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2010_WM(14)・・あ〜あ、トーナメント一回戦からドイツとイングランドが激突することになってしまった・・(ドイツvsガーナ、1-0)・・(2010年6月23日、水曜日)

すごいドラマだったな〜〜、予選Cグループの最終戦。同時キックオフの「イングランド対スロベニア」と「米国対アルジェリア」。その2試合を、ドイツ対ガーナの勝負マッチがはじまるまえに、スタジアムに隣接して設置されているメディアセンターのテレビで観戦したというわけです。

 ところで、ワールドカップのテレビ中継。素晴らしいネ。カメラマンやスイッチャーの方々は、例外なくサッカー経験者に違いない。だから、ボールがないところでのドラマをしっかりと捉えている。まあ、単に、彼ら自身が一番みたいところをイメージして画面作りをしているに過ぎないんだろうけれど・・。

 ということで、テレビだったけれど、とても面白く観戦できました。もちろん、部分的には、決定的な仕事をする選手が、最後の瞬間に、テレビ画面の「外」から急に画面に飛び込んでくるようなことはあったけれど、それでも、全体としては、とても優れた(フットボールネーションの経験値が存分に活かされた!?)テレビ中継ではありました。

 あっと・・ちょっと脱線。さてゲーム。私は、イングランドと米国をサポートしていました。もちろんサッカーの内容ベースの支持。だから観戦にもリキが入った。

 両ゲームともに、イングランドとアメリカがイニシアチブを握っている(ボール奪取のプロセスと攻撃でのチャンスの量と質で相手を凌駕している!)。だからこちらは、そのサッカー内容が「結果」と一致してくれることを心から願っている・・っちゅう具合。

 そんななかで、まずイングランドが先制ゴールを挙げた(まあ結局それが決勝ゴール!)。右サイドのミルナーからの素晴らしい一発勝負ロングパス(まあ・・アーリークロス気味のラストパスとも言えるかな・・)が、相手の最終ラインをブチ破って走り抜けたデフォーにピタリと合う。そしてデフォーが、そのままダイレクトシュート!!

 私は、ゲームの内容からすれば、イングランドが手堅く「その虎の子」を守り切るだろう・・と、今度は別のテレビ画面に視線を移すのです。

 あっと・・メディアセンターでのテレビ観戦の状況を説明すると、こんな感じ。このメディアセンターには多くのテレビが用意されている。そこで、一台おきに、同時にキックオフされたC組の2試合を映し出しているという具合。そこでは、世界中から馳せ参じたジャーナリスト連中が、そのディスプレーを「交互」に観ている・・なんていう、ちょっと面白い光景が展開されているのです。

 ということで、私は、右側の「イングランド対スロベニア」を中継しているテレビから、左側に設置されている「米国対アルジェリア」に目を移したというわけです。でもすぐに、メディアセンター内に響きわたる歓声で、右側のテレビに視線を奪われる。イングランドが、追加ゴールのチャンスを作り出したのですよ。それだけじゃなく、連続的に、ランパードやルーニーといったスター連中がメディアセンターの歓声を呼び起こすのです。どうしてヤツらは、そんなにシャカリキになって攻めつづけるんだ・・!? あっ、そうか・・

 試合が始まる前のC組の状況は、ちょっと複雑でした。2試合が終わった時点でトップをいくのはスロベニア。でも、イングランドと米国が勝てば、この二チームが、同じ勝ち点「5」で予選リーグを突破する。でも、どちらがトップ通過??

 ということで、勝ち点表を見比べてみた。そうか〜〜・・、もしイングランドと米国が「1-0」で勝った場合、両チームともに、勝ち点「5」になるし、得失点差でも「+1」ということで同じになる。それでも、三位だった米国が、総ゴール数でイングランドの上をいく。だからイングランドは、しゃかりきに2点目を奪いにいったということか。

 そうだよな〜〜・・彼ら(イングランドも米国も)は、決勝トーナメント一回戦で当たる「予選Dグループの順位」を気にしているということなんだよな〜〜・・彼らもまた、今日これから行われるドイツ対ガーナ戦で、ドイツが勝って「D組をトップ」で通過すると思っているんだ。そして、彼らのC組の二位と対戦することになる。フムフム・・

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 さて、そのドイツ対ガーナ。

 あっと・・まずメディアシートのチケットについてですが、すでに何度も書いたように、わたしはウェイティング・リストに回されていました。でも最後は、無事にチケットをゲットできました。やはりスタジアム観戦に優るものはない。ホント、良かった。

 そして試合は、結局ドイツが、微妙なチカラの差を魅せつけて勝利を収めた。

 微妙な差・・。最初の頃のドイツは、ボールがないところでのアクションの量と質の違いを見せつけるように(それこそがチカラの差の本質!!)素晴らしいチャンスを何度も作り出したけれど、そんなドイツのプレーのペースが徐々に落ちていった。そして、オェッツィルの決勝ゴールの後は、まさに冴えない展開ってな低級サッカーに終始するようになっていった。

