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2010_WM(9)・・ミヒャエル・バラックの不在という脅威を、大いなる機会として活用し尽くすドイツの若手・・まあ、ゲームには負けちゃったけれどサ・・(ドイツvsセルビア、0-1)・・(2010年6月18日、金曜日)

今日は移動日。「冷蔵庫」のヨハネスブルクから、温暖なダーバンへやってきました。暖かい〜〜

 そんな気候の変化を体感しながら、「このまま、もっと暖かくなれ〜〜・・もっと湿度も上がれ〜〜・・」なんて思っていた。そう、日本の夏・・。オランダが相手となったら、そりゃ、かなり厳しいゲームを強いられるからね、自然だけでも味方につけたいよね。あははっ・・

 ということで、ダーバン・スタジアムのメディアセンターで、ドイツ対セルビアの試合をテレビで観はじめた次第。いいね・・ドイツ。やっぱり、総合力では世界トップレベルだよ。巧さとか美しさとかじゃなく、あくまでも「ロジカルな総合力」。そう、組織力と精神力。

 とにかく、守備が堅実。忠実なチェイス&チェック(守備の起点づくり)から、決して安易にアタックすることなく、我慢して相手の攻撃を遅らせたり、次、その次に、ボール奪取ターゲットを絞り込んだ組織ディフェンスをつづける。「次での」ボール奪取を明確にイメージした、有機的なプレー連鎖の集合体(守備でのコンビネーション)ってなわけです。

 また攻撃でも、シンプルに人とボールを動かしながら、落ち着いてチャンスを作り出していく。もちろん最後は、どちらかといったら「パワー勝負」のシーンの方が多い。高さを活かした鋭いクロス攻撃・・中距離からのキャノンシュート・・一度「放り込んで」おいてから、そのこぼれ球目掛けて人数を掛けて突っ込んでいく・・などなど。

 ドイツの攻撃には、「メッシのドリブルシュート」とか「ロッベンの、サイドを切り裂く超速ドリブルからの正確なクロスや危険なシュート」といった、人々を興奮させる美しい仕掛けは少ない。それでも、自分たちの強みを「120%以上」活用し尽くすという強いイメージが、チーム全体で完璧にシェアされている。強烈な闘う意志がぶつかり合い、これでもかと増幅していく。やはり、ドイツの「ロジカルな徹底サッカー」は健在です。

 また、今回のドイツ代表を分析する上で、忘れてはならない大きな事件があった。それは、絶対的なキャプテン、ミヒャエル・バラックの欠場。

 皆さんもご存じのように、プレミアのシーズンが終了する間際のリーグ戦で大けがを負ったのですよ。そのことで、今回のワールドカップは諦めざるを得なくなった。年齢的には、彼にとって最後のワールドカップになるはずだったのに・・。

 そんな大事件によって、ドイツをネガティブな雰囲気が包み込んだと聞いた。ただ、そこは闘うドイツ。彼らは、脅威と機会は常に表裏一体・・という事実を、体感としてよく知っているのですよ。

 逆から言えば、ミヒャエル・バラックという「絶対的な才能」を失ったことで、ドイツが、彼がリードするプレー・リズムに引っ張られ「過ぎる」ことなく、より「自由に」、そしてより積極的に、攻守にわたる組織プレーを高揚させていけるようになった・・と、ポジティブに考えることもできるということです。

 実際、初戦のオーストラリア戦でも、素晴らしいプレーで相手を圧倒したと聞いた。もちろん、「4-0」というスコアだったから・・というわけじゃありませんよ。

 友人のドイツ人ジャーナリストも、こんなことを言っていた。「もしかしたら、ミヒャエル(バラック)が抜けたことが、才能ある若手がブレイクする最高の機会になるかもしれない・・これまでのドイツ代表では、どうしても年長プレイヤーによって若手のチャンスが潰されていたからね・・もちろん、紆余曲折はあるだろうけれど・・」

 このセルビア戦でも、トーマス・ミュラー、メスート・オジル、サミ・ケディラといった若手が先発出場を果たし、立派なプレーでセルビアを圧倒していた。その後も、以前のドイツ中盤のスター、トーマス・ヘスラーなどと比較されるマルコ・マリンも出場し、存在感を発揮していた。

 あっと・・このセルビア戦は、負けちゃったんだっけ・・あははっ。

 ミロスラフ・クローゼが受けた二枚のイエローカード(前半の30分すぎに退場処分!)には、ちょっと疑問符はつくけれど、その直後にセルビアに先制ゴールを奪われたにもかかわらず、一人足りないドイツ代表は、最後の最後まで果敢に攻めつづけた。

 そんな流れのなかで、ルーカス・ポドルスキーが、二度、三度と、決定的なシュートをブチかます。また後半15分には、相手のハンドの反則でPKまで得たのに、ルーカス・ポドルスキーが放ったシュートはGKに止められてしまう。今日は、ルーカス・ポドルスキーの「日」ではなかったということだね。それにしても、ルーカス・ポドルスキーが放った決定的シュートは、タラレバ議論の対象としても魅力的なものだった。

 その後ドイツは、セルビア得意のカウンターから、二度ほど決定的ピンチに陥った。でも、ポストが防いでくれるなど幸運がつづいた。そんなラッキーシーンを見ながら、「こりゃ・・何か起きるぞ・・」なんて思っていたけれど、結局、そのままドイツの敗戦ということになってしまった。フ〜〜・・

 前出のドイツ人ジャーナリストの言葉じゃないけれど、敗戦という「紆余曲折」を経て、若手が、本当の意味でチャレンジしていかなければならない状況に陥った。最終戦となる、ガーナとの勝負マッチは、スタジアム観戦する予定。いまからワクワクしますよ。

 ドイツの才能にあふれた若手が、ポドルスキーやシュヴァインシュタイガーといった中堅どころと協力し、逆境であるからこその「本物のブレイクスルー」を果たす・・。いまから期待しましょう。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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