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2012_CWC・・立派なサッカーを魅せたサンフレッチェ・・(アルアハリvsサンフレッチェ、2-1)・・(2012年12月9日、日曜日)

とても、とても悔しい敗戦だった。

 サンフレッチェは、攻守にわたって、実に素晴らしい「自分たちのサッカー」を、最後の最後まで魅せつづけた。

 ハイレベルな連動ディフェンス(明確なイメージをもったカバーリングや協力プレスが素晴らしい!)。そして攻撃では、超危険な「The ヒロシマ」が抜群の存在感を光り輝かせる。だから「悔しい!!」という感情は天井知らず・・ってなことになった。

 内容的にも、サンフレッチェが展開した攻撃は、世界に誇れるものだったと思うよ。実際に、何度も、何度も、強豪アルアハリ守備ブロックのウラの決定的スペースを攻略するカタチでチャンスを作り出したわけだからね。でも・・

 「The ヒロシマ」だけれど、佐藤寿人は言うに及ばず、両サイドのミキッチと清水航平、加えて、森崎兄弟や高萩洋次郎といった「パサー」だって、代わる代わる「2列目や3列目」から飛び出していくんだよ。

 もちろん佐藤寿人が「The ヒロシマ」のカオではあるけれど(守備や中盤ラインの誰でも、ボールを持ったら、まず最前線の佐藤寿人のアクションに目を やるんだとサ!)、サンフレッチェの場合、ケースバイケースで、誰でも「パスレシーバー」として決定的スペースへ飛び出していけるっちゅうことです。

 彼らの場合、「パスを呼び込む決定的フリーランニング」とか、「決定的スタートをうながすスペースパス」とかいった議論レベルを超えている!?

 要は、パサーが主体なのか、パスレシーバーが主体なのかっちゅう一般的コンビネーションのディスカッション領域を超えているということです。そう、彼ら には、日頃のハードトレーにニングで培われた「完璧なイメージ(タイミング)シンクロ」感覚が備わっているということです。

 それにしても(特に前半が素晴らしかった訳だけれど・・)、「The ヒロシマ・コンビネーション」を主体に、あれ程のチャンスを作り出したのに、結局は1点止まりになってしまった。

 まあ、仕方ないけれど、手に汗握ってサポートしていたこちらは、やっぱり「タラレバの雰囲気」に落ち込んでしまう。「あそこ」で佐藤寿人が勝ち越しゴールや同点ゴールをブチ込んでいれば・・とかサ。

 もちろん、アルアハリが強いチームであることは論をまたない(ヨーロッパでも彼らは、サッカー内容的にも認められた強豪だぜ)。

 そんな世界の強豪チームに、互角以上の内容を魅せたわけだから、改めて、今シーズンのサンフレッチェが、「J」の優勝に相応しい強いチームだったことをアタマに叩き込まれた(すみませんネ、森保さん・・)。

 ところで、エジプトのサッカー。それは、いつもヨーロッパの洗練されたニオイを漂わせている。そんなエジプトを代表するアルアハリだから、組織プレーと個人勝負プレーが、とても高い次元でバランスした高質なサッカーを展開することに驚きはありません。

 もちろん優れた攻撃が印象的なのだけれど、それがハイレベルからこそ、逆に彼らの守備「も」優れているというロジックが成り立つ。攻撃と守備は表裏一体だからね。

 でもサ、そんな強いアルアハリ守備ブロックが、特に前半は、「The ヒロシマ」にキリキリ舞いさせられたんだよ。何度もピンチに陥った。それには、ちょっと驚かされた。

 とはいっても、そこは流石のアルアハリ。後半は、「The ヒロシマ」に対する抑制レベルを着実にアップさせていた。でも、それでも、何度かは、両サイドや佐藤寿人のフリーランニング&スルーパスに、何度かウラを突かれてしまったんだ。

 そんなシーンを観ながら、「The ヒロシマ」というイメージ・シンクロ・コンビネーションの質が、まさに国際級であるという事実を噛みしめていた。

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 もう一つの準々決勝マッチ。モンテレイ対ウルサン・ヒョンデ戦も簡単に・・

 いや、ホント、メキシコのモンテレイは上手かった。

 例えば、局面でのボールをめぐるせめぎ合い・・

 ・・メキシコの強者は、とにかく落ち着き払い、ウルサン・ヒョンデがブチかましてくるパワフルなアタックを冷静に見極める・・そして「最後の瞬間」に、チョ〜ンってな感じで、韓国のアタックを「かわし」、ウラのスペーへ回り込んじゃう・・もちろん韓国選手は置き去り・・

 その「チョ〜ン」だけれど、とにかく落ち着き払って韓国アタックを「見極め」るんだ。そして最後瞬間、まさに軽快に、そのアタックアクションの逆を取ったり、股抜きで抜け出したりする。フ〜〜・・

 そんなモンテレイを観ながら、例によって、柔道の「空気投げ」という言葉を思い出していた。

 あっと・・私は柔道は素人。空気投げについては、相手のパワー(運動エネルギー)をうまく逆利用して投げてしまう・・という理解なのです。スミマセン・・

 まあ、とにかく、全体的なゲームの流れが、まさに「そんな感じ」だったというコトが言いたかったわけです。

 だから、ウルサンのパワフルなプレッシングサッカーは、肩すかしを食らってしまった。そして、彼らのプレッシングの勢いが、時間の経過とともに、どんどんと減退していった。フムフム・・

 メキシコのサッカー・・

 とても強くなっている。(ショート)パスサッカーのレベルアップとともに、最終勝負での危険度も、急速にアップしていると感じる。

 パスサッカーの内容だけれど、以前は、ドイツの友人たちと、「ヤツらのサッカーはつなぐだけ・・」なんて揶揄したこともあったけれど、でも近頃の彼らは、素晴らしいイメチェンを果たした。

 そう、しっかりと人とボールを動かしながら、「ココゾッ!」の勝負所では、ボールと、ボールがないところでのチームメイトたちのアクションが、尋常ではないほどのレベルで爆発するんだ。そう、メリハリある最終勝負。

 だから彼らが、ワールドカップやオリンピック、はたまたユースの国際大会でも、内容だけじゃなく結果でも存在感をアップさせているという成りゆきは当然の帰結だと思う。

 そんなメリハリある最終勝負がブチかまされたシーンが、この試合でメキシコが挙げた先制ゴールだった。

 まさに絵に描いたような素晴らしいコンビネーション。彼らは、「勝負所の流れ」を感じたら、パス&ムーブを中心に、同時に、ボールがないところでも爆発するんだよ。そして、そんな人の動きが、ボールの軌跡によって結ばれる。フムフム・・

 とにかく、チェルシーとモンテレイの激突が、とても楽しみになった。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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