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2011_アジアカップ・・彼らが展開したエキサイティングな仕掛け合いは、まさに世界レベルだった・・(韓国vsオーストラリア、1-1)・・(2011年1月15日、土曜日)

とても、とてもハイレベルな勝負マッチだった。局面での、攻守にわたる高質なせめぎ合いの積み重ね。ちょっと感動した。

 それは、まさに「世界」レベル。彼らは、同点になった後も、勝つことに対するこだわりを捨てずに、最高の意志パワーをブチかましながら仕掛け合った。意地のせめぎ合い!? そこには、同点だから仕切り直して落ち着こう・・なんていう雰囲気は、露(つゆ)ほども感じられなかった。やはり、韓国とオーストラリアは、アジアでは「抜けて」いる。予選リーグの段階で、そんな両巨頭が直接ぶつかり合ってしまう・・。グループの組み分けシステムに難あり・・!?

 そんな両チームだったけれど、それぞれの仕掛け(攻撃)プロセスの内容(仕掛けイメージ)には、微妙な違いがあった。ここでは、両チームの攻めにスポットライトを当てることにしまっせ。

 でもサ、やっぱり、まず両チームのディフェンスを簡単に振り返らなきゃ、ハナシがはじまらないよな。何せ、ディフェンスこそすべてのスタートラインなんだからネ。

 両チームが魅せつづけた、意志としての「守備意識の高さ」、忠実でダイナミックなチェイス&チェックと、それに連動する組織ディフェンスの戦術レベルなど、基本的なディフェンス能力は同じレベルにあるよね。

 また、たしかに、最終的なボール奪取アタックへ至るプロセスには、個人の能力とイメージ、また(秘めたる自信のタイプや意志による!?)アタックへの入り方など、微妙な「違い」はあったわけだけれど、両チームともに、全体として(相手の能力を基盤にしたゲーム戦術として!?)過度のボール狩り(集中ブレス)はやり過ぎないという点では共通していた。

 もちろんそれは、「やり過ぎ」たら、その仕掛けエネルギーを逆手に取られ、ウラや逆サイドに空いたスペースを突かれてしまうからね。

 要は、協力プレスを仕掛けていく場合でも、複数によるプレッシングの輪を狭めすぎるような(別ゾーンにスペースを残してしまうような)無理をせず、常に、次や、その次の対処をイメージしながら、クレバーに、互いのポジショニングバランスと、チェイス&チェックとカバーリング、インターセプトや、ボールを奪い返す直前に(ボールを奪い返せると確信した直後に!)仕掛けるカウンター(次の攻撃スタート)の初期アクションなど、その時点でのターゲットタスクを、効果的に「分担したり交換したり」するのですよ。

 さて、ということで両チームが繰り出す攻撃のコンテンツ。

 韓国は、あくまでも、素早く広い組織パス(コンビネーション)を主体に仕掛けていく。それに対しオーストラリアは、緻密なパスコンビネーションを使うというのではなく(もちろん人とボールはしっかりと動くよ!)、どちらかといったら、シンプルにボールを動かすなかで、最後は、サイドからのクロスボールやミドルシュート、はたまたポストプレーから落とされたボールを狙うといった、とてもロジカルでパワフルな仕掛けを展開する。

 全体的な運動量は、やはり韓国に軍配が上がる。彼らは、日本と同様に、人とボールが動きつづけるなかで、攻守にわたって出来る限り多く「数的に優位な状況」を作り出そうとする。そして、それをベースに、素早いコンビネーションでスペースを突いていく。

 韓国の強者たちが最終の仕掛けプロセスに入ったときに展開する、まさに縦横無尽と呼べるほど活発なポジションチェンジは、本当に見所満載でっせ。その絶対的な「イメージ・ベース」は、もちろん、パス&ムーブ。そして、そんなコンビネーションの「動き」を積み重ねていくなかで、パク・チソンとかク・ジャチョル、イ・チョンヨンや右サイドバックのチャ・ドゥリといった猛者連中が、危険なドリブル勝負チャレンジを仕掛けていく。

 韓国の攻めは、本当に変化に富んでいる。だから、「あの」強力なオーストラリア守備ブロックが、何度もウラを突かれ、決定的スペースを攻略されちゃう。まあ、ホントにスゴイね。

 そんな韓国に対して、オーストラリアも、どちらかといったら「フィジカル系」の武器を、とても有効に活用して韓国ディフェンスに挑んでいく。その流れの中心には、もちろんキューウェルやケーヒルがいる。また右サイドからは、たまにエマートンが、爆発的なドリブルで突っ掛けていったりする。

 フィジカル系の武器・・といったけれど、そこには、セットプレーの効果的な活用で、韓国よりもやや有利という意味合いも含まれている。実際オーストラリアが同点ゴールを奪ったのも、コーナーキックの折り返しからだった。それも、飛び出してきた韓国GKの鼻先で、ジュディナクが飛ばしたヘディングシュート。

 韓国GKチョン・ソンリョンは、とても優秀なプレイヤーだけれど、そのシーンは大失敗。まあ、彼のことだから、そんな失敗を通して、またまた一皮剥けちゃうんだろうね。

 人は失敗からしか学べない(失敗は、次のステップアップの機会=そんなミスや失敗こそが、掛け替えのない学習機会という哲学バックボーン!!)・・だからこそ周りは、批判するだけではなく、失敗やミスを冒した者に対する期待を膨らませる・・本人も、そのメカニズムが分かっているからこそ、ビビることなく(失敗を恐れずに)より高い集中力で、リスキー勝負プレーにチャレンジしていく・・。そんなメカニズム(マイナス現象を活用する善循環メカニズム!)こそが、フットボールネーションの「文化的バックボーン」なのだ〜〜。

 あっと・・韓国対オーストラリア。もちろん両チームともに、(たしかに頻度はオーストラリアの方が多いにしても)前戦へのロングボールも活用する。ただ、その仕掛けツールとしてのロングボールに秘められた意味合いは、大きく異なる。韓国が、スペースを狙うのに対し、オーストラリアは、最前線プレイヤーをターゲットに、そこを「ポストに使う」というイメージなのです。

 ちょっと、深掘りしすぎかもしれないけれど、とにかく、韓国とオーストラリアが対峙した、スーパーエキサイティングな勝負マッチには、とても魅力的な分析&考察コンテンツが山盛りだったのです。

 あっと・・このゲームに対する全体的な評価だけれど、ボール奪取の量と質、シュートチャンスの量と質という、攻守の本当の目的をベースにした評価基準では、やはり、韓国に一日以上の長があったとせざるを得ないよね。この韓国代表チームは、まさに歴史上の最強チームかもしれない。

 また、もう一つの重要な視点がある。それは、韓国では、どんどんと若手のタレントが輩出されているのに対し(韓国での世代交代は、本当にスムーズに進んでいる!?)、オーストラリアの「世代交代の動き」は鈍重だというモノ。

 たしかに「この」オーストラリア代表は強いけれど、キューウェルやケーヒル、はたまたエマートンやクッリーナといった才能連中に代表されるジェネレーションが終わったら、ガクンッ!と低迷期に入ってしまう・・なんていう心配がアタマをよぎる。さて・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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