トピックス
- 2010_WM(27)・・ドイツ対スペイン戦の反芻・・そして旅の楽しみ!?・・(2010年7月9日、金曜日)
- 昨日(7月8日)の朝。ダーバン北のリゾートタウン、ウムドルティにあるウォーターフロントのB&Bで目覚めた筆者は、まだ喉元に骨が引っ掛かっている感覚とともに、ヨハネスブルクへの帰途につきました。また、630キロの行程です。
そのB&Bは、知り合いのライターの方から紹介されたのですが、目の前に、インド洋が広がる、まさに夢のようなロケーションの宿でした。
私は、その朝、目覚めてから、海を一望にするガーデンチェアーに腰を下ろし、2-3時間、物思いにふけっていました。ドイツ対スペインの勝負マッチのことだけじゃなく、スペインが復活したことの心理&戦術バックボーン、ドイツの若手が台頭してきた背景にあるタレント発掘システムや、創造性を大切に育てるという基本方針を徹底する若手育成システムのこと、そしてそのシステムの根幹をなすコーチの(心理的な部分の)強化など、いろいろなことに思いをめぐらせていました。
試合については、こんなことを考えていた・・
・・ドイツは、サッカー内容で、完全にスペインに凌駕された・・天才連中の、攻守にわたる汗かきハードワークと、創造性にあふれる人とボールの動き・・まさに、個の才能(タイミングの良い美しい個人プレー)が、素晴らしくインテグレートされた(これ以上ないほどの実効ハーモニーを奏でる)究極の組織サッカー・・
・・2年前のヨーロッパ選手権で優勝したチームよりは、ちょっと減退したなんていう意見があるかもしれないけれど、私の眼には、そのサッカーに、「最高潮のバルセロナ」というキーワードが浮かび上がっていた・・
・・たしかにドイツは、後半に、ポドルスキーの素晴らしいクロスボールからクロースが放ったダイレクトシュートなど、同点に追い付くチャンスはあった・・でも、その後は必死に守り、そして最後に(PK戦などで)競り勝っていたらどうだったろうか!?・・
・・そんな「結果」は、やっぱりスッキリしないよな・・スペインは、勝つべくして決勝に駒を進めたんだよ・・彼らは、本当に立派な「組織&個」のサッカーで、ドイツを凌駕したんだ・・特に、ダイナミズム(アクションの量と質)が最後まで減退しなかったディフェンスが特筆モノだった・・その視点でも、まさに、バルセロナ・・
そんなことを何度も反芻しているうちに、やっとアタマが(サッカーのロジック的には)スッキリしてきたモノです。とはいっても、情緒的には、まだまだ「タラレバ感覚」が残っていた。だから、B&Bを出発するときでも、まだちょっと「喉元に・・」ってな感覚に囚(とら)われていたというわけです。だらしないね。でもネ、そんな「情緒先行」の観戦もまた、最高の異文化接点機能を有するサッカーの面目躍如ってことなんだぜ。あははっ・・
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もちろん、クルマを運転しながら色々なことを考えていたけれど、600キロ超のドライブだからね、やっぱり飽きてくる。そして、行程の半分を過ぎたあたりで、ハッと、あることを思い出した。そうだ・・このあたりは、世界遺産に登録されている「ドラケンスバーグ山脈」があるところじゃないか・・!? そういえば、周りには、それらしき山々が見え隠れしている。
そして、カーナビで確認してみたら、まさに「そこら辺り」だったのですよ。どうしようか・・寄り道しようかな・・それとも、真っ直ぐ、ヨハネスブルク近郊のB&Bに戻ろうかな・・。そして結局、まあいいや、数十キロの寄り道だから、とにかく行ってみることにしよう・・ってなことにした次第。
ということで、アウトバーンから離れて一般道に入った。目指すは、地図にあった近くの湖。そこまで行けば、ドラケンスバーグ山脈の一端でも拝めるかもしれない・・どちらにしても今日はオフ・・時間はたっぷりあるサ・・
でもサ、行けども、行けども、茶色の(老年期の)丘陵地帯がつづくだけ。遠くには、とても不思議なカタチをした山並みは見えるけれど、それがドラケンスバーグ山脈の一部だということが分かる程度。とにかく湖(たぶんダム湖)を目指すけれど、そんな湖が出現する気配なんて、まったくといっていいほど感じない。何せ、「あの」アフリカの乾燥の大地だからネ。そこに「水」があるなんてことは、まったく想像できない自然環境なのですよ。でも、そのとき・・
「アッ!!・・何だアレは??・・エッ、ウソだろ!!・・スゲ〜〜!!!・・」
そのとき、忽然(こつぜん)と、本当に忽然と、湖が出現したのです。右手・・。広大・・。スゲ〜〜・・。キレイだ〜〜・・。
まさに、その自然環境には、似ても似つかない「巨大な水」が、忽然と出現したのです。そりゃ、感動するよね。何せ、水なんか、その気配さえまったく予想も出来ない乾燥の大地(丘陵地帯)なんだから。
