トピックス
- 2011_アジアカップ準決勝・・なんか、たくさん書いてしまった・・(日本vs韓国、2-2、日本のPK勝ち)・・(2011年1月25日、火曜日)
- またまたまた、今野泰幸のPKが決まった次の瞬間、お恥ずかしながら「フ〜〜〜〜ッ!」なんて、深〜い溜息が口をついていた。
ヨルダン戦ロスタイムの同点ゴール・・シリア戦、川島永嗣が退場になってからの勝ち越しゴール・・カタール戦、吉田麻也が退場になっただけじゃなく勝ち越しゴールまでブチ込まれてからの大逆転ドラマ・・そして韓国との死闘・・。いったい何て大会なんだ〜〜・・
とにかく、日本代表チームにとっても、ザッケローニにとっても、まだ決勝が残っているこの時点で既に、筆舌に尽くしがたいほど「大きく深い価値」が創造され、蓄積されたと思う。「それ」は歴史に刻み込まれ、将来の日本サッカーにとってのかけがえのない「伝統」として、大切な勝負の場面で(チームの自信と確信のバックボーンとして!)常に光り輝くに違いない。
今日は、ポイントだけを、ランダムに箇条書きでまとめます。
■まず、延長で日本がリードした後の(日本の)ディフェンス・・
・・あまりにも、最終ラインに選手が集まりすぎ・・もっとバイタルエリアでもチェイス&チェックを仕掛けていかないと、ジリ貧になる・・私は、「それじゃダメだ〜〜・・そんなことをやっていたらドーハの悲劇の二の舞になるゾ〜〜ッ!!」なんて叫んでいた・・そして実際に・・
・・要は、勝負パスを供給する韓国ボールホルダーに対する「抑え」が効かなくなっていたということ・・相手の攻撃は、最後はゴール前にくる・・だから、「そこ」に人数をかけて待ち構えていればいい・・その考え方は、基本的には間違いなのですよ・・
・・ディフェンスの人数が余ってしまった場合、マークやアタック、はたまたスペースケアーなどを安易にゆずり合ったりするなど、集中力もダウンする・・とにかく日本は、韓国中盤からの仕掛けアプローチを自由にやらせすぎていた・・これじゃ、余裕をもってゴール前にパスを供給され、簡単に最終勝負に持ち込まれてしまう・・その回数が多ければ、もちろん危険も増す・・とにかく、もっと「前から」韓国の仕掛けの流れを抑えなければならなかった・・
■次が、細貝萌の勝ち越しゴールシーン・・
・・細貝萌は、本田圭佑がシュートするのと同時に、最後方から「加速」してペナルティーエリアへ突っ込んでいった・・だからこそ、最初に「こぼれ球」に追い付き、シュートを決められた・・彼は、そんな忠実な汗かきアクションの大事さを本当によく理解している・・サンキュー、細貝〜〜っ・・
■韓国のフィジカル・・
・・日本より24時間も、リジェネレーション(フォーム再生)の時間が短かったにもかかわらず、最後まで、彼らの動きが目立ってダウンすることはなかった・・特に後半は、全体的な動き(守備や、ボールがないところでの動き)で日本を凌駕した・・これは、もう、意志のチカラとしか表現しようがない・・彼らの闘う意志の強固さに脱帽・・これは、日本が韓国チームから見習わなければならない最も重要なポイント・・
■日本ピンチの要因になったいくつかのポイント・・
・・まず、岩政大樹・・彼は、一対一の勝負に、とても弱かった・・スピードに自信がないから、マーキングやアプローチで、どうしても、迫りくる相手ドリブラーとの「間合い」を空けすぎてしまう・・韓国選手も、その「穴」をよく知っている・・だから、岩政大樹と一対一になったら、積極的に勝負ドリブルを仕掛けてくる・・そして、空き過ぎた「間合い」を利用して加速し、余裕をもってフェイントを仕掛けることで岩政大樹を振り回していた・・前半だけではなく後半も、決定的ピンチになるシーンがあった(うまく修正が効いていなかった!?)・・
・・次が、ヘディングの強い韓国選手に対するマーキングの「ミスキャスト」・・前半、背が高く、ヘディングが強いク・ヂャチョルに対して、身長で大きなハンディを抱える長友佑都がマークに入ったシーンがあった・・そして、とても危険なピンチに陥った・・その後、すぐに修正されたが、そこで失点していたら致命傷になってしまうところだった・・
・・フットボールネーションでは、ヘディングの強い選手のクレバーなポジショニングによって、そんなチャンスシーンを巧妙に作り出すことも、明確にゲーム戦術に取り入れられている・・
・・もう一つ・・チ・ドンウォンの優れたポストプレーや、例えばパク・チソンによる、2列目から決定的スペースへ抜け出していく爆発フリーランニング等をターゲットにした、タイミングのよい韓国のロングボール(アーリークロス)・・実際、それによって、韓国に先制ゴールを奪われた(パク・チソンへのファールでPKを取られた)・・
・・でも日本も、後半にはしっかりと修正していたけれど・・そこでは、選手たちのアイデアもあっただろうし、ザッケローニからの指示もあったはず・・フムフム・・
■全体的な組織プレーの質と「組織と個」のバランス・・
・・前半に作り出した両サイドのオーバーラップからの決定的チャンス(長友佑都クロスから岡崎慎司ヘディング、内田篤人クロスから本田圭佑ヘディング)など、人とボールの軽快な動きをベースにした洗練された組織サッカーという視点では、たしかに日本の方が上・・とはいっても、韓国の場合は、縦横無尽のポジションチェンジを基盤にした組織プレーと(勇気をもった)個のドリブル勝負が、より高質にバランスしているという見方もできる・・
