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- 2010_日本代表・・帰国し、ビデオを見ながら色々なことを考えていた・・(2010年10月14日、木曜日)
- 「オ〜〜ッ!!」
韓国対日本のフレンドリーマッチが行われたソウル・ワールドカップスタジアムの記者席でグラウンドの現象に目を凝らしていたとき、思わず、そんな感嘆の声が口をついた。
遠藤保仁が、韓国の左サイドを駆け上がりタテパスを「受けようとしていた」韓国選手との間合いを、リラックスした雰囲気で、スッ、スッと詰めていったときのことだ。いつもの、忠実なチェイス&チェック。その韓国選手も、もちろん遠藤ヤットがマークしてくることをイメージしている。瞬間的には、互いの視線が、バチッとぶつかり合っていたかもしれない。
ただ、(例によって!?)遠藤保仁がかもし出しているチェイス&チェックの雰囲気(勢い)は、リラックスそのもの。まあ、様子見ってな雰囲気が放散されている。でも・・
そして、そんな遠藤ヤットのリラックスした雰囲気に安心した(!?)韓国選手は、余裕の雰囲気でタテパスをトラップしようと視線を落とすのだ。
ただ次の瞬間、ヤットが爆発した。そのとき、ヤットの走るスピードと勢い、そして闘うスピリチュアルエネルギー(意志のチカラ)が、瞬間的に、まさに何倍にも増幅したと感じられた。
そして最後は、見事なアタックからボールを奪い返していた。もちろんファールなし。それは、スムーズに、そしてスマートに、それでも肝心なところではパワフルに、いつもの遠藤ヤットによるクレバーなボール奪取アタックが成功した瞬間だった。
この試合でも、遠藤保仁だけではなく、そんな効果的でクレバーな日本のボール奪取勝負アプローチが、至る処で観察された。そして私は、そんな「細かなところ」にも、ザッケローニのプロコーチとしてのウデを見ていた。
もちろん選手たち自身も、そんな「小さな勝負プレーメカニズム」を熟知しているはず。でも、特にディフェンスは、味方との効果的な協力なしにはうまく機能しないから、互いのコンビネーションイメージを「上手くシンクロ」させるという部分でも、コーチのウデが垣間見えるものなのだ。
ザッケローニは、韓国戦の前、アルゼンチン戦での「細かなミス」について、ビデオを見ながら様々なポイントを指摘したと聞く。
・・多分そこでのザッケローニは、選手に対するアプローチで、深く「入り込み過ぎ」ないように(説明のし過ぎで選手のアタマを混乱させないように)気を遣っていたに違いない・・でも、もちろん肝心のポイントだけは、しっかりと、そして簡単に表現することで、大事なポイントが選手たちの記憶にしっかりと刻み込まれるように刺激する・・そして、それがあったからこそ、選手間の「意思の疎通」もスムーズになり、組織的なディフェンスも、より効果的に機能するようになっていった!?・・
この、「説明のし過ぎに留意する・・」というのが、現場のコーチングスタッフにとって重要なポイントになる。
サッカーの現象では、攻める方と守る方の意志と行動(イメージと実際のアクション)が、とても複雑に絡み合うわけだけれど、そのなかで、もっとも重要なポイントを、簡単な言葉をつかって、タイムリーに表現できるかどうか・・。優れた哲学者と同じように、優れたコーチもまた、複雑なサッカー現象を、簡単な言葉をつかって的確に表現できる(目的に応じて、指摘するポイント・見方や、指摘の仕方なども柔軟に変化させられる!?)ものなのである。
もちろん、この一週間におけるザッケローニの仕事が、まさに「そんな優れたマネージメント」だったなんてことを言おうとしているわけじゃない。何せ、その場に居合わせたワケじゃないから、そんなことは分からネ〜よ。でもサ、アルゼンチン戦や韓国戦でのプレー内容に、「そのこと」を期待しても良さそうな現象が明確に見えていたこともまた、とても大事な事実だったと思うわけなのです。ボール奪取プロセスにしても、味方同士のプレーイメージが効果的に「シンクロ」することで相手守備ブロックのウラスペースを攻略していく組織的な攻めにしても・・ネ。だからこそ、良い結果「も」もたらされた・・。
ちょっとハナシが前後してしまうけれど、冒頭の遠藤ヤットのボール奪取勝負シーンでも、味方との効果的なイメージシンクロ・コンビネーションが見られた。そのシーンでは、後方から、今野泰幸も寄ってきていたのですよ。だから韓国選手は、ボールを見るだけではなく、今野の動きにも気を遣っていたはず。そして、フッと、遠藤ヤットに対する意識が「分散」した次の瞬間に、ヤットが爆発したというわけです。
ところで、戦術的な標語。例えば、トライアングル・・
何か、チマタでは、守備での互いのポジショニングバランスとしての「トライアングル」がどうのこうのといったディスカッションがされているそうな。ザッケローニになって、「それ」がうまく機能していると声高に主張する人たちがいるとのこと。
でもサ、ホントにザッケローニが、「トライアングルを作れっ!!」なんて言っていると思いますか??
