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2010_ナビスコ準々決勝・・色々とテーマをピックアップしましたよ・・(FCTvsSP, 1-1)・・(2010年9月1日、水曜日)

フム〜〜・・「やっぱり」勝ち切れなかったか・・。

 ゲーム終盤にFC東京が魅せつづけた波状攻撃を観ながら、期待は高まっていったけれど、結局はドローのままタイムアップのホイッスルを聞くことになった。ちょっとガッカリした。全体的な内容では、明らかに東京のモノだったから・・。

 「中二日の厳しいスケジュールのなか、選手は、90分間、よく闘ってくれたと思う・・たしかに良いサッカーではなかったかもしれないが、この厳しい気候条件のなかで、それもハードなスケジュールのなかで、よく最後まで立派に闘ってくれた・・選手を誇りに思う・・」

 ゲーム後の、エスパルス長谷川健太監督の弁です。とても冷静で毅然とした、インテリジェンスあふれるコメントでした。プロコーチとして進化しつづける長谷川健太監督の発言を、全体的にまとめた「行間」には、こんなニュアンスも含まれていたに違いない・・!?

 「まあ・・こんなゲームもあるさ・・アンタ方(わたしも含めたジャーナリストの方々)が満足するような良いサッカーなんて、常に出来るわけネ〜〜だろ!・・何せ、この気候条件とハードスケジュールなんだからね・・でもサ、コンディションさえ良くなければ、またいつもの、アグレッシブな守備をベースにした攻撃サッカーを魅せられると思うよ・・」

 アグレッシブな守備・・。そう・・それこそが、彼らのサッカーの絶対的なベースなんですよ。それがあるからこそ、リーグトップの「ゴール数」を誇れるっちゅうわけです。

 まあ、それ以外にも、ゴール数ランキングでトップをいっている背景として、小野伸二をしっかりとチーム戦術に「組み込めた」ことも大きいと思いますよ。エスパルスのチャンスの多くが、彼が絡むコンビネーションや「タメ」から作り出されているのは確かな事実だから。彼がボールを持って前を向いたり、彼を中心にコンビネーションがスタートした次の瞬間に、周りのチームメイトたちが、脇目も振らずに決定的スペースへ飛び出していく・・っちゅうシーンを何度目撃したことか。

 もちろん、汗かき守備はやらないし、攻撃でも、自分が主役になれないような「ボールがないところでのクリエイティブなムダ走り」もほとんどない。それでも、チームメイトは、小野伸二を頼りにしている。

 そう、エスパルスの仕掛けイメージのクリエイター(創造性リーダー)は小野伸二であり、そのことでチーム内に「絶対的な合意」と、勝負プロセスでの「イメージシンクロ」が浸透しているということです。仕掛け(そのプロセス)イメージの徹底。それが、彼らの得点力のバックボーンにあることは疑いのない事実です。

 もちろん、世界を相手にしなければならない代表チームで、小野伸二を中心に据えるような「チーム戦術」が機能するとは思えないけれど、ドメスティックな国内リーグでは、とてもうまく機能している。長谷川健太監督の手腕に拍手です。

 ということで、(疲労回復に努めている小野伸二を欠いた)この試合でのエスパルスの攻撃には、「落ち着き」と「爆発」という攻撃の変化(メリハリ)が明確には感じられなかった。だから仕掛けプロセスが一本調子のリズムになってしまい、チャンスメイクもままならなかった。

 後半22分にエスパルス岡崎慎司が挙げた先制ゴールにしても、マークしていた東京の選手(たぶん今野泰幸!?)が足を滑らせなければ、まあ簡単にはゴールに至らなかったと思う。そのシーンで、エスパルスが、FC東京ディフェンスの裏をかいたわけではなかったからね。

 でも、その失点がFC東京に火を付けた。FC東京の城福浩監督が動いたのです。まず、動きの鈍ったリカルジーニョに代えて、突貫小僧の重松健太郎を投入する。それで、すぐに攻撃陣の動きが活性化した。

 そして次に、大竹洋平の代わりに徳永悠平を入れて守備的ハーフの位置に就かせる。同時に、今野泰幸を攻撃的ハーフまで上げ、森重真人をセンターバックへ下げる。これで、中盤の「動き」が格段にアップテンポになっていくのです。

