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- 2010_エル・クラシコ_・・このような「組織と個」が美しくバランスしたサッカーが世界を引っ張っていくのが理想・・(レアルvsバルサ, 0-2)・・(2010年4月12日、月曜日)
- 久しぶりに、スペインリーグをレポートしちゃいます。もちろん「エル・クラシコ」。
メインテーマは、組織プレーと個人プレーのハイレベルなバランス。もちろん、バルセロナのことですよ。そして、もうちょっと踏み込んで、「天賦の才という諸刃の剣」ってなテーマもありそうだね。もちろんそこでは、クリスティアーノ・ロナウドが主人公ですよ。
「現時点では、バルセロナの方が実力で上回っていると認めざるを得ない・・彼らは、これまでの相手とは明らかに違っていた・・」
レアル・マドリーの、マヌエル・ペジェグリーニ監督が、そんなニュアンスのことを言っていたとか・・。まあ、その気持ちは良く分かるけれど、その発言は、そのまま象徴的なキーワードになっていたね。
実力で上をいくという発言のコノテーション(言外に含蓄される意味合い)は、基本的に、ペジェグリーニがどのようなサッカーを志向しているのかという哲学的な部分も絡んでくるから、その(背景ではかなり錯綜しているはずの!)言葉の意味をしっかりと把握するためには、ペジェグリーニとの詳細なディベートが必要になってくるよね。
ということで、ここでは、彼の「バルサは、これまでの相手は明らかに違っていた・・」という発言も含め、グラウンドの現象として、バルセロナの方が、より多く(次の攻撃の効果的なベースになるような!?)実効レベルの高いボール奪取シーンを演出し、そして、より多くの質の高いチャンスを作り出していたという事実を素直に表現していたと考えるしかないけれどネ・・。
チリ人プロコーチのペジェグリーニは、ビジャレアル時代に、当時アルゼンチンが誇った天賦の才、ファン・リケルメの才能を「うまく活用」しただけではなく、二シーズン目には(次のステップへ進むうえで必要だったプレーイメージの修正で対立した!?)そのリケルメをスパッと切るというメリハリのあるチームマネージメントで名を馳せた(ドイツでもレスペクトされている!)。
それだけではなく、その次のシーズンには、フランス代表のロベール・ピレスという、攻守にわたる組織プレーにも長けた「天才個人プレイヤー」を中心に据えることで大きな成果を残した。あっと・・そこでは、サンティアーゴ・カソルラという天才的ドリブラーも大活躍したっけネ。カソルラは、ペジェグリーニの優れたマネージメント(ストロング・ハンド!?)によって、天才的なドリブルは「そのまま」に、攻守にわたる組織プレーでも汗をかけるような優秀な選手に育った。フムフム・・
またまた前段が長くなった。
このゲームのテーマは、何といっても、バルサが、強烈な組織ディフェンスと、攻撃での徹底した組織パスプレー(コンビネーション)でレアル守備ブロックの穴(スペース)を、「より」効果的に突いていったという事実です。
スペース(穴)の攻略とは、人とボールを、素早く、広く動かしながら、レアル守備が「薄い」ゾーンにボールを運び、そこから、ダニエウ・アウベスやペドロ、そしてもちろんメッシといった「天賦の才」が、相手守備が薄いからこそ効果レベルが大きくアップした勝負ドリブルをブチかましていくプレーのことです。
もちろんメッシの場合は、相手守備が「薄く」なくても、状況に応じて突破ドリブルにチャレンジしていっちゃうわけだけれど、それでも、レアルのクリスティアーノ・ロナウドとは違い、周りのチームメイトも、メッシの勝負ドリブルの「リズム」をしっかりと感覚的にシェアし、最後の最後まで「決定的パスでの最終勝負」の可能性を残しておこうと動きつづけているけれどネ・・。
それに対してレアルの攻撃は、どうも、ブツ切りの個人勝負ばかりが目立ってしまう。上記したように、レアルでは、勝負ドリブルの「リズムや意図」を、周りのチームメイトがしっかりとシェアできていないから、個人勝負が「単発」になってしまうのです。そして、そんな流れを助長しているのが、「諸刃の剣」クリスティアーノ・ロナウド。彼は、自分が「行けない」ときだけパスを出すから、そのパスが簡単にカットされてしまうのも道理なのですよ。これじゃ、周りのチームメイトが、彼のために全力ダッシュを繰り返す・・なんてことは考えられないよな〜〜・・
バルサの場合には、個人勝負プレーを組織的にも活用していけるような「あうんの呼吸」があるのですよ。でも、レアルの場合は、そんな仕掛けイメージの有機的な連鎖密度が薄い。だから、レアルの勝負シーンでは、ツボにはまれば世界一という個人勝負が孤立してしまうケースが多いと感じられるわけです。だから「ブツ切りの個人勝負」という単発攻撃・・。
いまのバルセロナは、「天才たちが演出する、攻守にわたる組織プレーの饗宴」っちゅう意味でも、たしかに、他の世界トップクラブよりも「アタマ一つ」抜け出している。だから、ペジェグリーニ監督の、これまでのどのチームとも明らかに違う・・という印象は、まさに正しいということです。
それにしても、イニエスタという、バルサ中盤の双璧(もちろん、スーパーパサーのシャビ・エルナンデスと、ドリブル勝負も得意のイニエスタのコンビのことですヨ!)の一人がベンチスタートという状態にもかかわらずの高質パフォーマンスだからね。バルセロナの底力を感じる。
わたしの新刊でも、多くのイラストともにバルサのプレーを分析したけれど、とにかく、彼らのように、組織プレーと個人プレーが最高レベルでバランスしたチームが世界を引っ張っていけば、間違うことはないよね。
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ところで、三年ぶりに新刊を上梓することになりました。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。
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