トピックス
- 2010_WM(25)・・オランダが抱える問題点の方が目立ったゲームだったかな!?・・(オランダvsウルグアイ、3-2)・・(2010年7月6日、火曜日)
- とてもエキサイティングなイーブンマッチだった(この試合はテレビ観戦でした)。もちろん、ボールのキープ率ではオランダが上回っていたけれど、「勝負の流れ」という視点じゃ、まさにイーブンだったのですよ。
わたしは、たぶん、こんな互角の競り合いマッチになると思っていました。いくら、組織プレーと、才能プレイヤーによる個人勝負プレーがハイレベルにバランスした強いオランダとはいっても、ボールがないところでの汗かきの動きが減退してきていることで、シンプルな組織パスプレーが以前ほどうまく回らなくなっているし、チーム全体のイメージの方向として、才能プレイヤーの個人勝負プレーを「より前面に押し出していこう・・」とする傾向が強くなっているからね。
それに対して、チームの総合力では明らかに劣るだけではなく(そのことを選手全員が体感的に理解していることが、とても重要な意味をもつ!)エースストライカーのスアレスを出場停止で欠いているウルグアイだから、もちろん、徹底的なゲーム戦術を駆使してくるでしょ。それに、オランダのサッカーが、前述したように、相手にとって、よりターゲットを絞り込みやすいサッカーになってきていることもあるよね。
伝統の強力ディフェンスをベースに、状況に応じて(フォルランを中心に)カウンターや組織的な押し上げを臨機応変に繰り出していくウルグアイだけれど、正直なところ、彼らがここまでやるとは思っていなかった。もっとオランダのドミネーション(ゲーム支配)が強く、ウルグアイは、数少ないカウンター攻撃に懸けるしかないだろうな・・なんて思っていたのですよ。でもフタを開けてみたら・・
両チームともに、流れのなかからは、ほとんどチャンスを作り出せない。そんな展開のなかから、まずオランダのファン・ブロンクホルストが、まさに夢のようなミドルシュートを、ウルグアイゴールの右上隅に突き刺すのです。前半18分のことです。それは、右のポストの内側上端を直撃するという信じられないような30メートルのキャノンシュートでした。
もちろん、その先制ゴールでフッ切れたウルグアイが、より前へと重心を移していったことは言うまでもありません。そんなゲームの流れは、オランダに、絶好のカウンターチャンスをもたらす・・はずだった。でも、ウルグアイの攻守の切り替えの速さと(オランダのカウンターを遅らせる素早いチェイス&チェック!)、前述した、ターゲットを絞り込んだディフェンスが、簡単にはオランダのカウンターを許さない。
その時間帯にウルグアイが魅せたサッカーは、素晴らしくバランスの取れたハイレベルなものだった。そんななかで、今度は、ウルグアイのエース、フォルランが、これまた「キャノン」と呼べるような素晴らしいミドルシュートを決めるのです。相手のアタマに当たってコースが微妙に変化したとはいえ、これまた夢のような同点ゴールでした。
そしてゲームが拮抗していくのです。いや・・拮抗というよりも、互いに仕掛け合う、活発な動きが交錯するダイナミックな均衡といった方が正確だね。
後半の立ち上がりは、オランダが、中盤守備をより活性化することで少し攻勢に出てきたけれど、ウルグアイも、そんなオランダの勢いを、堅い守備ブロックが「効果的に吸収し」すぐに、押し返していきます。本当にエキサイティングな互角のせめぎ合い(仕掛け合い)へとゲームが成長していったのです。
そして、多分だからこそ、徐々に、本来の実力が差が、グラウンド上に現れはじめたということなのかもしれない。オランダが、最終勝負の「質」で、少しずつ、ウルグアイを凌駕しはじめていったのです。
最終勝負の質・・。そのキーポイントは、何といっても、スペースの活用。要は、相手の背後のスペースを、オランダが、より効果的に攻略しはじめた・・ということです。
でも・・ネ、だからこそ、その「攻略プロセス」に内包される問題の本質が見えてきたのです。以前だったら、組織的なパスコンビネーションでウラのスペースを攻略するプレーと、ドリブルで突き崩していくような個人勝負プレーの「配分」は、50:50に近かったのが、いまでは、それが「6対4」とか「7対3」にまで変化していると感じるです。
そのような現象は、スペインにも見られます。以前は、組織と個が素晴らしいハーモニーを奏でていた両チームだけれど、時間が経つにつれて、「個」の方へ偏っていく・・。たぶんそれは、人間的な現象なんだろうね。
より自分たちの欲望を(個人勝負という歓喜のプレーを)より追い求めるようになる・・それに対して、シンプルな汗かきプレー(ボールがないところの動きの積み重ね)に対する意欲がどんどん減退していく・・フムフム・・
まあ、サッカーの内容には問題が見え隠れしていたとはいえ、スナイデルのワザありシュートと、ロッベンの素晴らしいヘディングシュートで(本来の実力からすれば順当に!)決勝に駒を進めたオランダに拍手はしていた筆者なのですがネ・・
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ところで今日、夕食のためにショッピングセンターへ出掛けたときのことです。もちろんクルマでの移動。とにかく、何をするにも、ガードマンが常駐しているショッピングセンターがもっとも安全なのです。そこにはスーパーだけじゃなく、レストランなど、多くの施設が集まっているからね。
でも、その途中で、私が宿にしているB&Bで働く黒人の人たちと出くわしたのですよ。彼らは徒歩。もちろん、「どこまでいくの?・・送っていくよ・・」とクルマを止めました。
気心が知れた我々だから、もちろん彼らも、喜んで乗り込んできた。聞けば、自宅まで帰るという。もちろん近くまで送るよ・・と私。でも・・
楽しいハナシをしながら、彼らを送っていくのですが、徐々に周りの雰囲気が変わっていくのです。道ばたを行く黒人の人たちの数が、どんどん増えていく・・そして、スラム街のような雰囲気の住居群が出現してくる・・
もちろんB&Bで仕事をしている彼らは(女性二人に男性一人)まったく問題ないだろうけれど、彼らを送って降ろした後、この道を戻らなければならない・・。そのことを考えたとき、とっさに決断せざるを得なくなった。
「ゴメ〜ン・・考えてみたら、約束の時間に遅れそうなんだ・・家は近くなんでしょ・・じゃ、ここでいいかな〜〜??」
「もちろんよ・・ここまで送ってもらっただけで、とても助かったわ・・ホントにどうもありがとう・・それじゃ、また明日ネ・・」
ちょっと申し訳ない思いにかられたけれど、それでも、そこの雰囲気は、本当に異様だったし、かなり危険な感じもしたのですよ。もちろんB&Bで働く彼らは犯罪とは無縁だろうけれど、彼らを降ろして一人になったら、今度は、彼らと全く関係のない人たちのなかに放り込まれることになるからネ。
その後は無事に、スラム街を抜けられたけれど、ちょっと怖い経験だった。やはり、大きすぎる貧富の差もまた、さまざまなネガティブ社会現象の元凶なんだな・・なんて体感していた。そして思っていた。これからも、今までどおり、「足るを知る・・」という行動(感性の)原則を、常に反芻しつづけなければいけない・・
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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