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2010_浦和レッズという学習機会・・まだまだ最後の半歩を出せていない!・・(2010年11月15日、月曜日)

どうだろうネ〜〜、レッズ。

 前々節の山形戦から、ちょっとモティベーションダウンしてしまい、レッズについては、二試合つづけてテレビ観戦ということになってしまった。

 ちゃんとした(ロジカルな!?)サッカーはやっている・・でも、攻撃でも守備でも、粘り強いギリギリの闘う意志を迸(ほとばし)らせるような「ダイナミズム」が足りない・・なんていうのが全体的な印象だろうか。このコラムは、理論ではなく、感覚的な要素を前面に押し出して書いています。何せ、粘りのダイナミズム・・なんていう表現を使っているんだからね。

 守備の目的は、相手からボールを奪い返すこと。それも、より高い位置でアグレッシブな組織ディフェンスを展開し、ショートカウンター的な状況も含め、「そのまま」相手守備ブロックが整う前に攻め切ってしまえるくらいのダイナミックなボール奪取がいい。それが、現代サッカーでは、もっとも成功の確率が高い「プレーイメージ」だよね。

 そこでレッズの守備。たしかに、全体としては着実に機能していると思う。でも、あれだけのメンツを揃えているのだから、もっともっとアグレッシブに(そしてクレバーに)リスクにチャレンジしてもいいと思う。もちろん、もっと良いカタチで相手からボールを奪い返し、効果的に「次の攻撃をスタートできる」ためにネ。

 たしかに守備は、基本的に「受け身」ではあります。でも、やり方によっては、自分たちのプレーイメージ(ボール奪取イメージ)を主体に、相手の攻撃をコントロールしてしまう(相手の仕掛けイメージを、矮小なモノへと抑制してしまう)ことだって可能なのですよ。

 要は、相手の攻めを、自分たちがイメージするカタチへと「追い込んでいく」ということです。そのためにこそ、爆発的な「チェイス&チェック」を絶対的な基盤に、次、その次のボール奪取アクションをシンクロさせていくというイメージが大事になる。

 この視点で、いまのレッズ守備が、「より」パッシブな色彩の方が強い(相手の攻撃に振り回される傾向の方が目立つ)と感じられるのです。もちろん、どんなチームでも、時間帯や状況によって、この「主体ディフェンス」と「受け身ディフェンス」のバランス状態は揺れ動くわけだけれど、でも「収支決算」としては、やっぱり、主体性ディフェンス(積極ボール奪取トライ)のウエイトの方が高くなってもらいたい・・と思うわけです。

 次に攻撃。ここでもレッズは、彼らが志向するコンビネーションサッカーを「ある程度」は具現化できている。それでも(ここでも!)ギリギリの闘う意志が、まだまだだと感じる。それが、最後の最後の「ボールタッチや決定的フリーランニング」で集中を欠いてしまうという現象の背景にあると思えてならない。

 我々コーチは、「最後の半歩が出ない・・」なんていう表現をすることがあります。要は、ギリギリの競り合いシチュエーションで、全力のフィジカル&サイコロジカル・パワーで相手に勝利し、そして、攻撃の目的であるシュートチャンスを(それも、より可能性の高いチャンスを)演出できているかどうかという視点です。

 もちろん勇気をもって積極的にシュートにトライするという姿勢だけじゃなく、シュートシーンで、とにかく全力でクリティカルポイント(最終勝負スポット)になるかもしれないゾーンへ突っ込んでいくとか、勇気をもってこぼれ球に足を伸ばしていくとかいった、勝負所での「ギリギリの闘う意志の爆発・・」が足りないということかもしれない。

 完全にフリーでクロスボールを送り込めるシーンで、クロスボールをミスってしまったり、センターゾーンで待ち構える「最終シューター」の動きに精彩を欠いてしまう(相手マーカーに、動きを完全に掌握されてしまう!)・・などなど、そんなシーンを見るたびに、これじゃ、リードを確固たるものにするための追加ゴールを奪えないだけじゃなく、相手のワンチャンスに(集中を欠いて!)失点して引き分けたり負けたりするのもうなずけるよな・・そう、山形戦、サンフレッチェ戦、そして昨日のサンガ戦のようにネ・・

 とにかく、攻撃でも不満の方が先行するのですよ。まだまだ「最後の半歩」が出ていない(強烈な意志が爆発するようなダイナミックプレーが見えてこない!)と思うわけです。

 勝者のメンタリティー・・。このところ、よく話題にしていたテーマですが、それを持ち出した背景には、あまりにも、サッカー内容からすれば信じられないような惜しい引き分けや敗戦がつづいたことがあった。

 チャンスの量と質を見れば、明らかにレッズが優位・・でも、結果は攻め切れず、逆にワンチャンスをモノにされてしまう・・。とにかく、レッズ選手たちは(監督さんも含めて!?)、もっともっと結果にこだわらなければならないということです。

 昔、バイエルン・ミュンヘンを率いた、ドイツ伝説のスーパーコーチ、ウド・ラテック。彼の心理マネージメントは、極端なほどに、勝ちにこだわるモノだった。ゲームのドミナンス(支配傾向)とか、作り出したチャンスの量とか質などのサッカー内容には関係なく(そのほとんどでバイエルンが明確に優っているのが常!!)、負けたら、次の一週間、ウドは、ものすごく機嫌が悪かった。

 選手たちは、「アッ・・監督さん、まだ怒ってる・・」と、次の一週間ずっと体感しつづけるわけです。もちろん、選手や他のスタッフにとって理不尽なことも多い。要は、サッカーの内容では相手を凌駕したのに、偶発的な出来事がつづいて結果を出すことが出来なかったのに・・ということです。サッカーでは、結果は神のみぞ知る・・という偶発ファクターが支配している部分が大きいのも現実だしね。

 でも、ウド・ラテックは許さない。負けたことを許さない。そして、次のゲームまでの一週間を通して、選手たちが結果を出せなかったという現実をビンビンに意識させつづけるのですよ。

 イビツァ・オシムにしても、勝負へのこだわりは尋常じゃなかった。そして、それこそが・・とことん勝負にこだわる指揮官の姿勢こそが、勝者のメンタリティーと呼ばれる、つかみ処のない「心理要素」を形作る、もっとも重要なファクターの一つなのかもしれない。

 でもサ、まだまだシーズンは終わっちゃいない。リーグでは、まだ四ゲームも残っているし、それに天皇杯もある。とにかく、個人事業主である彼らには、職人として自分たちが納得するプレーを望みたい・・と思っているのは私だけではないはずです。

 水曜日の天皇杯(ジュビロ戦)を楽しみにしています。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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