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2011_ヨーロッパの日本人・・長谷部誠と長友佑都・・(2011年2月20日、日曜日)

まず、新任のピエール・リトバルスキーからも、またチームメイトたちからも絶大な信頼を寄せられているに違いない(!?)長谷部誠からいきましょうか。

 いいネ〜、長谷部誠。攻守にわたって素晴らしくハイレベルな安定パフォーマンスを魅せつづけている。そう、日本代表と同様に、ホンモノの縁の下の力持ち(リーダー)としてネ。

 ホンモノの縁の下の力持ち・・。彼の場合、汗かき専門の(味方のバックアップを専門にした・・味方に使われるだけの!?)アンカーというわけじゃなく、とてもクリエイティブ(創造的)でチャレンジャブルな「ホンモノのバランサー&ゲームメイカー」という表現がふさわしい。

 そのことは、「グラウンド上の現象」を観ていれば、よく分かる。チームメイトから信頼されているからこそボールが集まる。フムフム・・

 彼の場合、「バランシング&ゲームメイキング」の意味合いには、味方の才能を効果的に「引き出す」ってなニュアンスも含まれている。

 だから味方は、(自分が気持ちよいプレーができるから!?)ボールを奪い返したら、積極的に長谷部誠にパスを付ける。そして次のスペースへ走るのですよ。効果的にスペースへ走り込めれば、そこに長谷部誠から「リターンパス」が回されてくるという確信とともに・・ネ。

 言うまでもなく、長谷部誠が「組み立ての起点」として存在感を高みで安定させられている絶対的なバックボーンは、もちろん、効果的なディフェンスにあり。彼は、自分がボールを奪い返すだけじゃなく、「次」の味方にボールを「奪わせる」ための汗かきチェイス&チェックでも、とてもクレバーで忠実、そして効果的な仕事を魅せつづけるのです。

 長谷部誠のディフェンスでは、自身の忠実チェイス&チェックだけではなく、相手の「次のボールの動きを読む」という感覚も、どんどん研ぎ澄まされ、高揚していると感じる。

 味方のチェイス&チェックによって、相手のボールの動きが限定されたら、例外なく、次の(相手の)パスレシーバーへアプローチし、クレバーな間合いを取ることでパスを出させることで、効果的なインターセプト(相手のトラップに瞬間を狙った効果的アタック・・)を仕掛けていくのです。

 そして次の攻撃では、とても安定した「展開役」として、効果的な組み立てパスを供給するだけじゃなく、時にはチャンスメイカーとして、最前線への勝負パスを供給したりする。

 長谷部誠がボールを持ったら、彼にパスを回した味方が、そのままスペースへ押し上げてリターンパス(展開パス)を受けようとするだけじゃなく、最前線のチームメイトがスッと下がってパスを受けようとしたり、別の選手が、最前線の決定的スペースへ飛び出して決定的なタテパスを受けようとしたりと、周りの「動き」が活性化するのですよ。

 でも、そんな長谷部誠の活躍にしては(チームとして)結果が出ていない。いまのチームの順位は、「降格リーグ」に片足をかけてしまった・・っちゅうところまで落ち込んでいるのですよ。まあ、これ以上「悪くなる」ことはないという見方もできるわけだけれど・・。実質的なサッカーの内容からすれば、決して降格するようなチームじゃないからね。

 とにかく、ヴォルフスブルクでもリーダーシップを握りつつある長谷部誠の更なる進化と、新任のピエール・リトバルスキー監督の手腕に期待しましょう。

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 さて次は、二ゲームつづけて先発出場を果たした(日本時間の未明に行われたカリアリ戦ではフル出場!)長友佑都。

 良かったですよ〜。長谷部誠と同様に、彼もまた、攻守両面で、これからも実の詰まった着実な進化を期待できる。それほど、リスクを恐れない積極性を前面に押し出した、チャレンジャブルで忠実なパフォーマンスを魅せつづけている(形容句が多くてスミマセン・・)。