 そんな展開を観ながら、実はわたしは、最後の時間帯、不謹慎にも、ガーナに一点ブチ込まれて同点で終わるのもいいよな〜〜・・なんていうことを考えていました。

 このワールドカップでは、メディアシートでも「WiFi」が飛んでいる。それも、タダ。ドイツワールドカップでは、ジャーナリストから、「WiFi」使用料として数万円を徴収したからね(わたしはドイツのパートナー調査会社が用意してくれた、高速の携帯無線通信を使っていたから問題なかったけれど・・)。まあ、ワールドカップの運営も、さまざまな意味の進捗があったっちゅうことでしょう。

 ということで、座っている席で、同時に行われているオーストラリア対セルビアの途中経過が分かるのですよ。そして、どうもオーストラリアが勝ちそうな雰囲気。ということは、もしここでガーナが同点ゴールを挙げれば、ドイツが二位になる。そして、決勝トーナメント一回戦でイングランドと当たらなくて済む・・なんていう、勝手な願望がアタマをもたげてきたっちゅうわけです。

 でも、まあ、あのガーナの攻めでは、同点ゴールが遠いことは道理だったね。たしかに後半には、素晴らしいコンビネーションから、左サイドでまったくフリーでボールを持ったガーナ選手が、ドイツGKと一対一になるという決定的はあったけれど、それも、まさにオリバー・カーンの再来ってな雰囲気で、GKマヌエル・ノイアーが防いだ。とても素敵な(誰もが息を呑んだに違いない!?)一発勝負シーンではあった。

 でも結局は、そのままで試合終了。ドイツは、まあまあの強さを魅せ、順当に決勝トーナメント一回戦へ駒を進めたのでありました。

 ところで、このワールドカップでのドイツ。それは、以前の(悪いときの)ぎこちないパワーサッカーとはまったく違う、とても洗練された組織サッカーを魅せてくれています。組織が機能するからこそ、勝負のドリブルやコンビネーションなど、個の勝負も、より効果的に仕掛けていける。ドイツは、本当に良いサッカーを展開していると思いますよ。まあ、この試合では、ペースが落ちてしまったことで、ガーナの良さを引き出しちゃったけれどネ・・。

 でも・・まあ・・そんなドイツでも、ペースが落ちていく前までは、ボールがないところでの動きの量と質でガーナを圧倒していたからネ。だからこそ、ワンツーも含む、決定的なスペースへの人の動きと、パサーのイメージが、より高次元に重なり合った(互いの勝負イメージがうまくシンクロしていた!)。そしてそれが、決定的チャンスメイクの量と質の差となってグラウンド上に現出したっちゅうわけです。

 そして、そこにはもう一つの視点がある。そう・・守備。

 攻撃での組織プレーが(要は、組織コンビネーションでウラのスペースを突いていくプレーが!)素晴らしく機能しているからこそ、逆に、守備のレベルもどんどんとアップしていくということです。

 彼らの守備では、とにかく、相手のボールの動きに対する予測が(仕掛けのイメージの読みが)素晴らしい。だから、ガーナが組織コンビネーションを繰り出していっても、そこでもっとも大事になる三人目のフリーランニングが完璧に抑えられてしまうのですよ。いや、ホント、まさに質実剛健なドイツの組織ディフェンスではありました。

 個人的には、ルーカス・ポドルスキーに期待したけれど、どうもこの試合では(ガーナ守備がスピーディーで強力だから!)うまく波に乗れなかった。それだったら、もっと守備に参加することで、次の攻撃での組織コンビネーションにスムーズに入っていけるようなプレースタイルに変えるべきだった。でも結局は、左サイドに張り付くばかりだった。ちょっと残念。

 またバスティアン・シュヴァインシュタイガーが、腿の裏側に肉離れ(筋肉繊維の部分断裂)を起こしたような状態で交替したことも心配だね。彼は(その攻守にわたる汗かきプレーは)チームにとってのコアになる「機能性」だったから、これからのドイツは難しい闘いを強いられることになりそうな感じ。まあ、彼と交替したトニー・クロースは、守備的ハーフとしては、そこそこの実力を持っているけれど、攻撃力では、やはりバスティアン・シュヴァインシュタイガーの方が、ちょっと上だろうからネ。

 とにかく、何としてでも、イングランド対ドイツの勝負マッチだけはスタジアム観戦できるように頑張らなければ・・。

 そりゃ、メディアシート・チケットを手に入れることは、とても厳しいよね。「ドイツ・コネクション」は、こんなことで使いたくないしね。さて、どうしたものか。良いアイデアのある方、教えてくれませんか? よろしくお願いしま〜す。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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