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2010_天皇杯準々決勝・・「フォルカー・フィンケ&Co.」の2年間における光と影が集約したようなゲームだった!?・・(ガンバvsレッズ、2-1)・・(2010年12月25日、土曜日)

実は、風邪をこじらせてしまい、このところアクティブに動けないでいました。そのイヤな流れを断ち切ることが出来ず、今日まで引きずってしまった。ということで、天皇杯の準々決勝は、ガンバ対レッズをテレビ観戦するってな体たらくなのです。

 体調が良ければ、もちろん鹿島へ駆けつけたはず。アントラーズ対グランパス。まあ、仕方ない。でも、フォルカー・フィンケの日本でのラストゲームに対し、テレビ観戦とはいえ、「ライブ」で、その証人になれたことには、それなりの感慨深い「何か」を感じていました。

 これでレッズは、監督&コーチングスタッフ、主力選手、そしてチームコンセプトも含め、一度「解体」することになりました。

 それが良いことなのかどうか・・。サッカーロジカル的なわたしの意見は、既に何度か述べたとおりです。とはいっても、そこは非定型のサッカーのこと、また次の監督が、あの「魂のファイター」ゼリコ・ペトロヴィッチだからネ、どうなるか興味が湧く。

 フォルカー・フィンケのサッカーイメージは、皆さんもご存じの通り、人とボールが動きつづけるアクティブな(自ら仕掛けつづける!?)コンビネーションサッカー。もちろん「これ」は、イビツァ・オシムのコンセプトにもつながる。要は、攻撃でも、守備でも、しっかりと(クレバーに)動きつづけることで、出来る限り多く、数的に優位な状況を作り出しつづける・・ということです。それがあるからこそ、優れたコンビネーションも生み出すことが出来る。

 もちろん「細部のやり方」は微妙なニュアンスで異なってくるだろうけれど、原則は変わらない。世界の潮流(メインストリーム)が目指すは、究極の組織サッカーなのですよ。もちろん、ゼリコ・ペトロヴィッチが原則的に志向するのも、バルセロナとスペイン代表を頂点とする世界的な趨勢である人とボールが動きつづける美しい組織サッカーに違いない・・だろうからね。

 その意味合いで、ゼリコ・ペトロヴィッチにも良い仕事を期待できるかもしれないという希望は出てくるよね。まあ・・もちろん、実際に見てみなければ分からないけれど・・。

 さて、ガンバとレッズが対峙した天皇杯準々決勝。

 シュート数などの数字的には、とても拮抗した(とてもハイレベルな)勝負マッチだったとするのがフェアな評価だろうけれど、わたしは、実際には、最終勝負プロセスの「量と質」で・・、換言すれば、勝負強さを決める決定的なファクターの量と質で、ガンバに微妙な一日の長があったとすることに躊躇しません。

 この微妙なニュアンスこそが、雌雄を分ける・・!?

 レッズは、立ち上がりから、強烈なプレッシングサッカーを仕掛け、ゲームを支配しまた。彼らの「やる気」は、とても高揚していたのです。ボール奪取の内容でも、次の攻撃での人とボールの動きにおいても・・。でも、結局それは、実際のシュートチャンスを作り出すまでの「ファウンデーション段階」まで・・でしたね。

 どうもレッズは、本当の意味の「危険なチャンス」を作り出せていない・・

 それに対して、全体としてはゲームを支配されているように見えたガンバだったけれど、遠藤保仁を中心に、質実剛健でとても危険な最終勝負を繰り出していくなど、着実にゲームの流れを掌握し返していくのですよ。実際に彼らは、ゴールの可能性では、レッズよりも明らかに格上のチャンスを作り出していた。

 2列目からスッとフリーで上がってきた遠藤保仁が放った決定的シュート・・橋本英郎が決定的スペースへ抜け出して放った決定的シュート・・安田理大が抜け出して放った爆発シュート・・などなど。そんなだったから、ガンバがゲームの流れを掌握していくのも自然な成り行きでした。それは、ガンバの底力を感じさせられたゲーム展開ではありました。

 ガンバの西野朗は、本当に優れた仕事をしている。今シーズンにしても、期待された補強(外国人)のほとんどが機能しないまま離脱していくという最悪の状況にもかかわらず、そこからチームをまとめ直し、最後は、しっかりと「ガンバらしいサッカー」で、着実な結果まで残してしまったんだからね。このレッズ戦でも、そんなガンバの底力を体感させられた。

 とはいっても、後半になって田中達也とセルヒオ・エスクデロが登場し、ちょっとレッズの「仕掛け内容」が好転の兆しを見せはじめた。

 要は、「個の勝負」の量と質がアップしたということだけれど、それでも、肝心なところでの、ボールがないところでの勝負の動きの「量と質」は上がっていかない。そう・・この、『勝負所での、ボールがないところでの動きの量と質』というポイントに、ガンバとレッズの間に明確に存在する「勝負強さ」の本質的なニュアンスが隠されている。

 もちろんガンバには、遠藤保仁という「強烈なイメージリーダー」がいる。だから、彼がボールを持ったら、周りの味方は、動く、動く。彼を追い越して橋本英郎が決定的スペースへ抜け出したり、ルーカスや、安田理大までもが抜け出していく。この「前後の仕掛けアクションがクロスオーバーするエネルギー」が、レッズの場合(もちろんガンバと比較してという意味合いだけれど)弱いと感じたのです。

 まあ・・結局は、守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを攻略するための武器の「量と質」で、ガンバがレッズを凌駕していた・・っちゅうことかもしれないね。

 ガンバは、個のドリブル突破だけじゃなく、そのプロセスでも、(ボールがないところでの動きが止まらないから!)しっかりと、スマートに、コンビネーション『も』使えていた。それに対してレッズは、個の勝負と組織コンビネーションが、うまくスムーズに重なり合わない・・シンクロしない・・。だから、ブツ切りの仕掛けというイメージの方が先行してしまう。フ〜〜・・

 全体としては、とてもエキサイティングで面白い勝負マッチだったけれど、わたしは、「フォルカー・フィンケ&Co.」の2年間における光と影が集約したようなゲームになったな〜・・なんていう感慨にもふけっていましたよ。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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