・・韓国チームには、健全で強い「自己主張の文化」が底流にあると感じる・・それに対して日本チームでは、まだまだ個の勝負の「実効レベル」が韓国に追い付いていない・・リスクチャレンジのないところに、ホンモノの進化もない・・フムフム・・
■だからこそ、逆に目立った日本チームの個の勝負・・
・・まだまだリスクチャレンジ姿勢が足りない日本!?・・だからかもしれないが・・前半に前田遼一が魅せた、爆発的な勝負ドリブルシーンは、とても印象的だった・・もちろん、長友佑都が魅せつづけたオーバーラップからのドリブル勝負チャレンジ&危険なラストクロス「も」特筆モノだった・・
■岡崎慎司の攻守にわたる貢献・・
・・前半の決定的シーン・・長友佑都が、爆発オーバーラップからクロスを上げた・・それは、韓国ディフェンダーへ向かうクロスボールだった・・だから、その韓国選手の足が一瞬止まった・・岡崎慎司は、その瞬間を逃さなかった・・最後の瞬間、その韓国選手の背後から「青い影」が眼前をよぎっていった・・岡崎慎司が、その韓国選手の眼前の「決定的スポット」への飛び出してヘディングシュートをブチかましたのだ・・素晴らしい・・
・・それだけではなく、この試合でも、忠実に守備に入りつづけるだけじゃなく、攻撃でも、まさに忠実に、決定的スペースを狙いつづけていた・・直接シュートを打てる場面だけじゃなく、相手を引きつけることで味方にスペースを作り出したりする・・また、勇気をもって勝負にチャレンジし、何度か効果的なパスやクロスを送り込んだ・・
■そして、トリは、本田圭佑・・
・・香川真司と前田遼一が、パス&ムーブを組み合わせてタテ方向にボールを動かす・・香川真司から前田遼一へ・・そして再びボールが香川真司へ戻される・・そんなコンビネーションによって韓国ディフェンスが中央ゾーンへ引きつけられる・・そして、満を持した香川真司が、右サイドで全くフリーになっていた内田篤人へパスを回す・・
・・まったくフリーでボールを持った内田篤人・・最後は、逆サイドの「大外のポジション」から斜めに韓国ゴール前の決定的スポットへ「なだれ込む」ように走り込んできた本田圭佑へ(内田篤人と本田圭佑の確実なアイコンタクト!)のラストクロスをピタリと合わせた・・決定的なフリーヘディングシュート・・でも残念ながら・・
・・そんな決定的シーン以外でも、この日の本田圭佑は、攻守にわたって、とても効果的な(忠実な)プレーを披露した・・そんなプレーコンテンツに、明確に、彼のプレーイメージの、ポジティブな変化が感じられた・・
・・たしかにまだ、自分でボールを奪い返しにいくだけではなく、クレバーに(ダイナミック&忠実に!)プレッシャーを掛けることで味方にボールを奪わせるといった「守備のツボ」についてはまだまだ不満の方が先にくる・・とはいっても、攻守の本当の目的を達成しようとする忠実な汗かきプレーに対する「意志のポテンシャル」は明らかにアップしている・・
・・守備では、アリバイアクションではなく、より忠実に、そして気持ちを込めて汗かきプレーにも精進していた(ボール奪取プロセスに実効ある貢献をしていた)・・また攻撃でも、シンプルにボールを動かすだけではなく(パス&ムーブもよくなった!)ボールがないところでの動きも、より活性化していると感じた・・だからこそ、周りの味方も、より積極的に本田圭佑を捜してパスを回すようになったし、チームとしてのポジションチェンジも、より効果的に機能するようになった・・
・・極めつけが、前半36分に前田遼一が挙げた同点ゴールシーン・・
・・確かに、そこで長友佑都が魅せた、爆発オーバーラップ&スーパーな切り込みドリブル&クールなラストパスだけではなく、前田遼一の、フィーリングにあふれたダイレクトシュートも、感動的に素晴らしかった・・
・・でも、そのゴールが生まれるプロセスの最初の段階で、爆発オーバーラップを敢行した長友佑都が抜け出していく決定的スペースへ、まさに置くような「才能パス」を出したのは本田圭佑だった・・そのパスの前に魅せた、余裕の「タメの切り返し」は、見事の一言だった・・
・・そして最後が、PK・・
・・延長7分のPKシーンでは(冒頭に記したように細貝萌が、こぼれ球を決めたから事なきを得たモノの・・)完全に韓国GKにシュートを止められた・・にもかかわらず、PK戦では、最初のキッカーになり、そして今度は、ズバッと気持ちを込めてシュートを蹴り込んだ・・
・・あのシーンで、本田圭佑に「迷いや恐怖」が生じて失敗でもしていたら、「勝負の流れ」が韓国へ傾いていったかもしれない(スーパーセーブを連発した川島永嗣GK、スミマセン・・)・・
・・そんなギリギリの「心理戦」だったにもかかわらず、本田圭佑は、迷うことなく、ズバッと、パワフルなキャノンシュートをブチ込んだ・・そのとき、心の底から、彼に対する敬意がわき上がってくるのを感じた・・
・・彼には、この試合で魅せた、攻守にわたるグッドパフォーマンスを絶対的な評価基準として、これからも(自分に負けてサボったりせずに!!)世界トップを目指して精進して欲しい・・この大会は、本田圭佑にとっても、最高のブレイクスルー機会になるかもしれない・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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