トピックス
- 2010_WM(18)・・あ〜あ、優れたサッカーを展開していたアメリカが負けてしまった・・(USAvsガーナ、1-2)・・(2010年6月26日、土曜日)
- まず、ルステンブルクのメディアセンターでテレビ観戦した韓国対ウルグアイの勝負マッチから。
前半の立ち上がり、パク・チュヨンが、フリーキックから、ウルグアイゴール右ポスト直撃のテクニカルなシュートをブチかました。蹴った瞬間(ボールの軌跡が感じられた瞬間)思わずガッツボーズが出そうになった。何かが起きることを確信させてくれるような「勢い」が、そのボールの軌跡に込められていたのですよ。でも・・
あの、強烈に強い守備ブロックを擁するウルグアイに先制ゴールを献上してしまった。誰が考えても、その後の展開は「ウルグアイのツボ」ということになるよね。堅牢なディフェンスブロックをコアに、フォルランが中心になった蜂の一刺しカウンターを仕掛けていく・・
でも、後半の韓国は、とても積極的で効果的な攻めを展開した。前半では、ウルグアイ陣内のコアゾーンに入り込む前に潰されていたけれど、より人数を掛けて前へいった後半は、とても危険な仕掛けを繰り出せるようになった。そして、その甲斐あっての同点ゴール。でも、そこから、両チームの本来の実力が反映された展開へと、ゲーム内容が変容していくのです。
要は、再びウルグアイがゲームのイニシアチブを握り返しはじめたということです。攻撃へ、より人数を掛けていくようになったウルグアイ。もっと言えば、攻守の切り替えが、より素早く、そしてダイナミックになっていったということです。要は、前後への運動量が増えたともいえる。そしてウルグアイが、再びチャンスを作り出しはじめ、決勝ゴールが生まれる・・
コーナーキックのこぼれ球を拾ったスアレスが、左サイドから、大きくカーブを描くロビングシュートを放ち、それが、ピタリとポストを直撃してゴールへ飛び込んでいった。見事なゴールだった。
もちろん、その後は、韓国が全精力を傾けて仕掛けつづけた。でも・・
全体的にサッカー内容を比べれば、たしかに僅差ではあるけれど、やはりウルグアイに一日の長があるというのがフェアな評価だろうね。とはいっても、韓国が、世界トップとの「最後の僅差」を着実に縮めていることは確かな事実。我々日本サッカーは、本当に、素晴らしいライバルに恵まれているのですよ。
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さて、アメリカ対ガーナ。
前半。互いに攻め合うエキサイティングな展開ではあるけれど、両チームともに、うまく決定的シーンを作り出せない。ここで、最初のテーマ。相手守備ブロックのウラスペースを突いていけない両チーム・・
攻撃の当面の目標は、最終勝負ゾーンで、ある程度フリーでボールを持つこと。それが、最終勝負ゾーンでのスペースの攻略を意味することは言うまでもありません。それが出来れば、もちろん仕掛けの起点になる。
では、そんな状況をどのように作り出すのか。一つは、ドリブル勝負によって、相手を、一人でも多く置き去りにして相手ディフェンダーの背後スペースへ抜け出していく個人勝負プレー。そうすれば、相手ディフェンスも、カバーリングに動かなければならなくなる。だから、決定的スペースが、どんどん出来る。
もう一つが、言うまでもなく、組織パスプレー。そこで決定的に重要になってくるのが、ボールがないところでの動き。フリーランニング・・パスレシーブの動き・・。まあ、大きく分ければ、そういうことになる。でも、その両プロセスともに、アメリカも、ガーナも、十分に機能させられない前半なのです。
ガーナの先制ゴールは、中盤でボールコントロールに失敗したクラークからこぼれたボールを拾い、そのまま超速のドリブルでアメリカ最終ラインを突破したガーナの守備的ハーフ、ボアテングが、見事なミドル弾をアメリカゴールの左隅に叩き込んだ得点。
典型的な「ショート・カウンター」。アメリカ守備は、組織を作り直すヒマもなく、ボアテングの、テクニカルな(カットを繰り返す!)超速ドリブルに振り回され、最後はボアテングの目の前にスペースを与えてしまった。まあ、勝負ドリブルによる決定的スペースの攻略・・とも言える。
