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2011_アジアカップ・・三位決定戦・・最後の時間帯で韓国が魅せた「意志のサッカー」に、彼らの強さの本質を見た・・(韓国vsウズベキスタン、3-2)・・(2011年1月29日、土曜日)

さて、三位決定戦。

 韓国にとって、日程的な(体力的な)厳しさだけではなく、決勝と比べれば天と地ほどの「意志パワーの差」が現れてもおかしくない三位決定戦。またそこには、攻守にわたるチーム戦術的な支柱というだけではなく、絶対的な闘う意志のシンボルでもある「パク・チソン」がいない・・

 この勝負マッチでは、次の大会の予選が免除されるということだけではなく(その、勝つことの意義は韓国にとっても同じ!)、アジアでの存在感をアップさせようというモティベーションにあふれるウズベキスタンが、より「前から」くるのは当たり前の状況でした。

 それでも韓国は、最後の最後まで立派に闘い抜き、そして勝ち切った。特に、リードされたウズベキスタンが押し込んでいった最後の時間帯に魅せた韓国の闘いは、ものすごくインプレッシブだった。

 でも、まずは全体的なサッカーの内容から入りましょう。そこでは、攻守にわたる「組織的な動き」という視点で、韓国に一日以上の長があった。

 もちろん、その分析・評価の中心になるのは、人とボールの動き(コンビネーションの量と質=それこそが、個人勝負を有利に仕掛けいけるかどうかの絶対的ベース!)という視点。

 たしかにウズベキスタンもボールは動かすよ、でもサ、とにかく「足許パス」ばかりが目立つんだよ。要は、人がうまく動いていないということ。だから、ダイレクトパスを入れた効果的なコンビネーション(まあ、パス&ムーブの積み重ねとも言える・・)が少ない。それでは、スペースをうまく活用できないのも道理。そして最終勝負シーンでは、個のドリブル勝負ばかりが目立つ。

 このポイントについては、準決勝のオーストラリア戦レポートでも指摘したよね。

 スペース(相手守備ブロックの背後の決定的スペース!)を攻略するプロセスには2種類ある。一つは、ダイレクトパスとパス&ムーブを組み合わせるコンビネーション。もう一つは、突破ドリブル。もちろん実際には、その二つの組み合わせということになるけれど、だからこそ、その両方の「仕掛けコンテンツ」が、しっかりと出来ていないとダメだっちゅうことです。優れた「組織と個のバランス」・・

 そんなチーム戦術的なポイントで、韓国に一日以上の長があるというわけです。もちろん、その絶対的なベースは、強烈な意志(攻守にわたって自ら仕事を探しつづけようとする意志パワー)に支えられた優れた守備イメージ。

 韓国のディフェンスは、相変わらず素晴らしかった。まあ・・たしかに、全体的な動きの量と質に支えられたボール奪取の機能性は、これまでの勝負マッチよりは落ちていたけれど・・

 とにかく、全体的なサッカーの内容では、まさに順当という韓国の勝利でした。ということで、ここからコラムの骨子テーマに入っていくわけです。

 それは、「3-2」とリードして迎えた最後の15分間のゲーム展開・・。要は、日韓戦(日本が一点リードしていた)延長後半のゲーム展開との比較です。

 ・・そこでの日本代表は、後方に人が集まり「過ぎて」いた・・要は、後方に人が多すぎることで、韓国の中盤の組み立て(ゴール前へのボールの供給プロセス)に対する抑えがまったく効かなくなってしまったということ・・だから韓国に、いいように攻めまくられ、流れのなかで何度かスペースを攻略されてピンチに陥った・・たしかに同点ゴールは、セットプレーからだったけれど、そこでのゲーム展開は、いつ同点にされていもおかしくないというものだった・・

 ・・それに対し、この試合での韓国・・たしかに押しまくられていた・・でも実際には、ウズベキスタンが作り出した決定機は、まさに皆無だった・・

 ・・韓国は、体力的にボロボロながらも、しっかりと中盤での組織ディフェンスを維持し、決して、「受け身に下がって最終ラインを固める」なんていう消極プレー姿勢には落ち込まなかった・・だからこそ、ウズベキスタンが繰り出していこうとする最終勝負(スルーパスや突破ドリブル)に対しても、余裕をもって対処できていた・・

 ・・それだけではなく、韓国は、そんな、体力的にボロボロの状態だったにもかかわらず、徐々に「組織的」に押し上げてもいった・・それは感動的でさえあった・・そしてゲーム終了間際の時間帯には、スマートで効果的なディフェンス機能性をベースに(!) 全体的に押し上げてゲームを支配するというゲーム展開まで演出して魅せた・・

 ・・たしかに表面的には、韓国にとって「危ない」展開のように見えていたでしょ・・でも実際には、韓国選手たちは、「ここは絶対にやらせないっ!!」という、勝負のツボを心得ていた・・そして、決してウズベキスタンに、そのツボを突かせなかった・・

 ・・それは、まさに「強烈な意志の為せるワザ」・・彼らが、最後の最後まで魅せつづけた、攻守にわたって、自ら積極的に仕事を探しつづけようとする姿勢に乾杯!!・・

 ちょっと観戦モティベーションがダウンする三位決定戦にもかかわらず、わたしは、本当に素晴らしい学習機会を提供してもらったと、「日本サッカー発展の隠れたバックボーン」でもある(!?)韓国に感謝しきりでした。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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