わたしは思わずシャッターを押しつづけていた。クルマは、山道をどんどん登っていく。「水」は、山並みに隠れたり、また出現したり。そして、峠とおぼしき高台まで来たとき、急に視界が開けた。「うわ〜〜っ・・」
何度も書くけれど、わたしは文章家ではないので、その感動をうまく表現する言葉をもっていない・・というか、工夫した虚飾の表現を使うのは、わたしに似つかわしくないと思うわけです。だから「感嘆句」を多用するんですよ。スミマセン・・ね。そして、そのときの感覚は、まさに「うわ〜〜っ・・!!」だったというわけです。
そこは、世界遺産にも登録されている「ドラケンスバーグ」の一端。眼下には、大小の湖(たぶんダム湖!?・・でもなかには、地下水脈が表面に出てきた湖もある!?)が点在し、その遥か遠くに、ドラケンスバーグ山脈の山並みが広がっている。
しばし感動・・。
そして立ち尽くすこと10分。やっと落ち着き、周りを見渡す余裕ができた。そして気が付いた。そこに、バンガローまでも設えたホテルとおぼしき施設があるじゃないですか。みれば、淡水魚のます(trout)の絵が描かれた看板もある。こりゃ、もしかすると、レストランもあるのかも知れない。もちろん、すぐに駆けつけハナシを聞く筆者なのです。
「ええ・・ここは宿泊施設で、レストランもありますよ・・もちろん、いまでも食事は出来ます・・今日は天気が良くて暖かいし、外で食事をされますか?」
その施設のマネージャーとおぼしき女性が、柔らかい声で誘ってくれる。もちろんですよ・・ます料理をお願いします・・。
そうそう・・その日は、本当に奇跡的に、天気にも恵まれたんだっけ。とても穏やかな快晴。それに、ヨハネスブルクと同程度の高原だというのに、とても暖かいのです。みれば、湖面も(そのレストランから、前述のダム湖が一望なのだ!!)静かに凪(な)いでいる。素晴らしい・・(語彙が足りなくてスミマセン・・)
そして、わたしが座るガーデンテーブルに彼らが出してくれた「ます料理」も絶品だった。こんな山奥なのに・・。まさに想像を絶する幸運としか言いようがない。
「そうなんですよ・・ここは、地元の我々にとっても、知る人ぞ知るといった存在なんです・・わたしも、友人から口コミで紹介されたんです・・一週間のバカンス・・私たちは、あちらのバンガローに宿泊しているのですが、とても素晴らしい時間を過ごしていますよ・・」
居合わせた南アフリカのカップルも、そんなことを言っていた。そうか〜〜・・何という幸運・・
こうなったら、出来る限り、この周辺の見所を探索するしかない。あった、あった。「ロイヤル・ナタル国立公園」。もう夕方だから、急がなければ日が落ちてしまう・・と、レストランとホテルの方々に感謝し、早々に峠を後にした。
そして、夕闇迫るなか、ロイヤル・ナタル国立公園に到着した。夕日に照らされた山並み。もう文章で表現するのは止めよう。とにかく、散りばめた写真を見てください。たぶん皆さんは、その写真が「どこの」ものか、すぐに分かるでしょう。
でも、高速道路へ向かうクルマのなかから眼にした光景は、とても筆舌に尽くしがたいモノでした(あっ、そうか・・わたしは、はじめから筆舌表現は諦めていたんだっけ・・あははっ)。暗がりだったから写真には残せなかったけれど、一番最初に感動した、忽然と出現した「湖面」。そこに、頂上が夕日で赤く染まった山並みが映し出されていたのですよ。まさに、幻想。でもこれは、記憶にとどめておくしかない。フ〜〜・・
結局、残りの300キロ強を走り切ってヨハネスブルク近郊の定宿(B&B)に帰り着いたのは、2100時を回った頃だった。夜の300キロドライブ。普通だったら疲れ切るところだろうけれど、そのとき(昨夜)は、心地よい倦怠感が身体を包み込むだけだった。
いや・・本当にラッキーな1日だった・・これで、ドイツが、これまでのような優れたサッカーで、スペインと「内容でもタメを張る」カタチで決勝に駒を進めていたら・・あははっ・・まだまだ「タラレバ感覚」から解放されていない、だらしない筆者だったのです。
明日は、そのドイツがウルグアイと対戦します。
この「三位決定戦カード」は、歴代でも最も素晴らしい大会と言われている(ブラジルが圧倒的なサッカーで優勝した)1970年メキシコワールドカップの再現ということになります。そのときは、ドイツが、オベラートの一発で勝利を収めたけれど・・さて・・。この試合は、諸々の事情で、テレビ観戦ということになりました。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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