 重松健太郎や鈴木達也が、はたまた今野泰幸が、どんどんとサイドスペースへ飛び出していく・・そこへ、タイミングよく、タテのロングパスやサイドチェンジパスが飛ぶ。そして、危険なクロス・・。

 何度、FC東京が決定的チャンスにつながる「仕掛けの流れ」を演出したことか。もちろん、東京が人数をかけて仕掛けていったことで、何度か、エスパルスもカウンターチャンスを作り出す。オープンな展開。最後は、とてもエキサイティングで魅力的な勝負マッチになった。

 でもサ・・冒頭で使った「やっぱり」という副詞で表現したように、どうも、FC東京の最終勝負に「勝者のメンタリティー」が明確に感じられなかったことも確かだったネ。そう・・これまでのコラムで何度も展開してきた「決定力」と「勝者メンタリティー」という、ホンモノの心理ゲームであるサッカーにおける「本質的なディベート・テーマ」。

 要は、あの時間帯で展開された、両チームのギリギリのせめぎ合いでは、エスパルス守備が放散していた「意志エネルギー」の方が強いと感じられたということです。

 それは、ギリギリのところで足を伸ばし切ったり、最終勝負ゾーンの「間隙」へ突っ込んでいったりするような、とても小さなトコロで展開されるギリギリの勝負ドラマのことです。まあ・・言葉で表現するのは難しいけれどね。

 まあ、それに関するディスカッションは、また次の機会に譲るとして、最後に、FC東京、森重真人についても簡単にコメントしたい筆者です。

 たしかに、まだまだ、全体的な運動量だけじゃなく、攻守にわたる『汗かきプレー』の量と質にも不満です。それは、正直な印象です。でも、徐々にではあるけれど、全体的に、守備的ハーフとしての彼のプレー内容が向上してきていることも確かな事実だと思う。

 どうなんだろうね・・。森重真人は、本当に中盤の底でプレーしたいと思っているんだろうか!? そうだとしたら、彼の「サボリ癖」というか、基本的なプレーイメージを、根本から作り直さなければならないと思いますよ。もちろん、米本拓司のようなプレーを求めても難しいだろうけれど、守備的ハーフの二人が、同じような守備プレーイメージだとしたら、うまく機能しないでしょう・・

 梶山陽平と森重真人が、二人とも、インターセプト狙いの守備を基調にするようでは、最終ラインの負担が大きくなり過ぎると思うわけです。どちらかが、しっかりとチェイス&チェックをやり、どちらかがカバーリングやインターセプト機能を受け持つとかね(まあ、この試合では、ある程度は、交替で、両機能をブンタンしていたように感じたけれど・・)。

 とにかく、守備的ハーフコンビが、両方とも「クリエイティブなリンクマン」タイプというのでは、うまく「選手タイプのバランス」も取れないだろうと思うわけです。

 もちろん、このまま、森重と梶山の「ダブル・リンクマン」が、攻守にわたって機能しちゃうかもしれないよね。そうしたら脱帽なのですが、さて・・

 もう一つ、森重真人。彼のキープ力、そして抜群のヘディングの強さを考えれば・・あっと、彼は(本気で走れば!)ものすごく俊足でもあるよね・・そんな森重真人だから、彼のことをポストプレイヤータイプのセンターフォワード(ワントップ)として使うっちゅう手もあると思う筆者なのです。相手もビックリするだろうし・・ネ。

 後方からの、ビシッというタテパスを、スパッと止め、背後から迫る「複数」の相手プレッシャーをものともせずにキープし(しっかりとタメを演出し)、周りのチームメイトの上がりを余裕をもって待てる・・なんてネ。そんな森重真人がいるからこそ、大黒将志の「衛星フリーランニング」の実効レベルも何倍にも膨れ上がる・・!?

 あっ・・そうか、FC東京には平山相太もいたっけ・・。まあ・・単なるアイデアですよ、単なる・・。でもサ、一度くらいは見てみたいよね、ワントップの森重真人。一度くらいは・・。そうしたら、周りがビックリするような、森重の新しい側面が発見されたりして。あははっ・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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