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2010_WM(12)・・スペイン・ショー・・それにしてもグループHは、予想外にエキサイティングな展開になった!・・(スペインvsホンジュラス、2-0)・・(2010年6月21日、月曜日)

さて、グループH。当初は、スペインが楽勝でトップ通過だと誰もが考えていた。それが・・

 チリが、ホンジュラスに勝利を収めたのは順当としても、スイスがスペインをうっちゃってしまったことは、明らかな「下克上ドラマ」。それがあるから、ワールドカップ初戦は堪えられない。そしてグループリーグの第2戦目。チリ対スイスは、スイスに退場者が出たとはいえ、まあ、本来の実力どおりにチリが勝利を収めたと言えるかな。

 実力どおりといったのは、攻守の目的が、どのくらい達成されていたかの度合いによるわけです。要は、ボールを奪い返すプロセスとシュートチャンスを作り出すプロセスの内容でチリがスイスを上回っていたということです。とはいっても、チリが決勝ゴールを挙げるまでのプロセスでは、何度もチャンスを作り出しながら、それをゴールに結びつけられないなど、とてもイヤに雰囲気が漂っていたんだけれどネ。

 実は、私にとって「とても近しい関係」の方に、一人のチリ人がいるのですよ。東京に住んでいるのだけれど、この2試合でのチリの立派なサッカーと勝利を観ながら、彼の満面の笑みが目に浮かんで、わたしも何となくハッピーになった次第。

 たしかに、めくるめく歓喜と奈落の落胆を行ったり来たりするサッカーは、人々の情緒を、これでもかと振り回すよね。まあ、それほど感情移入できる社会的な存在は少ないわけだから、そこに参加できるだけで、とてもハッピーなことだと諦めましょう。一時的に落胆したって、そこには、次につながる大いなる希望があるわけだからネ。

 あっと・・グループH。その第2節の第1試合、チリ対スイス戦の結果が、グルーブの状況を、とても混沌としたモノにしちゃうのです。この時点で、グループトップを走ることになったのは、ダークホースのチリ。勝ち点「6」で、得失点差も「+2」だぜ。それに対して、負けたスイスは、 勝ち点「3」で、得失点差は「0」。

 そんな状況で、スペインがホンジュラスと対戦することになったのですよ。当初は、誰も、そんなに面白いカードになるとは思ってもみなかったに違いない。でも・・

 この試合、またまた私は「ウェイティング・リスト」に回されてしまいました。そして、メディアシート・チケットのディストリビューション(配布)デスクの周りには、昨日同様に、100人以上のジャーナリストが群れをなしている。ちょっとイヤな感じがしたものです。

 でも今回は、無事にメディアシートのチケットをゲットできた。あっ・・そうそう・・ところで明後日には、ドイツがガーナとガチンコ勝負に挑むのですが、この時点で私は「まだ」ウェイティング・リストに載せられているのですよ。

 ドイツは、とても良いサッカーを展開しているからね。ここで負けるわけにはいかない。まあ、ギリギリまで追い込まれたことは、彼らにとって(実力があるからこそ!)、覚醒し、チームの「フォーム」を極限までアップさせていくために、とても良い機会になると確信している筆者なのです。

 彼らほど、脅威と機会は表裏一体という格言の正しさを、実際にグラウンド上で体現してしまうネーションはない。要は「意志のパワー」がレベルを超えているということだけれど、そんな彼らの「覚醒マッチ」の証人になれなかったどうしよう・・。ちょっと今から心配です。フ〜〜・・

 あっと・・またまた、ものすごく脱線しちゃった。スミマセン・・。さて、スペイン対ホンジュラス。

 この試合、もちろんグラウンド上では「スペイン・ショー」が展開された。ホンジュラスは、まったくといっていいほど攻め上がっていけない。また守備でも、スペインが展開する、抜群の人とボールの動きに翻弄されまくる。

 やはり、現役のヨーロッパチャンピオンでもあるスペインは、すべてのサッカー人の理想である
「美しさと勝負強さがハイレベルにバランスしたクリエイティブサッカー」に、もっとも近い国の一つだよね。

