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- 2011_アジアカップ・・ホンモノの勝負の場という、最高のブレイクスルー(発展)機会・・(日本vsシリア、2-1)・・(2011年1月14日、金曜日)
- フ〜〜、ホントにまいった・・
それが、見終わったときの正直な感想だったネ。でもサ、試合中には、「ヨ〜〜シッ!!」ってな、これまでにないくらいリキが入ったガッツポーズシーンは、少なくとも四回はあった。先制ゴール・・岡崎慎司が粘りの競り合いプレーで勝ち取ったPK・・勇気をもって正面に蹴った本田圭佑のPKシュート・・そして歓喜のタイムアップ・・
しかし、(川島永嗣が退場になったことで)一人足りなくなったとはいっても、2点目を奪ってリードしてからの日本代表のサッカーは、決して誉(ほ)められたモノじゃなかった。シリアに守備ブロックが崩され、少なくとも二本、決定的なシュートまで打たれてしまった。それが、GK西川周作の正面に飛んだことで事なきを得たけれど、こちらは、もちろん、フリーズッ!!
言いたかったのは、シリアとの地力の差を考えれば、落ち着いてボールを支配することでゲームの流れをコントロール出来てもおかしくなかったということ。でも実際には、そんな余裕の展開を演出できるような雰囲気じゃなかった(そのチカラが足りなかった!?)。
経験に裏打ちされた「試合をコントロールする巧さ」と、 絶対的なリーダーシップの不在というポイントも含め、心理・精神的な強さ(意志のチカラ)に明確な課題が見えていた!? まあ、そういうことなんだろうけれど、それは一朝一夕に克服できるテーマじゃないよな。
まあ、そんなマイナス現象もあったけれど、全体としては、ギリギリの勝負を勝ち切った体感が、日本代表を一つのチームとして強固にまとめ、ステップアップさせていくに違いないという確信を与えてくれた。南アワールドカップもそうだったけれど、ギリギリの勝負トーナメントこそが、最良の学習(本当の意味での発展)機会・・ということか。
ということで、この試合での最初のポイントは、ギリギリの勝負だからこそのホンモノの進化機会ということになるかな。もちろん、ザッケローニ監督にとっても、指揮官としてのイメージ構築という意味合いで、最高の機会になる可能性がある・・という視点もある。
もちろん、それ以外でも(ギリギリの勝負だったからこそ・・!?)とても興味深いポイントが山積みだった。
ということで次のポイント。それは、先制ゴールが秘める意味合い・・ってなことだろうか。皆さんもご覧になった通り、日本が先制ゴールを入れた直後から、ゲームの様相がガラリと変化していった。そう、日本代表が、本当の意味で、本来の実力の差に見合ったカタチでゲームを支配しはじめたのですよ。
それにしても、ゲーム立ち上がりからシリアがブチかましつづけた、強烈な意志の迸(ほとばし)りサッカーにはシャッポを脱いだ。その、素早くダイナミックで忠実な「連動プレッシング」は見事という他なかった。
もちろん、逆からみれば、そんな相手のプレッシングを上手く「かわせ」なかった日本代表の攻撃の課題が見え隠れしたものです。
そんなゲーム展開になったら、もちろん、相手よりもより多く動かなければ、スペースを活用することなど(相手の守備ブロックを振り回すことなど)できる相談じゃない。
もちろん、複数の相手ディフェンダーの視線と動きをフリーズさせてしまう、ディエゴ・マラドーナのような世紀の天才がいればハナシは別だけれど、日本代表の場合は、やはり、人の動きの量と質で相手を凌駕することで(効果的な組織サッカーを展開することで)、できる限り多く、数的に優位な状況を作り出すしかないのですよ。
立ち上がりの日本代表。たしかに、松井大輔や前田遼一も含めて、ヨルダン戦よりは動きは良くなった。また、数日前にアップしたコラム「日本と韓国の違い・・」で指摘した、「トップ下」なんていうバカげたイメージに固執することで、自らプレーイメージを矮小化してしまうような「愚」を繰り返すこともなかった(前戦の四人と二人の守備的ハーフ、そしてサイドバックが、より活発にポジションチェンジを繰り出すようになった!)。
それでも、シリアがブチかましてきた、「超」のつくダイナミックなプレッシング守備の勢いに呑み込まれてしまう時間帯がつづいていたことも確かな事実だったのです。
とはいってもサ、それは先制ゴールの直前まで待たなければならなかったけれど、徐々に日本代表が、しっかりと(素早く、広く!)ボールを動すことで(そのための基盤は、ボールがないところでの人の動き!!)シリア守備ブロックの視線と動きをフリーズさせてしまうようなシーンを演出できるようなっていったことも確かな事実だった。ゲームの中での発展!? まあ・・そうとも言える。
とても微妙な「流れ」だったけれど、先制ゴールが決まるまでは、シリアの「強烈なプレッシング守備」&「その後の直線的なタテへの仕掛け」と、日本代表の、スムーズで効果的な人とボールの動きを基盤にした組織的なスペース攻略アタック(高い連動性のコンビネーションサッカー)が、イニシアチブを奪い合っていたということか。
そんな「微妙な展開」のなかで、日本代表が、カウンターベースの先制ゴールを挙げたというわけです。
本田圭佑の見事なドリブル突破と折り返し・・香川真司の鋭いドリブル勝負とシュート・・こぼれ球を拾った松井大輔の、クレバーな「落とし」と相手ディフェンダーの「抑え」・・そして、長谷部誠の「ゴールへのスーパーパス」・・。それらすべての勝負プレーが、見事に連動した素晴らしいゴールではありました。
わたしは、その「連動性」が生み出された背景に、その数分前の(前述した)組織的な崩しが成功したことによるスペース攻略という「良いイメージ」があったと確信する次第です。
そして、そのゴールをキッカケに、日本代表が支配するという流れにゲームが変容していった。その背景として、たしかに、自信が回復したことで日本代表の組織サッカーが活性化したこともあったけれど、やはり、失点というネガティブな刺激によって、シリアの「意志のチカラ」が大きく減退したことを挙げるのが正解だろうね。そこからのシリア守備の「チェイシングの勢い」が大きく減退していったということです。
ホンモノの心理ゲーム(自由であるからこそ意志のボールゲーム!!)であるサッカーの面目躍如ってな展開になった・・!? まあ、そうとも言えるけれど、とにかく後半も、そんな「大枠のゲームの流れ」が変わることはありませんでした。
たしかに、後半の立ち上がりは、シリアが、もう一度エネルギッシュに仕掛けてきたけれど、それで日本のハイレベルな組織サッカーが揺らぐことはなかったのです。でも・・
このゲームを取り仕切ったイラン人レフェリーは上手かったよ。たしかにシリアの厳しい当たりを流してしまうシーンもあったけれど、全体的にはフェアだと思った。まあ・・ね、「あの」PKシーンと、川島永嗣の飛び込みに対するレッドカードについては微妙だったけれど(シリア選手が、川島の飛び込みを想定して、彼の手に引っ掛かるように激突スポットへ入ってきた!?)・・
ただ、そのことで(本当に、ギリギリまで追い詰められたことで!)日本代表がホンモノのブレイクスルー(発展)機会を得ることになるのだからサッカーは面白い。こんな、鳥肌が立つくらいの最高レベルの「サバイバル体感」は、そこが、ホンモノの勝負の場であるからこそ・・なのですよ。
ここまできたら(既に一回死んだんだから!?)、もう、とことん「その機会」を活用し尽くすしかネ〜じゃネ〜か!!
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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