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2010_J2_・・ジェフが展開している筈の「ダイナミックサッカー」の一端は垣間見ることが出来た・・(ジェフ千葉vsアビスパ福岡,1-1)・・(2010年5月9日、日曜日)

「いや〜〜・・実は、コーチから、私が記者会見でしゃべりすぎると言われているのですよ・・あまり戦術的なことを大っぴらにし過ぎたら、次の試合では、より効果的に対策を練られてしまいますからネ・・とはいっても・・」

 記者会見で、ジェフ江尻篤彦監督が、例によって誠実に、とことん誠実に対応してくれました。わたしが投げた質問の骨子は、「江尻監督が冒頭のコメントで使った、賢くプレーするということの意味合いは?」というものでした。

 厳しい日本の夏という、チーム戦術的に、とても重要なファクターが控えているこのタイミングだからネ、「日本の夏は、本当に厳しいじゃないですか〜〜・・」なんて前振りをしてから質問の骨子に入った次第。それに対して江尻監督は、慎重に言葉を選びながら、こんなニュアンスのことを語ってくれた。

 ・・効果的に省エネプレーを展開するのは難しい・・その意味合いも含め、積極的にプレスを仕掛けていく(ボールを奪いにいく)ところと、そうではないところの使い分けだ大事だという表現がよく使われるんですよ・・でも、我々の場合は、その逆なんですよ・・疲れているときほど、前から奪いにいくというプレー姿勢を徹底しようとするのです・・もちろん、効果的に「前からいく」ためには、周りとの連動性が求められる・・でも今日の試合では、10番(工藤浩平)が調子を落としたゲームだった・・我々のチーム(チーム戦術)では、何といっても7番(佐藤勇人)と10番(工藤浩平)がキープレイヤーですからね・・

 このコメントには、ちょっと多くの要素が入りすぎてしまっていたね。

 まず、江尻監督率いるジェフユナイテッド千葉は、プレスを仕掛けていくところと抑えるところを上手く使い分けるのではなく、逆に、(蒸し暑さなどで)疲れていればいるほど、前から積極的にボールを奪いにいく積極プレーを要求する・・というクダリ。

 わたしは、心のなかで「オ〜〜・・」と感嘆していた。要は、「行くか」「行かないか」を選手たち自身が考え、判断して使い分けるとなると、かならず彼らは、「楽な方」へと舵を切ってしまうのが常だということです。

 発展していくため(優れたサッカーを展開するため)には、リスクへもチャレンジしていかなければならない・・それこそが、サッカーにおける本物の自由を得るための最低の「義務」なのだ・・

 そんなフレーズがよく使われる。でも、そのフレーズに、ひとたび、「でも・・蛮勇はダメよ・・」なんていう但し書きが付加されたらどうなるか。その次の瞬間から、(特に日本では・・!?)だれも、積極的にリスクへチャレンジしていかなくなるでしょ!? 違いますか? だからこそ、とことん・・限界まで要求しつづけるという(心理的な)マネージメント姿勢を貫いていかなければならないのですよ。

 逆に、だからこそ、自分たち自身が考えつづけ、工夫を凝らすことで、本当の意味で「賢くプレー」できるようになるということです。

 そりゃ、そうだ。チーム戦術的に「やらなければならないこと」が唯一でなければ、チーム全体が一つのユニットととして効果的に工夫しつづけることで(賢くプレーすることで)、その目標(チーム戦術的目標イメージ)をとことん突き詰められるはずがない。プレーすべき戦術ベクトルの方向性に選択肢が用意されている場合、そりゃ、チームが一つのユニットとして機能できなくなるのも当然だよ。そういうことだよネ・・江尻さん・・!?

 また、江尻さんの発言で、その「主体的&クリエイティブな連動性」という意味合いで、チームのコアとして機能すべきなのが佐藤勇人と工藤浩平・・というクダリ。

 もちろん、このゲームで対戦したアビスパ福岡も、「そのこと」は重々承知しているでしょ。だから彼らは、そんなジェフの「エネルギー源」を効果的に抑制してしまうようなゲーム戦術を組んできたに違いない・・たぶん・・

 だから、ゲームの全体的な流れはジェフが掌握していたにしても、「勝負」という視点では、アビスパ福岡の方に「流れ」が向かっていたと言えないこともない。「勝てる試合だった・・勝ち点を失ったことは残念で仕方ない・・」。アビスパ福岡の篠田義之監督が、本当に悔しそうにそう語っていたのが、とても印象的でしたよ。

 たしかに、篠田監督の「感覚」にアグリーできる部分もある。彼らは、人数を掛けた堅牢な守備ブロックをベースに、具体的なゲーム戦術ポイントに力点を置いたボール奪取プロセスを前面に押し出してきていたと思う・・そして、そこから、ココゾッ!の蜂の一刺しカウンターやミドルシュートをブチかましていくといイメージでプレーしていた・・たぶん・・

 わたしは、後藤健生さんから、ジェフはとても良いサッカーをやるから一度見ておいた方がいいですよ・・と言われていた。だから、今日のゲームを、とても楽しみにしていた。でもフタを開けてみたら・・

 たしかに暑かったよね。また(江尻篤彦監督がチーム戦術を大っぴらにし過ぎたことで!?)アビスパ福岡の(ジェフに対抗する)ゲーム戦術が、とても効果的にツボにはまったというコトもあったのかもしれない。

 私は、攻守にわたる「ボールがないところでの」アクションの量と質を観察しているわけだけれど、その視点でも、ジェフが展開したプレーは、お世辞にも「良いサッカー」だったとは言えなかった。だから、ちょっと落胆していた。

 とはいっても、後半の25分すぎから、倉田秋に代わって太田圭輔が登場したことをキッカケにして(!?)はじまった、優れた組織的ダイナミックプレーには、後藤健生さんも感銘を受けた(はずの!?)魅力の一端を垣間見た感じはしたけれど・・

 興味深かったのは、そんなジェフの大攻勢の「隙間」を突くように、アビスパ福岡が、とても危険なカウンター気味の仕掛けを繰り出してきたことです。一つか二つ、ジェフにとって、とても危険なピンチシーンがあった。フムフム・・

 まあ、とはいっても、ジェフユナイテッド千葉が、江尻篤彦監督の下、明確な発展ベクトル上をひた走っていることだけは確かな事実だと思いますよ。また、ジェフを取り巻く「サッカー文化」も、しっかりと根を張っていると感じる。とにかく、ジェフのサポーターの方たちは、本当にサッカーをよく知っているし、サッカーを心から愉しんでいるよね。

 フクアリ・・。サポーターの方たちも含め、とても観戦しやすく心地よいスタジアムだよね。これからも機会を作って彼らのゲームを観にいこう。

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 




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