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- 2011_ヨーロッパの日本人・・岡崎慎司、長谷部誠、長友佑都・・(2011年2月28日、月曜日)
- ではまず、「降格リーグ」を闘っている(現在ブンデスリーガのビリ二位)VfBシュツットガルトに加入した岡崎慎司から。
厳しい闘いを強いられているVfBシュツットガルトだけれど、この試合の相手は、これまた降格リーグを戦う必死のアイントラハト・フランクフルト。それも彼らのホームゲームでっせ。それだけじゃなく、前半15分には、守備ブロックの重鎮デルピエールが(暴力行為で!)退場になってしまうのですよ。誰もが、絶体絶命のVfBシュツットガルト・・って思ったに違いない。でも・・
VfBシュツットガルトだけれど、攻撃力(チャンスを作り出すチカラ)では、そこそこのパフォーマンスを魅せている(また岡崎慎司が加わったことも確実にプラス要因!)。何せ、この時点でのチーム得点ランキングじゃ「四位」なんだからね。でも守備がいただけない。とにかく失点が多い、多すぎる。
そのネガティブ要因の主たるところは、集中力だね。要は、相手からボールを奪い返すプロセスに関する、ディフェンス戦術的な「読みのイメージ力」と、それをグラウンド上に描写する(仕事を探しつづける)意志のチカラ・・。
素早い攻守の切り替えから、必死にディフェンスへ戻る姿勢はまあまあだから、守備ブロック全体の人数は足りているけれど、最後の勝負の瞬間でのマーキングとか、カバーリングとか、競り合いの内容とか、とにかく肝心な勝負所で「気が抜けて」いるというのが、友人のドイツ人ジャーナリストの意見だね。
それが、この試合では、見違えるほどの集中力を魅せた。もちろん岡崎慎司の、忠実&ダイナミックな守備プレーという「刺激」もあっただろうけれど、やっぱり、デルピエールの退場という「ギリギリの刺激」による危機感が、選手たちのテンションを極限まで高めた・・っちゅうことでしょ。
脅威と機会は表裏一体。VfBシュツットガルトは、厳しいピンチを、最大のチャンスとして活用できた。この、貴重なアウェー勝利(≒厳しい状況を勝ち抜いたという体感!?)が、チームの雰囲気を盛り上げていくに違いない。それに、岡崎慎司という「まさにドイツ的な刺激」も加入してきたことだしネ。
ということで岡崎慎司。
よかったですよ、ホントに。とにかく彼の場合、できることは全てやろうとする姿勢が素晴らしい。要は、『仕事を探しつづけ、それを限界まで実行しようとする意志のチカラ』がレベルを超えているということです。攻撃でも・・守備においても・・
もちろん、誰も彼に天才的なプレーを期待しているわけじゃない。それでも、シンプルな中継パスプレー、忠実なフリーランニングといった組織プレーだけではなく、近頃じゃ、勇気をもった勝負ドリブルへのチャレンジでも、こちらがビックリする程の(失礼!)パフォーマンスを魅せている。
要は、リスクチャレンジの姿勢(闘う意志のチカラ)が素晴らしいということだけれど、彼は、何度失敗しても、諦めずにリスクへチャレンジしつづけることこそが進化の唯一のリソースだという「サッカーにおける根源的なメカニズム」をよく理解している・・っちゅうことでしょ。いいね。
それだけじゃなく、彼の場合は、守備主体のチームメイトが頼りにするくらい素晴らしいディフェンスを魅せつづけるわけだからね。まあ・・忠実すぎて、たまには「前戦に残っていろ!」と声を掛けたくなるシーンもあるわけだけれど・・。でもサ、彼の場合は、激しく「上下動」を繰り返すことで、自信と確信エネルギーを活性化させていくタイプだから・・
ところで、岡崎慎司の真骨頂である「決定的フリーランニング」。前半29分に、その一発目が出た。
・・カウンターシーン・・右サイドでボールを持ったクリスティアン・トレーシュが前方へ視線を飛ばす・・その瞬間(もちろんその直前から)超速スプリントで、チームメイトの最前線カカーウを追い越してフランクフルト守備ブロックの裏に広がる決定的スペースへ飛び出している岡崎慎司と目が合う(アイコンタクト)・・次の瞬間、正確なラスト・ロング・パスが飛んだことは言うまでもない・・
・・そのパスは、見事な放物線を描き、走り込む岡崎慎司をマークする相手ディフェンダーのアタマを越していく・・それを、右足のインステップで、柔らかく、それも、次のステップで素早くシュートできる位置へ正確にコントロールしてしまう岡崎慎司・・鳥肌が立った・・