相手守備が「攻撃へと向かうことで」さまざまな守備組織のバランスが崩れた状態をうまく活用して突破していくショート・カウンターは、最も効果的・効率的なシュートへ至るプロセス。でも、ここでのテーマは、組み立てからのチャンスメイク(決定的スペースの攻略)。前半は、両チームともに、個人勝負でも組織プレーでも、うまくチャンスを作り出せなかったのですよ。
でも後半は、ガラリと様相が変化する。ようやく、アメリカの組織サッカーが機能しはじめたのです。もちろん、組織的なディフェンスを基盤に、そこから、素早く広い人とボールの動きをベースに、最後は、三人目、四人目の選手が、後方から決定的スペースへ走り抜けていく。そしてそこへ、勝負のタテパスが通される。
爽快な組織パスプレーベースの決定的スペース攻略プロセスじゃありませんか。繰り返し、アメリカが、組織コンビネーションでガーナ守備ブロックを翻弄してチャンスを作り出していく。
前半には、あまり見られなかったボールがないところでの動きの複合美。そう・・これこそ私が、2000年シドニーオリンピック当時からアメリカに期待しているムービングサッカーなのです。それについては、2000年シドニーオリンピックのレポートを参照して下さい(トピックスのタイトルボックスに以前のトピックスへ飛ぶリンクボタンがあります)。
アメリカの真骨頂サッカー。だから、彼らがPKで同点に追い付いたのは(完全にウラのスペースを攻略したことでガーナ守備はファールで止めるしかなかった!)、まさに必然的なゲーム展開ではありました。
同点弾の後も、チームが一体となってハードワークを繰り返す組織サッカーでイニシアチブを握りつづけるアメリカ。それに対して、徐々に、個人勝負に比重が移っていくガーナ。
そこまでの流れは、完全にアメリカのモノだったのですよ。でも・・
延長に入った前半3分。やってくれました、ガーナのギャン。昨年9月に日本代表がガーナと対戦したとき、一発ロングパスから、日本の最終ラインを翻弄して二つのゴールを叩き込んだギャン(まあスピード突破・・日本のストッパーは、まったく付いていけなかった!)。彼が、この試合でも爆発したのです。
抜群のスピードでマークを振り切ってボールに追い付いたとき、アメリカのストッパーに肘鉄を食らわされ、プッシュされたにもかかわらず、最後までバランスを崩さずに、キャノンシュートをお見舞いした。素晴らしいスピードとパワー、テクニック、そしてまさに動物的な身のこなし。まあ、脱帽するしかない。
延長に入ってからのアメリカは、サッカーの内容が減退してしまった。要は、ボールがないところでの動きの量と質が大幅にダウンしたということだけれど、これじゃ(局面での個人勝負では)ガーナを破ることはできない。
記者会見で、ブラッドリー監督が、「中二日のスケジュールは、ちょっと厳しかったかもしれない・・残念ながら我々は、グループリーグで(選手を使い回す)ターンオーバーシステムを十分に機能させられなかったしね・・」と言っていた。そうだよね、アメリカの「ハードワーク・サッカー」には、中二日は、ちょっと厳しすぎたかもしれない。フ〜〜・・
まあ・・仕方ない・・。アメリカをサポートしていた筆者だから、ちょっと落胆していた。
さて、これから、またまた大渋滞のなかを「B&B」まで戻らなければなりません。帰り着けるのは(延長戦に入ったことで)三時を回ってしまうでしょう。そして、明朝には、所用でヨハネスブルク空港へ寄ってから、そのまま430キロを走ってブルームフォンテーンへ。そう、ドイツ対イングランドです。昨日のコラムでも書いたとおり、この試合は、メディアシート・チケットが承認されているし、パーキングチケットも手に入れているから安心。まあ、あとはフィジカルな持久力だね。あっと・・もちろん日帰りのスケジュールですよ。では・・
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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