確な差が見えるのですよ。
イメージ描写力。それには、相手守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを攻略していく仕掛けでの描写力だけじゃなく、そんな相手の最終勝負の「意図」を読んで着実に対処してしまう守備でのイメージ描写力もある。まあ、ここでは攻撃でのイメージ描写力をベースに書き進めるけれど、攻撃の描写力が高ければ、必然的に守備でのイメージ描写力も高揚していくモノです。攻撃と守備は表裏一体・・。
そんな組織プレー的なイメージ描写力という視点で、まだまだマゼンベに課題が見え隠れしていたというのが・・要は、ボールがないところで勝負は決まる・・それも、サッカーの全体的なレベルが上がれば上がるほど、その差が先鋭化してくる・・というのが、今回のコラムのテーマということかな。
もちろん、世界トップへ近づいていく第2グループの国々でも、以前のように、単純な2人目のフリーランニングとシンプルなスルーパスで簡単にウラの決定的スペースを攻略されるなんていう無様なミスは少なくなった。
とはいっても、インテル対マゼンベの決勝で先制ゴールを叩き込んだ(ゴール左隅への素晴らしいパスを決めた!)パンデフの動き出し(ボールがないところでの決定的動き出し)や、2点目を決めたエトーのチャンスを、右サイドのオーバーラップで切り裂いてお膳立てした元アルゼンチン代表サネッティが魅せた、突き抜け、走り抜ける全力フリーランニング(ベストタイミングと強さとコースのスルーパスも含めて!)などに、また、そんなインテルが繰り出す組織コンビネーションに効果的に対処できなかったマゼンベの守備コンテンツにも、明確に『世界トップとの最後の僅差』の本質が見えたものです。
ということで、このコラムのテーマは、世界トップとの「最後の僅差」を縮めるべくチャレンジをつづける(日本も含めた)第2グループの「イメージ描写力」なんていうことになるんだろうね。
あっと・・。イメージ描写力っていうテーマの主体は、組織コンビネーションだよね。要は、パスとフリーランニングが組み合わされるコンビネーション。ということは、そこには、個の勝負プレーという要素が欠けている!?
いやいや、皆さんもご存じのように、ドリブル勝負という個人プレーでも、組織コンビネーション(組織プレーイメージ描写力)が決定的に重要な意味をもっているのですよ。
もちろん、『最初から最後まで』個のドリブル勝負でゴールを決めちゃうような「完璧な単独(エゴ)勝負プレー」の場合は、ちょっと別立てで考えなければならないけれど・・。例えば、ジョージ・ベストとかディエゴ・マラドーナ、はたまたリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、(ブラジルの)ロナウド、ロナウジーニョ、デニウソンとか・・(数え上げたらキリがなくなっちゃうし、読者の方々からのブーイングも増幅されちゃうだろうから、ここら辺りで・・あははっ)。
もちろん、彼らの(その多くが自分勝手な!?)単独ドリブル勝負にしても、周りのフリーランニングがあるからこそ(パス勝負の可能性も残されているからこそ!!)より効果的に繰り出していくことができるわけだし、周りのチームメイトにしても、自分たちには出来ない(自分たちにとって価値ある)プレーを繰り出せる天才たちを、そんな価値ある個人プレーが出来ているうちは(!)一生懸命にサポートするだろうしサ。
まあ、リオネル・メッシの場合は、『バルセロナという現象』のおかげで(!?)組織プレーと個人勝負プレーのイメージ描写内容が、より高い次元でバランスするような、未来の天才プレーを示唆するモダンなエゴイスト・・っちゅうことになるんだろうけれど・・。
あっと・・またまた論点が逸れた。
ということで、クラブワールドカップを見るときは、世界トップとの最後の僅差(組織プレーのイメージ描写力をコアのテーマに、そこに内包される様々な小さな差の発見とグルーピング・・等々)というテーマをベースに観察することにしている筆者なのでありました。
とにかく、どんどん「最後の僅差」が縮まっているなかで、クラブワールドカップが日本に「戻って」来るんだからネ。来年は、本当に楽しみだ。願わくば、ヨーロッパ代表としてバルセロナがやって来てくれれば・・何てね。あははっ・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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