選手は、トライアングルを作るためにプレーしているわけじゃないんだゼ。あくまでも、相手からボールを奪い返すために守備に入り、相手守備ブロックの背後の(決定的)スペースを攻略するために、ボール絡みだけじゃなく、ボールがないところでも(互いのイメージがシンクロすることで初めて効果が発揮される)フリーランニングを実行しているのですよ。
今まで何度も書いているように、「トライアングル」は、攻守にわたる組織(コンビネーション)プレーがうまく機能しているときに、『結果として』グラウンド上に出現しつづけるモノなんだよ。
もちろん、トライアングルをより強く意識させることには、ある程度の効果は期待できるでしょ。でもサ、それを意識し(させ)「過ぎた」ときの選手たちの動きは、ステレオタイプになっちゃうし、よりギコチないものになっちゃうもんなんだよ。そりゃ、そうだ。何せ、攻守の『目的』は、それとは全く違うんだから。
要は、プレーイメージを描写するときの絶対的な「オブジェクト(目的)」は、相手からボールを奪い返すことであるべきだし、攻撃ではシュートを打つこと(スペースを攻略すること)であるべきなわけです。選手は、その目的に向かって、強烈な意志を放散しなければならないのですよ。そして、それらの意志がうまく重なり合えば、自然と、トライアングルも出来てくる・・っちゅうわけです。
ちょっとハナシが広がり過ぎちゃった。
とにかく、ザッケローニの根源的なコンセプトワードが「バランス感覚」にあることは、これまで何度も指摘してきたとおりですが、彼のやり方が、これまでと全く違う・・という指摘には、まったくアグリー出来ないよね。
・・ポジショニング・バランス・オリエンテッドな組織守備から、状況とタイミングを見計らってマンマークへ移行する(チェイス&チェックに入っていく)・・そして、味方のマンマークに合わせ、周りが(横や前方の選手がスッと移動することで空いたスペースを埋めるなど・・)互いのポジショニング・バランスの修正をやりつづける・・そして、そんなプロセスで、相手のボールの動きが止まり気味なったら(そのプロセスを予想して!!)協力プレスを仕掛けていく・・そしてタイミングよくボールを奪い返し、積極的に押し上げることで人数を掛け(ショート)カウンター気味に素早く(スピーディーに)仕掛けていく・・などなど・・
そんなチーム戦術的な総体イメージは、岡田武史の頃と何ら変わったところはないと思っています。ただ一つだけ。ワールドカップで「勝てたこと」による、自信と確信が進化し、深化した。「それ」が、グラウンドの現象に、ものすごくポジティブな影響を与えている・・と思うわけです。
韓国から帰国し、ソウルでのエキサイティングマッチのビデオを観ながら、「だからこそ・・!!」の期待が高まっていった。そう、その自信と確信エネルギーを着実に積み重ねることで、世界トップとの間にまだまだ厳然と横たわる「最後の僅差」を乗り越えていくことに『チャレンジ』していく(世界トップを知り、選手もそのことを明確に意識している!?)ザッケローニの「ウデ」に対する期待が・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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