・・そしてフリーシュートシーン・・眼前には相手GKしかいない・・誰もがゴールを確信した・・でも・・このシーンでは、飛び出してきた相手GKの勇気と巧さに脱帽だったネ・・フ〜〜、残念・・
その後も、シンプルなパス回しから、自分がコアになったワンツー・コンビネーションを仕掛けていったり(相手ディフェンダー数人を完全に置き去りにした素晴らしい組織コンビネーション!!)、シンプルなタイミングから危険なミドルシュートを放ったり、守備でも、抜群の「汗かき姿勢」で効果的な仕事を探しつづけ、勇気をもってチャレンジしていったりと、存在感を魅せつけていた。
それにしても、VfBシュツットガルトは、本当によく勝った。何度か決定的ピンチに見舞われたし、彼らが挙げた2ゴールにしても、決して諦めない、気迫あふれる忠実なプレー姿勢が功を奏した・・針の穴を通すような偶発的要素も絡んだ「ご褒美ゴール」だったよね。
でも、勝ち切ったことは素晴らしいことだった。これからVfBシュツットガルトを追いかけようとする「こちらのモティベーション」のアップという視点も含めて・・ネ・・あははっ・・
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さて次は、VfLヴォルフスブルクの長谷部誠。
例によって、攻守にわたって高みで安定した高質プレーを展開しました。新任のピエール・リトバルスキーだけじゃなく、チームメイトからも深く信頼されていることを肌で感じる。
そのプレーイメージは、まあ・・日本代表と、ほぼ同じような「マルチ・タスク・ボランチ」ってなところですかね。
守備では、勝負所での忠実マーカーとして抜群の安定性を魅せることは当たり前として、中盤での(素早い攻守の切り替えを基盤にした)チェイス&チェッカーとして・・また、ボール奪取を狙うインターセプターとして(相手トラップを狙うアタッカーとして)・・はたまた、忠実なサポート要員や協力プレス要員として・・などなど。
もちろん攻撃でも、組み立てプロセスにおける「後方のゲームメイカー」として抜群の存在感を発揮するし、「ココゾッ!」の仕掛けシーンでは、相手ディフェンスの視野からフッと「消える」フリーランニングから、三人目、四人目の「仕掛け人」として決定的ポイントに顔を出したりする。
彼とダブルボランチのバートナーを組むのは、チェコ代表でも中盤の重鎮として抜群の存在感を魅せている「ヤン・ポーラック」。とても優れた組織プレイヤーです。遠藤保仁・・!? もちろんタイプはちょっと違うかもしれないけれど・・ね。
ポーラックは、攻守にわたって、効果的な仕事を探しつづけ、それを実行していける優れた選手だけれど、そんな彼だからこそ、長谷部誠という心強いパートナーがいることは、大きな価値に違いない。
このダブルボランチは、「互いに使い・・使われる・・」という、サッカーの深〜い(物理的&心理・精神的)メカニズムについて存分に理解している。だからこそ、攻守にわたって、とても実効レベルが高い共同作業を機能させられる。彼らの、攻守にわたる「バランシングプレー」を見ていれば、その強固な相互信頼がビンビン伝わってくるじゃありませんか。
長谷部誠にしても、ヤン・ポーラックとのコンビは、より一層の発展のために、とても大事な戦術的「価値と意味合い」を内包していると確信しているはずです。とにかくこのダブルボランチは、VfLヴォルフスブルクにとっても、なくてはならないコンビになっているということです。
このダブルボランチがいるからこそ、前気味ミッドフィールダーの三人、シセーロ、リーター(ドイツ代表)、そして言わずもがなのスーパー・クリエイター(チャンスメイカー)ジエーゴも、安定プレーを展開できるというわけです。
ところでジエーゴ。本来の調子を取り戻しつつあると感じますよ。そのもっとも大事なバックボーンは、言わずもがなだけれど、積極的な守備参加と、攻撃でのシンプルな組織プレーにあり・・なのです。それがあるからこそ、周りのチームメイトとの組織サッカーリズムを高揚させられる・・そして、自分の才能を、最高のカタチで表現させられる。
そんなジエーゴの復調にとって、このダブルボランチが生み出しつづける組織的な価値(イメージ)は、限りなく重要です。ジエーゴは、そのことをしっかりと自覚したからこそ、ホンモノの復調ベクトルに乗れた!? まあ・・そういうことだね。サッカーは、ホンモノの心理ゲームであり、チームゲームでもあるわけです。