 人とボールが、広く、そして素早く動きつづける美しい組織パスプレーが回るなかで、シャビやビジャ、フェルナンド・トーレスといった、スペインが誇る「個の才能」たちが、美しさの象徴である、ドリブルやタメといった個人勝負を仕掛けていく。

 しっかりと人とボールが動きつづけているからこそ、ホンジュラス守備ブロックを「振り回し」、そのウラに広がるスペースを攻略していける。だからこそ、スペースへボールをもった天才たちも、思う存分、才能プレーをブチかませられる。そんなスペインと対峙したホンジュラス守備は、まったくといっていいほど、次のボール奪取イメージをアタマに描けなかったんだろうね。個人的には、とても才能のある選手が揃っているとは思うけれど、それが、攻守にわたって、うまく組織として機能しない・・フムフム・・

 スペインの強さの絶対的ベースは、言うまでもなく「優れた守備意識」にあり・・です。まあ、もう語る必要もないだろうけれど・・ネ。

 とにかく、最前線からの全力チェイス&チェックをベースに、一人の例外もなく、次のボール奪取プロセスに参加してくるのです。そんなだから、個の勝負が主体のホンジュラス攻撃が、すぐに寸詰まりになってしまうのも道理・・ですかね。

 そして、ボールを奪い返したスペインが、ものすごく「変化に富んだ」攻撃を仕掛けていくのです。

 素早く、広く、人とボールを動かしながら、(例えばシャビが)中央突破の一発スルーパスをフェルナンド・トーレスへ通してしまったり、右サイドでボールを動かしながら、急に(ホンジュラス守備が薄くなっている)逆サイドのビジャへサイドチェンジをパスが送ってみたり(実際にビジャは、薄くなったホンジュラス守備を振り回す勝負ドリブルで先制ゴールを叩き込んだ!)。

 また、右サイドバックのセルヒオ・ラモスが、素敵なコンビネーションでオーバーラップし、決定的なクロスを送り込んだり、バックパスを受けたシャビが、危険なミドルシュートをブチかましたり。

 そんなだから、ホンジュラス守備が、ボール奪取のターゲットを絞り込めなかったのも道理。とにかく、スペインの強さばかりが目立ちに目立ったゲームではありました。

 さて、グループHの最終節。勝ち点や得失点差については、皆さんで調べて下さいネ。もちろんスペインは、グループ一位抜けを目指して、チリに挑んでいきます。得失点差を考えれば、勝てばチリの上をいくことになります。でも、もう一つの対戦カード、スイス対ホンジュラスで、もしスイスが大勝したら・・。このグループでは、三チームが「勝ち点6」で並んでしまうことになり、得失点差が順位が決まる・・。

 最終戦は、とてもエキサイティングな勝負マッチになること請け合いなのですよ。わたしは、スペイン対チリ戦を観ます。この試合は、最初から、メディアシート・チケットと駐車チケットは「アプルーブ(承認)」されているから安心です。

 まあ今日は、こんなところですかネ。明日は、グループAのウルグアイ対メキシコ戦。この試合も、メディアシート・チケットと駐車チケットは承認されているから、安心して、ゆっくりとスタジアムに到着すればいい(ルステンブルク・・ヨハネスブルクから、まあ100キロ程度)。今夜は、ゆっくりと寝られそうです。じゃ・・

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追伸:全体としては良いサッカーを展開したスペインだったけれど・・

 でもネ・・。後半の21分に、シャビからセスク・ファブレガスに交替したところから、スペインのペースが、まさに鈍重にダウンしていった。セスクは走らないネ〜〜。あれじゃ、チャンスメイカーとしてもリンクマンとしても失格だよ。まさに唐突に「覚醒した」松井大輔の爪の垢を煎じて飲ませたいね。あの交替は、ビセンテ・デル・ボスケ監督の「最後のテスト」だったとは思うけれど、そんなシーンを観ながら、やっぱりサッカーは究極の心理ゲームだ・・なんて思っていた次第。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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