 要は、勇気というスピリチュアルエネルギーを、ブチかますように放散しつづけているということです。攻守にわたって自ら(汗かきも含む!!)仕事を探しつづけ、実際に全身全霊で実行していく積極的なプレー姿勢(ポジティブな自己主張!)がいい。それこそがチームメイトと監督の信頼を獲得する唯一のバックボーンというわけです。

 あっと・・もちろん、「ディエゴ・マラドーナ」や「リオネル・メッシ」だったら、チームメイトの誰も、彼らに忠実な汗かき仕事なんて期待しないだろうし、逆に彼らのために走り回るだろうけれど・・ね。もちろん、そんなレベルを超えた大天才が、汗かき仕事に「も」精を出せるのだとしたら、それこそが理想型ではあるわけだけれど・・。そんなニュアンスのことを、ドイツの伝説的スーパーコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーに言われたことがある。フムフム・・

 あっと・・またまた脱線してしまった。さて、長友佑都。

 テーマは、攻守にわたって、常に『そこ』にいる・・というイメージの確立・・ってなことですかね。

 要は、チームメイトが・・、(守備では)ヤツだったら、必要なときに、必要なところにいて、必要な(安定した)仕事をこなしてくれる・・(また攻撃でも)ヤツだったら、常に「そこ」にオーバーラップしてきている(オレのサポートに上がってくれている)と、期待できる・・ということです。

 長友佑都のテーマは、そんな「イメージ環境」を、より高揚させ、確立するということです。

 テレビ観戦でも同じですよ。例えば、テレビを観ているとき、「あっ・・この状況だったら(例えば、左サイドでパンデフがボールを持ったときとかネ・・)絶対にヤツが上がってくる・・」なんて感じた(期待した)とします。そして、そのとき実際に、パンデフの大外を回ってオーバーラップする長友佑都がテレビ画面に登場してくる・・なんていうことですかね。

 そんなときは(自分の期待が満たされたときは)誰だって興奮し、感動するでしょ。

 長友佑都の積極プレーは、守備でも、攻撃でも、そんな「ワクワク期待感」を高揚させてくれるのですよ。もちろん観ている我々だけじゃなく、実際にプレーしているチームメイトにしても・・ね。

 とはいっても、まだまだ課題も多い。

 長友佑都の場合、爆発的フリーランニングを仕掛けていくことで、タテのスペースで(ある程度フリーで)パスを受けたり、足許パスを受けてからのドリブル勝負で相手マークを外すなどで、取り敢えずクロスボールを上げるところまではいくよね。でも、どうも、まだ「ボールに込めた意志」が、実際の勝負シーンに正確に反映しているとは言えないと感じる。

 右サイドバックの天才、マイコン。たしかに、スピーディーでスキルフルなドリブル突破が代名詞になっているけれど、彼の場合は、正確なクロスやパスにも定評がある(チームメイトの信頼を勝ち得ている!)。この試合でも、後方からの正確なアーリークロスでも存在感を発揮していた。

 そんな正確な勝負パスを送り込めるからこそ、マイコンが「後方で」ボールをもったら、最前線のパッツィーニとかエトーが、決定的スペースへ飛び出していったりするわけです。

 要は、マイコンが、様々な勝負プレーのオプションをもっている・・っちゅうことです。そんなオプションの絶対的バックボーンは、もちろん最終勝負プレーの量と質・・。

 ドリブル突破からのシュートやラストパスだけではなく、相手を抜き去って折り返すクロスボールや、後方からシンプルなタイミングで送り込む正確無比なラストパス(アーリークロス)等々、マイコンの場合は、そんな最終勝負プレーの量と質でチームメイトの絶対的な信頼を勝ち得ている(チーム内ポジションを確立している)っちゅうことです。

 とはいっても、長友佑都のプレー内容が、試合に出場するたびに、どんどんと高揚していることも確かな事実です。試合後のコメントからも、彼の向上心が迸(ほとばし)る。それがいいのですよ。

 サッカーフリークは、「落ち着いてしまった」スターよりも、ハングリーな(相応のキャパシティーを内包している!)ヤングスターに、ワクワク期待感を引き上げられるわけだからね。そこで展開される「下克上ドラマ」もまた、プロが提供する価値の大きな部分を占めている・・っちゅうわけです。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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