高質な安定(汗かき)組織プレイヤー、長谷部誠。もっと良い表現が思い当たればいいのだけれど・・。彼については、もう少し考えてから書き足すことになるかもしれません。
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ということで、インテルのマイティーマウス、長友佑都。サンプドリア対インテル戦です。
この試合での長友佑都は、マイコンが出場停止ということで、右サイドバックに入りました。そしてそこでも、攻守にわたって高みで安定した「存在感」を発揮した。まあ・・大したものだ。
立ち上がり30秒のオーバーラップシーン。
中央でボールを奪ったアルゼンチンの英雄サネッティーが、長友佑都を前方へ送り出す(オーバーラップさせる)ようなタテパスを出す。迷わず、超速ドリブルで上がっていく長友佑都。それは、中央ゾーンに広がる「タテのスペース」を素早くリンクしてしまうような直線ドリブルです。
そこでは、直線的な超速ドリブルをスタートした長友佑都に対し、後方から追い付いたサンプドリアのスイス代表ツィークラーが、身体をあずけながら(身体を長友にぶつけるように!?)強烈なプレッシャーを掛けてきたシーンがエキサイティングだった。
それは、とても微妙なシーン。長友佑都は、ツィークラーのプレッシャーを切り抜けられるだろうか・・?? 思わず、握った手にチカラが入った。
ただ、「半身」だけ前へ出ている長友佑都は、そんな心配などどこ吹く風・・ってな余裕の雰囲気まで放散しながら、ツィークラーのプレッシャーを身体で抑えて抜け出していった。その競り合いで、ツィークラーは置き去り。そして長友佑都は、流れるような動作から、最前線にポジショニングするエトーの足許へ、正確なグラウンダータテパスを送り込むのですよ。
これは、(特にエキスパート連中にとって!)とてもインプレッシブなシーンだった。ツィークラーは、とても評価の高いスイス代表選手だからね。そんな強者の全力プレッシャーをモノともせずにブッちぎっていったんだから。
この試合での長友佑都は、右サイドハーフに入ったサネッティーに「使われる」シーンも多かった。要は、長友佑都が仕掛けるタテへの抜け出しフリーランニングに、サネッティーが、正確なタテパスを供給するシーンが目立っていたということです。
まあ逆から見れば・・、長友佑都が上がったら、その後方スペースをサネッティーが埋める・・また長友佑都がタテへ抜け出すことでサネッティーにパスを要求していた・・なんていう捉え方もできるわけだけれどネ。とにかく、ここでも「相互信頼関係」が成り立っていたということなんですよ。互いに「使い・・使われる・・」相互信頼関係・・がね。
長友佑都の攻撃参加だけれど、パスレシーブと勝負ドリブルの「バランス」という見方では、やっばり、組織コンビネーション寄りの勝負プレー(要は、フリーランニングからのパスレシーブ・・そしてそこからのダイレクトパス&クロスやダイレクトシュートなど!)の方が、より効果的だと思うね。
もう何度も書いているように、インテルの仕掛けプロセスでは、足許パスレシーブからの個人勝負(ドリブル突破)という流れが多いよね。だからこそ、長友佑都が魅せる「組織的な仕掛けテイスト」が大事な意味合いを持ってくる!?
要は、インテル的な仕掛けイメージに、長友佑都が仕掛けつづける組織コンビネーション的な「テイスト」 が加味されていくに違いない(!?)ということです。それは、インテルにとっても、とても価値ある「チーム戦術的なイメージ進化」だと思うし、長友佑都にしても、そんな「流れ」がチーム内に定着すれば、自身の存在感アップ手段を手に入れることになるよね。
とにかく、攻撃の根源的なコンセプトは「変化」にあり・・なんだからね。
長友佑都は、この試合でも、攻守わたって順調に存在感をアップさせた。チーム内の(ヒエラルキー的!?)ポジショニングを確固たるものにしていくプロセス。まあ、そのバックボーンに、日本をよく知る(日本サッカーに対してポジティブなイメージを維持している!?)レオナルドが監督に就任したこと、また彼と日本代表のザッケローニが親しい関係にある(!?)というラッキーな事実を忘れちゃいけないけれどね。
とにかく、これからの長友佑都の発展が楽しみで仕方ないよね。
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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