トピックス
- 2010_WM(23)・・このドイツ代表チームは、美しい組織プレーと勝負強さを併せ持つ・・(ドイツvsアルゼンチン、4-0)・・(2010年7月3日、土曜日)
- どうやって「ここ」までたどり着いたのか・・フ〜〜・・まあ、そのことについては、また別の機会にでも。いま、ケープタウンのグリーンポイント・スタジアム。あと20分ほどで、ドイツとアルゼンチンの勝負マッチがはじまります。フ〜〜・・あははっ・・
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さて、試合コラムに入るけれど、今日は、ちょっと疲れ気味だから、とにかく簡単にポイントを絞り込んでまとめることにします。
まず、何といっても、ドイツが魅せつづけた、正確で流麗な組織プレー。まあ・・、随所に「美しいエスプリプレー」を散りばめるブラジル程じゃない。でもまあ、それなりに(ドイツ的にロジカルな!?)美しさはある。
とにかく、シンプルに、そして効果的にボールを動かしつづけるドイツ。その目標は、スペースである程度フリーなボールホルダーを演出することだけれど、その絶対的なベースは、もちろん人の動きにあり。パス&ムーブだけじゃなく、ボールがないところで、三人目、四人目が、本当に忠実にタテのスペースへ飛び出していくのですよ。だからこそ、相手が嫌がるスペースで、ある程度フリーな選手を演出できる。
もちろんボールホルダーも、後方の味方が「タテのスペース」へ飛び出していくことを確信しているからこそ、ボールコントロールが「ブレ」ることなく、スムーズにパスをつなぐことができる。
でも、このドイツチームの特筆な強みは、やはり組織的なディフェンスにあるだろうね。要は、バランス・オリエンテッドな組織ディフェンス。
もちろん、相手ボールホルダーに対して、前戦から、忠実なチェイス&チェックを仕掛けつづけることは言うまでもない。でも、アルゼンチンの攻撃スピードをダウンさせる忠実なチェイス&チェックにしても、決して安易にアタックすることなく、十分に「守備のタメ」を演出することで、協力プレスや、次のインターセプト(相手トラップの瞬間を狙ったアタック)をイメージするのですよ。もちろん、ボールから遠いゾーンでフリーランニングする選手を忠実にマークしつづけることは言うまでもない。
とにかく、守備に入った次の瞬間からスタートする忠実なチェイス&チェックを基点に、全員が、スッ、スッと、効果的なポジショニングバランスを構築するのです。
だからこそ、アルゼンチンの次のパスを巧くインターセプトすることができる。何度、アルゼンチンのパスが、とても効率的にドイツ選手にカットされたことか。それもまた、優れたポジショニングバランスの為せるワザ。このドイツチームは、本当に、忠実に、そしてクリエイティブに、相手からボールを奪い返していると感じますよ。そして次の瞬間から、流れるようにスタートするカウンター気味の「蜂の一刺し」。フムフム・・
そういえばドイツは、トーナメントの最初の頃よりも、より効果的に、そして効率的に、巧いポジショニングバランスを取れるようになっているよね。これも特筆ポイントだね。要は、攻撃のときから、次の守備をイメージしているということかな。もちろん、守備をイメージすることで、攻撃が消極的になるなんてことはない。これも、バランス感覚。フムフム・・
ところでアルゼンチン。どうみても、組織プレーと個人勝負プレーのバランスが崩れている。
要は、「個人プレー」に偏りすぎているというだね。全員が「メッシの爆発」を待っているということなのだろうか。だから、本当の意味で「実効あるボールがないところでの動き」が、ほとんど出てこない。そして、ゴリ押しのドリブル勝負ばかりが目立ちつづける。これでは・・
以前のアルゼンチンは、まさに、究極の「組織と個のバランス」を魅せていた。しっかりと人とボールが動きつづけるからこそ、個人の才能が光り輝いた。もちろん、個の才能連中も、しっかりと守備をやったし、攻撃でも、ボールがないところで必死に動きつづけていた。もちろん、天才連中も・・
最後に、ケガで参加できなかったミヒャエル・バラックについて。
とても優れた才能に恵まれた、ドイツを代表するミッドフィールダーです。その彼が、大会直前に大けがを負ってしまった。誰もがドイツ代表の先行きに不安を感じたはず。でも、わたしは、ちょっと違った視点で見ていた。そう・・ミヒャエルの不在が、他の、特に若手選手の「ブレイクスルー」を後押しするに違いない・・。
ミヒャエル・バラックは、ドイツ代表にとって、とても大きな存在だったからね、彼がいなくなったことは、ある面では大きな損失であることは言うまでもない。ただ、彼がいるときは、どうしてもサッカーが、ミヒャエル・バラック中心に(彼のプレーイメージを中心に)流れてしまう。だから、相手守備にとっても、どちらかといったら与し易い(くみしやすい)チームという側面もあった。
でも彼が抜けたことで、逆に、(選手の自覚がブレイクしたことも含め)チームの機動性が、大きく発展したと感じた。要は、チャンスを見出した誰もが、ガンガンと前へ飛び出していくようになったのです。
両サイドバック(ラームとボアテング)だけではなく、守備的ハーフのバスティアン・シュヴァインシュタイガーとサミー・ケディーラ、またセンターバックのアルネ・フリードリヒにしても、中盤まで「せり出して」ボールをインターセプトしたら、迷わず、最前線へ(ドリブルやワンツーを駆使して)飛び出していく。
そんな後方からの動きに対し、ルーカス・ポドルスキーやトーマス・ミュラー、はたまた最前線のメスート・エツィールやミロスラフ・クローゼといった攻撃陣が、必要とあらば、自陣深くまで戻ってディフェンスに入る。
まさに、チーム一丸となった「タテのポジションチェンジ」。それは、相手にとって、とてもやり難く、怖い「攻撃の変化」に違いない。
ミヒャエル・バラックがいたときは、彼が中心にいることで、どうしても、縦横のポジションチェンジが「より以上に」活性化していくということがなかった。
もちろんミヒャエル・バラックがいれば、(今のドイツ代表とはちょっとニュアンスの違う!?)それなりに危険な攻撃は仕掛けていけるはず。でも「それ」は、どうしてもプロセス内容の広がりが限定気味になってしまうことで、相手ディフェンスが、より効果的に対処できるようになる。
難しいネ・・。やはり天才は(メッシも含めて)諸刃の剣ということかもしれない。だからこそ、名将と呼ばれるストロング・ハンド(=監督)は、天才にしっかりとハードワークさせるだけじゃなく、彼らの発想(プレーイメージ)を、より進歩的で柔軟なモノに「展開」させられるということか。だから彼らは大金を稼ぐことができる・・。
天賦の才。それは、とても深く、広〜いテーマ。一人では何もできない・・でも、その一人が(組織的に)うまく機能すれば、鬼に金棒・・フムフム・・
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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